これから書くことは、とても個人的な内容です。一般的に広く理解されるとは思いません。

随分前のこと、テレビを付けたら厨房が映し出されていて、日本人シェフが「コションは嫌いだ!コションは嫌いだ!」と喚いておられました(!)

cochon(男性名詞): 豚

豚肉ならporcと言うのでしょうが、シェフは「コション嫌い!」と連発されていました。

これは、味が嫌いだとか食べたくないとかそういう意味ではなくて、コションを調理するのが苦手だというご自身の意識からの発言でした。

このシーンは、本当に、強烈に心に遺りました。

好き

嫌い

この2語を連発すると、人は誤解しやすい、そう感じたのです。

人間である以上、好き嫌いはどうしても存在すると思います。オペラ研究家でも、演目によって、好感度は多少上下すると思います。ただ、私自身は自分のその好感度を常に否定する方に意識を向けます。

「お前の仕事は演目の個性を見定めることで、おまえ自身の好き嫌いなんか誰も聞きたくはない」

それを、毎回、講演会でも原稿を書くときでも、自分に戒めとして聞かせているのです。

だから、「好き&嫌い」もしくは「好み」という語は、原稿でも発言でもなるべく使わない言葉にしています。

この感覚を、食べ物に喩えると、こんな風になります。

私は食材として豚肉がとても好きなのです。自分の顔もcochonに似ていると思いますが、それはさておき(!)。

でも、人前で「私は豚肉がとても好きだ」と発言すると、世間の人はほぼ全員「なら、牛肉は好きじゃないんだ。鶏肉もあんまりなんだろうな・・・」と対象が広がってしまうのです。

ところが、私にとっては、豚肉=非常に好き、牛、鶏、猪、鹿=とても好き なのです。

つまりは、肉類全般が大好きで、中でも豚が好きだということを言いたいだけでも、結局は言葉足らずとなって「他の肉は好きでもないんだ」という周りの人の勘違いを引き起こしかねない。オペラ研究家がどの肉を好もうが、世間にとってはどうでも良いことですが、もしも私がシェフの仕事に就いていたなら、多少の誤解は招くかもしれません。

だから、自分の仕事では、好きという言葉は使いたくないし、嫌いと言う言葉は猶更使いたくない。好みだ、好みでない、という表現も使いません。オペラにおける自分の好みを伝えるために、この仕事に就いたわけではないからです。

ちなみに、私の中では、オペラ上演に対する「ものさし」が存在します。

そのものさしとは「本格的な上演とセミ・ステージ形式上演、演奏会形式上演は分けて考えねばならない」というものです。同列で論じてはいけないということです。

本格的な上演は、セミ・ステージ形式上演よりも「負担が大きく」、セミ・ステージ形式上演は、演奏会形式上演よりも「負担が大きい」。

それを常に意識しておきたいと思うのです。

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北陸地方の震災の義援金について、新しいお知らせが出ていました。

https://www.jrc.or.jp/domestic_rescue/2024notoearthquake.html


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WCARS(一般社団法人国際総合芸術研究会)のブログです。ご参考まで。
https://ameblo.jp/2022wcars/