芸術史でかなりの大きな変革が起きるので、歌舞伎座の初日に行ってきました。

観たかった演目は、隅々まで芸達者な人が揃っています。主役級の人にも脇の人にも何度か泣かされました。

そしてお目当てのシーン。

花道を行く役者たちの軽妙なやり取りに続いて、「お久!!!!」とソプラノのびしっとした一声。

万雷の拍手が起きました。

「寺島!」と掛け声も飛ぶ。

自分が生きている間に、女優さんが歌舞伎に出演するとは思ってもみませんでした。

これまで、西洋劇を歌舞伎座でやった際に山田五十鈴、新作歌舞伎をやった際に藤間紫という大御所が出たことはあったそうです。

でも、伝統的な演目に - 今回は明治時代に初演されたお芝居を少しアレンジしているようなのですが。タイトルは『文七元結』 - 女優さんが出るのはこれが初めてでした。

歴史的瞬間を目撃したくて伺いましたが、「寺島!」と掛け声が飛んだ瞬間は、やはり、涙腺が緩みました。後半の場面では「音羽屋!」の掛け声も飛んでいました。

歌舞伎の枠の中にこれからも女優さんが入れるのかどうか、私には分かりませんし、歌舞伎の様式的にどうなのかということも門外漢なので分からない。

しかし、この日出演の皆さんのチームワークは本当に良かったようです。いろんな瞬間を目に焼き付けました。泣かせて笑わせてが高度なスキルのもと「泥くささも交えて」のもとに展開しました。

芸術史の変革は、お客さんが望んで起きるものではないのです。たいていの場合は、未来図に気付く「一部の優れた作り手」側が、お客さんや周囲に忖度なしで新しいことを始めます。

寺島しのぶさんが、敢えて女形のセリフ回しに近づけることなく、はきはきと演じておられたのを見て、「18世紀末のローマの歌劇場で、初めて女性歌手を聴いた観客たちも最初は驚き、でもすぐ慣れたのだろうな・・・」と想像を膨らませていました

宗教の関係で、ローマでは、禁令が18世紀末に解かれるまで、女性歌手はオペラの舞台に出られなかったのです。歌舞伎と全く同じように、カストラートが女装して女性役をやっていました。

でも、ナポレオンの猛攻に恐れをなした法王様があっさり撤回です。

日本の芸術史の新境地を目撃出来て、本当に嬉しく思いました。

 


★ ★ ★

WCARS(一般社団法人国際総合芸術研究会)のブログです。ご参考まで。
https://ameblo.jp/2022wcars/