今朝がたの講演会で頂いたご質問に、「モーツァルトの《コジ・ファン・トゥッテ》に関して、リッカルド・ムーティが日本経済新聞社の『私の履歴書』の連載で『自分の葬式の時には、第1幕の小三重唱(Terzettino:第10曲)を流してほしい、ただし私の演奏で』と書いていたことについて」というものがありました。

講演会内でご紹介したのはバレンボイム指揮の映像(02年ベルリン)であり、同じ小三重唱をたまたま流したところでのご質問でした。

それで、帰宅して調べてみました。映像同士で比較するほうが良いだろうと思い、ムーティ指揮、83年ザルツブルク音楽祭収録のものをかけてみました。

すると、私の予想に反して、この曲については、バレンボイム氏もムーティ氏もアプローチは同種のものでした。「非常にゆっくり目」でした。

具体的に数字を挙げるなら、バレンボイムは演奏時間3分19秒、ムーティは3分28秒でした。ムーティの方がさらにゆったりしていたのです。

この曲のテンポ指定はアンダンテです。18世紀末の当時の「アンダンテ Andante」については、実際にどのようなテンポであったかという点の解釈がかなり分かれていまして、「今のアンダンテよりも少し速め」と考えるアーノンクールのような指揮者もいます。

一方、ムーティやバレンボイムがこの小三重唱に与えた解釈は、アダージョやラルゴに近いゆったり感覚でした。

同じ楽譜を使っていても、研究結果や感覚で分かれてゆく好例と思います。

ゆっくり振られるとこの小三重唱は結構大変。「小」ならぬ「厚い三重唱」に変化します。でも、私自身はその方が好きです。そういう解釈がしっくりくる良い曲だと思っています。

ご質問頂いたことで、改めて見直す良いきっかけになりました。






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WCARS(一般社団法人国際総合芸術研究会)のブログです。ご参考まで。
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