40年近く前のことです。
「先ほど、バイロイト詣でを終えて帰国したばかりです」と仰る、朗らかなご婦人にお目にかかりました。

女優の東郷晴子さんみたいだな、と一目見て。

声の豊かな(でも、歌うのはしないと決めておられたようで)朗らかな方でした。

「育ったのは鎌倉でした。父が軍人で武官と呼ばれる立場で・・・嫁いで関西に来て、今はすっかり慣れましたが、最初はいろいろ違うことが多かったのよ」

毎月1度のオペラの愛好会で、よくお話をさせて貰いました。

一度びっくりしたのが、この御婦人が、生前の三浦環に遭ったことがあるという話です。

「戦後すぐに、鎌倉に帰っていて、近所のお宅に呼ばれたとき、寒いから炬燵を勧めて下さって、先客のお年寄りの女性がおられて、一緒に炬燵に入ってお話ししたんだけれど、その人が有名な歌手だと聞いて、良く伺ったら三浦環さんやったの」

関東のはっきりした口調に時々関西のアクセントが混じる方でした。

「三浦環さんの演奏を聞いたことが有る人はまだご存命かもしれないですが、一緒に炬燵に入った方は知らない(!)貴重なご体験ですね」

そんな風に楽しく笑いながら過ごしました。後に、三浦環記念の静岡国際オペラコンクールの委員職を仰せつかったとき、真っ先にこのことを思い出したものです。

最後にお目にかかったのは2年前でした。お宅でお茶をいただいていろいろお話しさせていただきました。良いご友人にたくさん恵まれて、そういう皆さまにも同席頂けて、楽しく過ごせました。

97歳で亡くなられたというから、大刀自という言葉を思い浮かべました。

刀自=年配の女性への敬称だそう。

時節柄、家族葬になさるそうで、参列はご辞退との案内を、知人を通じてご家族から頂きました。

そこで、初七日のための御菓子をお送りすることにしました。

昨夜、ご冥福をお祈りしつつ、いろいろと昔の記憶を思い出していました。

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告知の投稿です。

岸純信が代表理事を務めております一般社団法人国際総合芸術研究会(WCARS)より、「オペラ研究家岸純信が語り下ろすDVDシリーズ」として、二つのラインナップを発表し、それぞれ第1巻を、Amazonで5月31日より発売開始しました。

『オペラ講座第1巻 ‐ オペラと社会』は、岸純信著の大学生向け教科書『簡略オペラ史』の内容を映像で補充、解説するものです。著作権の関係で、オペラの映像や音声は使用できませんので、すべて、岸純信が画面に向かって語り下ろしました。オペラ史を考える上で必要な文献類、楽譜等については、その表紙などを画面で紹介し、皆様にご案内しています。こちらは、オペラ史420年分を全16巻で語り下ろしました。今回はその第1巻の発売です。



Amazon  オペラ講座第1巻

続いて
『オペラ徹底解説』シリーズは、有名オペラ1作を徹底的に語りつくすものです。今回の第1弾 《椿姫》(ヴェルディ)では、岸純信の語りに加えて、ナレーション及び原作戯曲のセリフ朗読(抜粋)が入り、巻末には、マリア・カラスの《椿姫》リスボンライヴ盤(1958年)から10分間弱の抜粋を、附録音源として収録しています。



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価格は、『オペラ講座第1巻』『オペラ徹底解説《椿姫》』のどちらも、消費税10%込みで3850円になります。Amazonでご注文いただいた場合は、送料が適宜かかると思います。ご注文の際にご確認下さい。

(なお、勿論のことながら、DVDの複製や、DVD内の画像や音声、映像等の外部へのアップロードは著作権の侵害になりますので、その旨添えさせて頂きます)。

ちなみに、これらの、DVD2シリーズは、今後も続々と発売の予定です。パッケージデザイン、映像の編集、ナレーションなど、当会の会員諸氏がそれぞれ得意分野を担当しています。手作りのDVDですが、皆様に広くご活用頂ければ幸いです。

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学生諸君は、大学の生協さんか八千代出版さんでぜひ注文をかけてください。 出版元の八千代出版さんのホームページです。
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