BS放送の番組で、お能の一座がパリに行って「マリー・アントワネット」をテーマに新作能を披露するというとても貴重なドキュメンタリー番組がありました。

観ていてとてもためになり、勉強にもなりましたが、一つ、その上演をさせてくれた歌劇場のことについては、大変な間違いが続発していました。

はっきり書きますが、「普通の人がみな間違えるポイント」を、本当にその通り間違えていたのです。

オペラ・コミック様式とオペラ・コミック座は別物である。

「オペラ・コミック様式の演目を専門に上演していたのが19世紀のオペラ・コミック座。オペラ・コミック座とは興行組織であり、その組織が長年続いてきて、19世紀末からは、いまの、メトロの駅から歩いてすぐの、ボーエルデュー広場に面する建物(歌劇場)を根城としている」という理解をしていただかないといけない。

いまのオペラ・コミック座の建物(つまりは劇場)は、19世紀末に新造されたものです。それより一つ前の建物は、歴史に名高い大火災で焼け落ち、80名以上の死者を出してしまっているのです。フランスにおいては、火事も多かったし、歌劇場はよく移転するもの。興行団が根城とする建物であるという感覚で受け止めてください。

だから、「この、オペラ・コミック座に〇〇〇氏がやってきた」といった類いのナレーションは入れてはならない。

その〇〇〇さんが19世紀末以降の人ならまだ可能性はありますが、19世紀中盤や18世紀の人は、今のコミック座の建物のことは知らないわけです。

せっかく内容の良い番組だけに、観ていて本当に残念でした。


★ ★ ★

教科書はAmazonさんの在庫が補充されました。
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4842917687?pf_rd_r=0Y7GC11TGPX7H9YKBNW1&pf_rd_p=7392bae8-7129-4d1a-96a9-1cfe0aa13ab3

ただ、学生諸君は、大学の生協さんか八千代出版さんでぜひ注文をかけてください。 出版元の八千代出版さんのホームページです。
http://www.yachiyo-net.co.jp/books/item_948.html