昨日、一般社団法人国際総合芸術研究会(WCARS) の特別講演会が開かれ、盛況裡に終了しました。ご来場の皆様に心より感謝申し上げます。

その中で出た質問の中に、「《アディルソンとサルヴィーニ》でよくメゾが歌っているアリアについて」というものがありました。

私は、このアリアの題名を最初の一語 Dopo だけで覚えていて、日本語の訳題を知らなかったのですが、ご質問者のおっしゃりたいことと、私がその場で回答させていただいたことは合致しておりました。要は「のちに、《カプレーティ家とモンテッキ家》のソプラノのアリアに転用されたメロディの原型が、《アディルソンとサルヴィーニ》の中にロマンツァとして入っている」ということです。

このロマンツァ〈Dopo l'oscuro nembo〉(日本語の訳題は〈暗い雲の後に〉など)は劇中第1幕でソプラノの役であるネリーが歌うものです。ただ、調性がヘ短調なんですね。高音域に強いメゾなら、最後のカデンツァのところも十分対応できますね。

一方、《カプレーティ》のジュリエッタが歌う同系の旋律〈O quante volte!〉(訳題は〈おお幾たびか〉。楽譜ではカヴァティーナと銘打たれる)は、ト短調なので、メゾにはやはり高いわけです。一音でもやはり違いますね。また、このカヴァティーナには長大なシェーナや前奏がくっついていますが、《アデルソン》のロマンツァの序奏は、それに比べるとずいぶん短いものです。

ちなみに、ベッリーニと、あと、ビゼーもそうですが、のちの名旋律は、活動の最初期から芽吹いていることが多いです。初期の作品でも積極的に聴いていただければと思います。

私自身は、《アデルソンとサルヴィーニ》を、92年のライヴ音源(カターニアにて:Bongiovanni レーベルから発売されていた)でよく聴いていました。いまは、Opera Raraのスタジオ録音もありますね。

*先ほど知人から連絡があり、「Bongiovanniのは85年に出たLPで、岸さんの持っているのはNuova Eraから出たCDでレーベル違いですよ」とのご指摘をいただきました。本当にありがとうございました。間違いなく、私の手持ちのCDはNuova Eraレーベルでした。修正させていただきます。


★ ★ ★

新刊書が出ます。大学の授業で使うレジュメを纏め、エッセイや年表もつけたものです。書名を『簡略オペラ史』としました。3月10日発売予定です。

アマゾン

https://www.amazon.co.jp/dp/4842917687/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&keywords=%E7%B0%A1%E7%95%A5%E3%82%AA%E3%83%9A%E3%83%A9%E5%8F%B2&qid=1580962859&sr=8-1

楽天
https://books.rakuten.co.jp/rb/16221032/?l-id=search-c-item-text-01