コントラルトのナタリー・シュトゥッツマンさんに2度目のインタヴューをした折、バロック期のある作曲家の手書きの譜面のコピーをもらい受けました。

ベッリーニの《ノルマ》など、手書きの譜面を参照しなければいけないオペラは時々ありますが、筆跡と一緒で、作曲家によって読める度合いが違うので、それは大変です。

シュトゥッツマンさんは「こういうものを一つひとつ掘り起こしてゆきました・・・」と淡々と語っておられましたが、そう仰るまでに、どれほどの時間と体力を費やされたかと思います。

昔の作曲家のそうした手書きの譜面は、複写担当者によって手書きでコピーされます。複写譜の方がやはり整っています。複写担当者の名前はあまり残っていませんが、こういう人たち(主に歌劇場に勤めていた)の労苦も多大なものだと、しみじみ感じます。

ちなみに、現代はパソコンで譜面を作ってゆくようで、この前、新作オペラの解説依頼が来た際に送ってもらったヴォーカル・スコアも、そのまま印刷譜として売りにだせるぐらいに、綺麗にプリントアウトされていました。

大変な手書き譜解読も、こんな風に、状況が変わってゆく。

そのはざまに居ることは、実は幸運なのかもしれない。昔と今をつぶさに眺められるから。