昨日の投稿を読み返したら、急いでいたからか、オペラの内容に関するコメントを殆ど記していませんでした。

チャイコフスキーの歌劇《スペードの女王》は、ロシア語のキリル文字の題名をアルファベットに転写すると、《Pikovaya Dama》になるようです。一般的には、フランス語の訳題《Pique Dame》で呼ばれることが多いです。「ピク・ダム」で言いやすいのでしょう。

この作品は、オペラとしては非常に珍しいことに、原作を膨らませた一作です。プーシキンの小説が非常に短いので、オペラ化するに際して、エピソードをいろいろ足したわけでした。

第1幕の子供たちの合唱は、劇場支配人が「《カルメン》みたいな子供の声が欲しいな」とチャイコフスキーに要望した結果、加わった一節です。

伯爵夫人がフランス語で歌う追想のアリオーソは、ベルギー出身の18世紀の作曲家グレトリの《獅子心王リチャード(リシャール)》(1784)の人気のアリアをアレンジしたものです。〈夜、あの人に会うのが怖い〉という題名が一般的かな・・・

ちなみに、この場面に関しては、「《スペードの女王》に、伯爵夫人がフランスに逗留していた時代のメロディを持ち込むなら、グレトリじゃなくてリュリの曲だろ」と主張する評論家が発表当時から居たようです。それは確かに。伯爵夫人の「若いころ」のメロディなのだから、オペラの世界よりも半世紀ぐらい前の旋律でないと時代考証的には合わないのです。でも、グレトリの庶民的な旋律を非常に暗い色調へと引っ張ってゆくチャイコフスキーの筆の冴えは、本当に見事なものなのです。



このオペラには名曲が実に多い。公爵のアリア(Br)、幽霊になった伯爵夫人(Ms)が主人公ゲルマン(T)の前に現れる一場、ゲルマンとヒロインのリーザ(S)の凄絶な二重唱など、何度でも見たい聴きたいと思わせる迫力十分の名場面です。

その一方で、リーザと友達のポリーナ(Ms)がピアノ伴奏で歌う典雅な二重唱など、ほのぼのとした - でも基本的に哀しげ - シーンも多いのです。

ロシア人なのにロシア語を卑下していた宮廷社会の在り様も、このオペラに詳しくなれば、より分かり易くなるでしょう。

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ヘルシンキとサンクトペテルブルクのオペラ・バレエ鑑賞ツアー、本日が締め切りの最終日のはずでしたが、現地より「日本時間で26日(水)午前中までお待ちします」との一報が入りました。あと数名様のご参加が可能ですから、どうぞご検討ください。エルミタージュ美術館も半日じっくりご覧いただけます。





2月24日(日)から3月3日(日)まで。成田発着。6泊8日。フィンランド航空で向かいます。サンクトペテルブルクのマリインスキー劇場でバレエ《ジゼル》を鑑賞しますが、そのほかに、ヘルシンキでもサンクトペテルブルクでもオペラのオプショナル・ツアーを多数ご用意しています。

www.nippo-tourist.co.jp/kaigai-tour/helsinki_190224.html