新国立劇場バレエ団の《くるみ割り人形》を見に行きました。

このプロダクション(ウェイン・イーグリング振り付け)を拝見するのは、これで確か2度目です。色遣いが鮮やかで、雰囲気が落ち着いていて、私のような門外漢もたっぷりと楽しませてくれるステージです。

ところで、チャイコフスキーのこのバレエ曲(1892年、サンクトペテルブルクのマリインスキー劇場にて世界初演)には、非常に珍しいことに、人声が効果音的に使われています。第1幕の終盤で少年少女合唱団が登場し、ヴォカリーズで歌声を合わせるのです。

「このプロダクションだと、どこで歌うんだっけ?」

以前の演出では、コーラス隊はオケピットの中で黒服着用で歌っていました。

しかし、この舞台では、舞台に最も近い、両袖の2階席(普段、お客さんを入れないところ)に、白い布をまとった東京少年少女合唱隊の面々が、二手に分かれて(上手と下手)登場。さらっと爽やかに声を合わせていたのです。

また、その時の指揮者、アレクセイ・バクランの棒の振り方を見ているだけで、涙が出てくるのが自分でも面白いというかなんというか(!)。

彼が音楽と舞台にいかに傾注しているか、それを目の当たりにしたのでした。

バクランの見事な指揮ぶりは、例えば、有名な〈葦笛の踊り〉のところでも。ただし、このプロダクションでは「蝶々」というソリストがひらひらと踊る(ドロッセルマイヤーの支えをところどころ得て)ように振り付けられています。

役名が蝶々だから、ゆっくりひらひらと飛ぶので、バクランもテンポをかなり遅めにして振っていました。そのテンポ取りが絶妙なのです。

チャイコフスキーもこれなら納得するだろうな・・・と思いながら目は舞台を見つめ、身体のほかの部分は音楽に聴き入っていました。

チャイコフスキーは、このバレエ曲の中の〈金平糖の精の踊り〉に、発明されたばかりの楽器であるチェレスタを使いました。彼が、ほかの作曲家に先を越されまいと必死になっていた様子が遺された書簡類からわかるのですが、その気持ちを思うと、本当に、これまた泣けてくるというか!

一般的に、他人のアイデアを盗もうとする人間は、自分のアイデアがそもそも無いわけなので、その結果盗まれる経験も全くなく、いつまでも悪びれません。だから、ずっと同じことの繰り返しなのでした。

チャイコフスキーは独創性の塊でした。私が心から尊敬する大作曲家の一人です。

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ヘルシンキとサンクトペテルブルクのオペラ・バレエ鑑賞ツアーのご案内です。あと2名様のご参加が可能です。ヘルシンキではマスネの《タイス》をオプショナルツアーで。サンクトペテルブルクではバレエの《ジゼル》を観るほか、オプショナルツアーも多種ご用意しています。ベッリーニの《海賊》の演奏会形式上演やショスタコーヴィチの《ムツェンスク郡のマクベス夫人》の舞台上演など。締め切りは12月25日です。どうぞお早めにお申し込みください。

ヘルシンキではムーミングッズのショップにも立ち寄る予定です。


サンクトペテルブルクではエルミタージュ美術館も半日じっくりご覧いただきます。


どちらの街も、美食で有名ですね。


ロシアのニンジンケーキ

ツアーの詳細はこちらをご覧下さい。
http://www.nippo-tourist.co.jp/kaigai-tour/helsinki_190224.html