インタヴューさせてもらった大歌手たちの中で、最も自然体であろうとしていた女性が、フランスのナタリー・ドゥセでした。

1時間弱のインタヴューを終えて、お礼を言ってその場を去ったあと、通訳の方があとから私に追いついて、こんな風に伝言してくれました。



「今日のインタヴューは、本当に楽しかった。フランスでもあんな風であればいいなと思いました」

遠来の客である芸術家たちに話を伺うのなら、「もてなしの心」を忘れずにいたい。

それは、何かしらの誉め言葉を口にするといったものではありません。

ご当人が、おそらくは最も誇りにしている業績について、はっきりと言及することなのでした。

ところで、ドゥセの最近の来日リサイタルで私がひときわ目を見張ったのが、ドリーブの歌曲〈カディスの娘たち〉でした。

この曲を歌う人は日本人でも結構いるけれど、なぜ、皆さん、あんなに「歌い飛ばす」のだろう。

そんな風に楽譜に書いてあるか?緩急の徐がはっきりしてこそあのメロディだろう?
歌い飛ばす人たちは、そもそも、あの曲を何のために歌っているのか?何を表現したくて歌っているのか?自分の持ち声があの煙のようなラインの旋律美をこなせるかどうか、それをしっかり判断したのか?硬い節回しでは、曲の魅力も半減するというのに。

ナタリー・ドゥセの歌からは、ほかの歌手からはついぞ耳にすることのできない、「凄み」のような味わいすら聞こえてきた。

ドリーブの〈カディスの娘たち〉で、凄みを発揮してくれるとは。

そんな歌手がほかにいただろうかと思います。鮮紅色が桃色に変化し、また鮮紅色へと戻り、茜色にまで至るかのような色鮮やかなヴォカリーズと、即興で挟み込んだ小さな笑い声の毒気が今も忘れられないのです。


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ヘルシンキとサンクトペテルブルクのオペラ・バレエ鑑賞ツアーのご案内です。あと2名様のご参加が可能です。ヘルシンキではマスネの《タイス》をオプショナルツアーで。サンクトペテルブルクではバレエの《ジゼル》を観るほか、オプショナルツアーも多種ご用意しています。ベッリーニの《海賊》の演奏会形式上演やショスタコーヴィチの《ムツェンスク郡のマクベス夫人》の舞台上演など。締め切りは12月25日です。どうぞお早めにお申し込みください。

ヘルシンキではムーミングッズのショップにも立ち寄る予定です。
サンクトペテルブルクではエルミタージュ美術館も半日じっくりご覧いただきます。


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