まだ会社員をしていて、1991年にロサンゼルスにいたときのこと。プッチーニの《西部の娘》を見に行きました。

ギネス・ジョーンズ、プラシド・ドミンゴ、そしてフスティーノ・ディアスというとても豪華な顔ぶれ。ジョーンズが若々しく、3幕でドミンゴを救いに駆けつけるシーンでは、手で押す滑車に載ってさっそうと現れて、客席が微笑みました。

ロサンゼルスのオペラは、かつて、アカデミー賞授賞式にも使われていたドロシー・チャンドラー・パヴィリオンで上演されます。3000席以上ある大歌劇場です。「駐車場でどこに停めたか分からなくなるから、しっかり目印覚えてゆけよ」とアメリカ人たちからよく言われたものでした。

ところで、この劇場に隣接した中劇場では、よく、ミュージカルが上演されます。現地の友達に誘われて行ったのが、あの《オペラ座の怪人》。上記の《西部の娘》はそのミュージカル鑑賞の一週間後に行ったオペラでした。

ですので、《オペラ座の怪人》の有名なメロディが《西部の娘》から取られたものだということもすぐに気づくことが出来ました。そのころから購読していた英『Opera』誌の批評にも、「隣の劇場で上演されていた《オペラ座の怪人》のメロディが《西部の娘》から来ているということを皆さん気づかれただろう』という意味の一行が入っていて、我が意を得たりと喜んだものです。

西海岸はやはりサンフランシスコが名門歌劇場でありますが、サンディエゴでもロサンゼルスでもシアトルでもオレンジカウンティでも立派なオペラ上演をやっています。ロサンゼルスで最も感動したのが、この《西部の娘》とベルリオーズの《トロイアの人々》、それからブリテンの《アルバート・ヘリング》。《トロイア》はカットされた部分を復元した初の上演でもあり、のちに私がこのオペラの解説を書いた時には、その時のプログラム内のデータを引用させてもらいました。《ヘリング》はグラインドボーンの有名なプロダクションを持ってきたもの。アメリカ人向けに、表彰式のシーンがよりコミカルになっていて大笑いしました。

オペラ研究家にとっては、「どこで観る」よりも、「何を観る」方が重要です。でも、《西部の娘》をロサンゼルスで観た経験は、なんとなく、お国ものを観たという気にもさせられて、面白いものでした。

今日、METライブビューイングの素晴らしい上演に接して、このオペラがより好きになりました。《外套》と並んで、プッチーニの作品では最も愛するオペラです。

☆ ☆ ☆

2月24日から3月3日まで、6泊8日、成田発着のヘルシンキとサンクトペテルブルクのツアーのご案内です。http://tabiza.com/detail/904/
*締め切りを12月24日まで伸ばしています。


ムーミンの故郷であり忍耐強く理知的なフィンランドの風土を楽しんだ後、不思議な帝都サンクトペテルブルク - 建物の様式がバラバラで面白い - でエルミタージュ美術館やエカチェリーナ宮殿をじっくり見学頂きます。この2都市ならば食事にも外れはありません。また、私が同行しますので、オペラ(オプショナル・ツアーでマスネの《タイス》)やバレエ(アダンの《ジゼル》)も1回ずつご覧いただきます。この旅行を機会に、オペラやバレエにちょっと触れてみたいとおっしゃる方に、ぜひおすすめのツアーです。



エルミタージュ美術館も半日じっくりご覧いただけます。



フィンランドの装飾品兼お守り ヒンメリ

あと数名様のご参加が可能なので、締め切りを伸ばして12月22日(土)辺りまでお待ちできそうです。NHK関連の催事が多い日放ツーリストまでお問合せください。
ツアーの内容は http://www.nippo-tourist.co.jp/kaigai-tour/helsinki_190224.htmlもご参照ください。