和光市で行われた《トスカ》の公演を拝見しながら(トスカ役の人の歌声が素晴らしかった!)、その前の日に玉川高島屋のカルチャーセンターで行った《トスカ》鑑賞講座のことを思い出していました。

私が紹介した映像ではゲオルギューが熱演していました。彼女のレパートリーで大成功した役柄の一つです。

受講された方からも感想が次々と出ましたが、おひとり、こんな風に質問された方がおられました。

「この時のゲオルギュー以外に、同じぐらいトスカで成功できたソプラノって誰でしょう?」

私がオウム返しに答えたのが「この当時のフリットリならできたかもしれません」というもの。

ただ、フリットリは、トスカを演るといって結局演じなかったような・・・この当時、日本に来る予定でしたが、病気で来日不可能になりました。確か。

フリットリの声は柔らかさが基本になるので、最初はモーツァルトをよく歌っていたと思います。そこから少し重さを増した近年は、プッチーニの《修道女アンジェリカ》やヴェルディの《イル・トロヴァトーレ》《シモン・ボッカネグラ》に出演し、最近はヴェルディの《ファルスタッフ》のアリーチェをたびたび歌っているようです。今でもやはり、声のテクニックを少し使おうかな、といった役柄が多いですね。

ところで、ほかの方から「ゲオルギューとフリットリじゃなければ誰がいたでしょうか?」というご質問が。

「まあ、お客さんをすぐ呼べる人となると、この役を得意としてきたダニエラ・デッシーかな・・・彼女はトスカを長く歌い続けていました。私がオペラ史の授業で見せる映像もデッシーのものになります。いろんな要素が鋭いのでね・・・」

そういえば、デッシー本人は私に「《トスカ》が最近は多いけれど、ベルカント物をやれと言われたら今でもOKですよ。リクエストが来たら喜んで!」と語ってくれました。その後、彼女はベッリーニの《ノルマ》の名演を遺して亡くなりました。《トスカ》と《ノルマ》で大成功できたという点が、カラスに通じる「フレージングの特徴」にもなります。二人が《ノルマ》でスケール(音階)をどのように上り下りしているか、お時間ある人はぜひ、音源や映像を手に取ってみてください。

それから、時間があればフリットリやゲオルギューのベルカントものにも耳を傾けてみてください。ゲオルギューがベルカントものでコロラトゥーラを歌う場合は、パッセージが素早く転がってゆくもの(ロッシーニなど)の方が多くの人に受け入れられるかもしれません。フリットリも《ノルマ》の〈清らかな女神〉だけなら歌っていて、そこではこの人の声の美質がよく出ていると思います。


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2月24日から3月3日まで、6泊8日、成田発着のヘルシンキとサンクトペテルブルクのツアーのご案内です。http://tabiza.com/detail/904/
*締め切りを12月24日まで伸ばしています。


ムーミンの故郷であり忍耐強く理知的なフィンランドの風土を楽しんだ後、不思議な帝都サンクトペテルブルク - 建物の様式がバラバラで面白い - でエルミタージュ美術館やエカチェリーナ宮殿をじっくり見学頂きます。この2都市ならば食事にも外れはありません。また、私が同行しますので、オペラ(オプショナル・ツアーでマスネの《タイス》)やバレエ(アダンの《ジゼル》)も1回ずつご覧いただきます。この旅行を機会に、オペラやバレエにちょっと触れてみたいとおっしゃる方に、ぜひおすすめのツアーです。



運河から見たエルミタージュ美術館。半日じっくりご覧いただけます。



ロシアといえばボルシチ。外せません。


北欧やロシアで有名なニシンサラダ。ビーツの赤色が効いています。

あと数名様のご参加が可能なので、締め切りを伸ばして12月22日(土)辺りまでお待ちできそうです。NHK関連の催事が多い日放ツーリストまでお問合せください。
ツアーの内容は http://www.nippo-tourist.co.jp/kaigai-tour/helsinki_190224.html
もご参照ください。