音楽雑誌さんから批評の依頼が来ていて、川崎まで出かけてきました。

評価すべきことは、その批評原稿に全部投入しなければならないのですが、編集部の方でまだ字数が決まっていないというのです。レイアウトの関係らしい。

私は、批評原稿は、よほどのことがない限り、観た&聴いたその日に書いてしまうので、いま非常にじれったいのですが(!)、レイアウト絡みとなると、そう急かすこともできません。

批評するからには楽譜を読み直し、音符を頭に入れて出かけるわけなので、その音符が漏れ出さないうちに、観た感想と照らし合わせて文章化してゆかねばなりません。というわけで、これから、エスキス的にぱらぱら書いておかねばならないのです。

ところで、今回の上演は「演奏会形式」と銘打つ一方で、歌手たちがステージを動き回り、機敏な所作をたくさん交えるものでした。

こういう上演方法は、セミ・ステージ形式と呼ばれるものに近くなりますが、一般的には、お客さん側の利点として「オペラの音楽とドラマを覚えやすくなる」ことが挙げられます。

オーケストラが舞台上に乗っているので、楽器それぞれが歌声とどのように反応するのか、それを眺めることが出来るのです。また、舞台上の動きが、すべて、歌手たちの人体から発せられるものになりますから、観る側の視点が定まりやすいですね。

あと、衣裳が時代がかったものにならないので、演じる人の所作がきびきびとしたものになります。すると、音楽の訴えかけと歌手たちの演技がスパークしやすくなるのです。衣裳や舞台装置の力で訴えかける時代性、ドラマをないがしろにしてはいけませんが、《フィガロの結婚》のような市民層のキャラクターがたくさん出るオペラだと、歌声と人の動きだけでも、物語のポイントは鮮明に浮かび上がってくるのでした。

なお、今回の上演ではレチタティーヴォ(朗唱)の伴奏にハンマーフリューゲル(イタリア語でいうところのフォルテピアノ)を用いていました。

あと、キャスティングで一点特筆すべきことが。ベルカント・オペラの名手ジェニファー・ラーモアが侍女頭のマルチェリーナ役というのが、もうなんとも贅沢で。そんな配役でこのオペラを観る日が来るとは思わなかった。


☆ ☆ ☆
オペラとバレエの海外鑑賞ツアーのお知らせです。2月下旬から3月にかけて、美食の街でありムーミンが世に出たヘルシンキでマスネの《タイス》(オプショナルツアー)、世界のどこにもない、各国の建築様式が入り混じる「幻想の人工都市」サンクトペテルブルクでアダンのバレエ《ジゼル》を観劇します。


オペラに関することなら道中何でもご質問にお答えしますから、遠慮なく仰ってみて下さい。バレエも知っている限り答えます。そのほかの話題は、皆さんが得意とされているものを、私が逆にいろいろとお訊きしてみたいものです。それがこういう旅の良さですね。

ご興味おありの方は、日放ツーリストのホームページをご覧ください。ロシアのヴィザ取得の関係で、締め切り日を早めに設定していますが、担当さん曰く、12月20日辺りまでお待ちできそうとのことでした。
http://tabiza.com/detail/904/