★ 5月3日付のブログで、このたび、一般社団法人国際総合芸術研究会を発足させたことを告知しています。ご興味ある方は当該の記事をご覧ください。

 しばらくの間、告知を続けないといけないので、ブログ冒頭に毎回、「一般社団法人設立うんぬん」が付きます。あらかじめご承知おきください。

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サルスエラ Zarzuela といえば、スペインの民族オペラ。ジャンルが2分されていて、バロック期のものと19世紀後半からのものに分かれます。近代のサルスエラは規模がどんどん大きくなってきて、笑いも涙もという次元をも超えて、大掛かりなセリフ入りスペイン語オペラの域に達しています。

その規模が大きな近代のサルスエラとして、私が一番好むのが、フェデリコ・モレノ=トローバ作曲の《ルイサ・フェルナンダ Luisa Fernanda》(1932、マドリードにて初演)。御大ドミンゴが出演した映像が発売されていて、同じ演奏の音源も日本語訳付きで発売されたので、我が国でも一挙に有名になりました。

この《ルイサ・フェルナンダ》には、随一の楽しい名場面、〈日傘のマズルカ〉というダンス&コーラス(ソリストの声を少し混ぜる)のシーンがあります。スペインのお話ですが、マズルカのリズムを使っているのです。

明日の金曜日のNHK-FM『オペラ・ファンタスティカ』14時から18時の中で、この〈日傘のマズルカ〉を音源で紹介することになりました。

この演目は、以前、日本語の解説の依頼があって初めて知った一作なのですが、その解説のご依頼をくれた編集者さんには本当に感謝しています。今の私にとっては、授業でも必ず触れ、講演会でもたびたび言及するサルスエラの名作になっています。

スペイン語は軽くて、でもきりっとしている。フランス語の鼻母音のぬめっとした感じとは異なる世界です。

ちなみに、「スペイン語のオペラ」とオペラ史の観点からジャンル分けをするなら、殆ど台詞の入らない、全編を歌い通してゆく曲作りのものになります。

その中でも一番有名なものといえば、ファリャの《はかなき人生 La vida breve》になるでしょう。

このオペラは、1913年にフランスのニースで世界初演されました。ただしこの時は仏語訳詞での上演。

訳詞の方が先に上演されるというケースはたまにあります。マスネの《ウェルテル》(独語訳詞にて)やプロコフィエフの《3つのオレンジへの恋》(仏語訳詞にて)など。《3つのオレンジへの恋》は訳詞の方がいまや有名です。

でも、ファリャの《はかなき人生》はスペイン語であればこその音楽世界だと思うのです。哀感という言葉にずっと浴しているかのような境地。

DVDで一つ、素晴らしい上演が収録されています。チリのソプラノ、ガッラルド=ドマス(ガイヤルド=ドマス)が主演したもの。こちらも必ず、授業で紹介しますが、見どころを5分ほどだけなので、いつも切るのが本当に惜しくなる。でも、「紹介」とはそういうものなのです。

ガッラルド=ドマスといえば、勁くて引き締まった響きの持ち主。口がとても大きく開くことでも有名ですが、この映像では、その口の開きすらも、哀しみの表現に直結しています。ジャンカルロ・デル・モナコの演出も見事。色彩の大胆な使い方に心が痺れます。