1998年出版の『節約生活のススメ』で一躍時の人となった女性です。


しかし、戸籍に関する犯罪をおかしたことと、自著の経歴にかなりの偽りがあったそうで、今では行方知れずになっているようです。


98年の年末、書店に置いてあった赤く目立つ表紙に惹かれて立ち読みしたところ、内容にぐいぐい引き込まれてしまい、そのまま購入しました。


私がどれだけ惹かれたかというと、その時に同じ本を3冊も買い、家族に2冊を手渡したぐらいです。


さて、本を買って自室に戻って全部あっという間に読み通したのが、夜の10時ごろ。


それから私が始めたことがあります。


部屋の中にある「不用品」を次から次へと捨ててゆきました。


中でも大変であったのは、(オペラ以外の)趣味の雑誌のバックナンバーの処分。纏めたら紐で縛ってゴミ捨て場に置きに行く・・・10回分ぐらい繰り返した覚えがあります。


この時は音大に勤めて一年目の頃。


「自分はもうオペラの世界で生きてゆくのだから、オペラに関係ないものを置いておく場所は無い」


そう決意しての行動でした。今夜は金曜日、明日は土曜日。土曜日は資源ごみの日。だから今やらないと・・・


狭い部屋を少しでも広くして、オペラ関連の資料を置く場所を増やさねば、という決心でした。


ちなみに、この時は、上に書いたように音大に在職中なので、自分がやがて退職するなど、まったく予想していません。でも、オペラに関係した仕事ではあったのです。楽譜が一番嵩張りますが、重いのはオペラ雑誌のバックナンバー。


思うに、『節約生活のススメ』が私に教えてくれたのは、「何かを成就させたいなら、何かを諦めろ」というシンプルな人生哲学でした。


それにしても、当時、一つ不思議に思っていたことがあります。


「この本って、なんでこんなに悲愴感が漂っているのか?」


著者が、親戚の一人に付きまとわれ、金銭を始終たかられていたことを、のちの報道で知りました。


でも、その悲愴感が無ければ、私をそこまで揺さぶることもなかったでしょう。


山崎さんがいまどこで何をしておられるのか?まったく判りませんが、もう罪を償われる年数も終わったことと思います。


私が、98年当時に住んでいた部屋から引っ越して、それも、もう10年以上が経過しています。


今の部屋は、昔の部屋の3倍ぐらいの広さですが、それでも、楽譜や論文集、CDやDVD、オペラ雑誌の置き場に余裕が無くなってきました。


海外出張に行くと資料がまた数十冊は増えるので、先ほど『節約のススメ』をさらっと読み返し、少し整理を行いました。


本と著者にひとこと御礼が言いたくて、長々と綴ってみました。