2月も3月も終わってしまって、ファンミレポや映像がたくさん上がっていてみんな追うのに忙しいという変なタイミングなんですけども(笑)
ちょこちょこ書いては止まっていたものがここに来て一気に書き上がったので、アップします!
過去にザックリとあらすじを書いた学園モノ妄想です。
あらすじはこちらから
ベッキョン、ギョンス以外の目線で1話完結となってます。
楽しんで頂けますように。
クラスの人気者の条件と言えば、明るくてユーモアがあって、勉強ができて、スポーツができて、周りに優しくて。
…顔が良くて。
当然だけど当てはまってる数が多ければ多いほど、モテる。
ウチのクラスの場合…、いや。
我が校一の人気者は、
「あー、ベッキョン…!マジでかっこいい…!」
隣りで親友が溜息をついた。
見なくてもわかる。
目がハートだ。
そんな彼女の視線の先には、モテ男の条件をいくつも兼ね備えた、ピョンベッキョンがいた。
彼はいつも人の輪の中心にいて、太陽のように明るく周りを照らしている。
「ねぇ、ちょっと見てよ、あの笑顔。キラキラじゃない?」
「……」
「それでいて子犬みたいなの!反則よね!?」
「……」
「どうしたら飼える?」
「知らない」
お決まりの会話が終わると、私は持っていたバナナ牛乳にストローを挿し勢いよく吸った。
明るく照らすなら、月も同じだ。
太陽と比べて光の強さは違うかもしれない。
だけど暗い夜の空に浮かぶ月が、私は好きだった。
私が好きなのはそういうひとだ。
バナナ牛乳を飲みながら、『彼』をチラ見した。
いつも通り、イヤホンをして周りをシャットアウトしながら勉強をしている。
授業中以外は全て。
親友にも話していないけど、私が好きなのは彼___ドギョンスだ。
彼が教科書から顔を離し、目を閉じて英語のフレーズを呟いた。
私が恋に落ちた低い声で。
高校に入学したばかりの頃、英語のフレーズを呟いている彼と廊下ですれ違った。
その声に心臓を撃たれた。
急いで振り向いたけれど顔はわからなかった。
ある日、教室内で彼の声に気づいた。
顔を見て、完全に落ちた。
クラスの人気者の条件と言えば、明るくてユーモアがあって、勉強ができて、スポーツができて、周りに優しくて、顔が良くて。
ドギョンスはと言うと…。
無口で壁を作って勉強はできるけどスポーツはダメで、顔はいいけど、何より周りに厳しかった。
「ドギョンス?あいつ怖いじゃん」
「こないだちょっと話しかけただけで睨まれたんだけど!」
「私なんて当番代わってって頼んだけど絶対代わってくれなかった!彼氏とデートだったのにー!」
「なにあいつ!!」
クラス内で出る彼の話題といえば、そんな話ばかりで…。
「先生、その単語、綴り違いますけど」
「お?ああ…すまん」
教師にも厳しかった。
でも私は知っている。
彼は睨んでるんじゃない。
目が悪いのだ。
勉強に熱心なだけで、周りを気にする余裕がないだけなのだ。
そして彼は他人に厳しい分、自分にも厳しい。
いつも全てのことを文句も言わずに一生懸命にやっている。
そんな彼を見て「ドギョンスってさ…」と、ついうっかり親友の前で彼の名を口にしたことがある。
「え?ドギョンス?あんたも聞いた?」
「え…?なにを?」
「ミナが委員会をサボろうとしたらドギョンスに阻止されたって。相変わらず融通効かないヤツ…」
それは サボろうとしたミナがダメでしょ!
…と思ったけど、何も言わなかった。
それと同時に、いくら親友でもやはりこの恋心を打ち明けるわけにはいかないと思った。
他人に理解してもらわなくてもいい。
ギョンスの良さは私だけが分かっていればいいの。
誰にも言わず、ひっそりとこっそりと彼を想っていた。
「ピョンベッキョンは今日も休みか」
担任の声に、皆、空席に目をやった。
突然ベッキョンが学校に来なくなり、人気者不在の教室は太陽が隠れた雨の日のように、暗く沈んでいた。
しばらくするとまた来るようになり親友は喜んでいたけれど、ベッキョンの様子は以前と少し変わっていた。
授業中は居眠りをして、授業が終わるとすぐに帰って行った。
ある日の放課後、借りたままだった本を返却しに別棟にある図書室へ向かった。
そこには本を読んでいるドギョンスと___隣りにビョンベッキョンがいた。
今まで教室で2人が話している姿を見たことがあっただろうか?
私は見てはいけないものを見たような気がして、本棚の影に隠れた。
「あ、俺もう行かなきゃ。バイトに遅れる」
ベッキョンは机の上の教科書やノートをかき集めると、胸に抱えたまま慌ただしく席を立った。
「ベッキョナ。明日もまた来いよ?」
「うん」
扉へ向かったベッキョンの手からペンがこぼれ落ち、最悪なことに私の足元へと転がって来た。
追いかけて来たベッキョンと確実に目が合った。
「あ…あんにょん…」
誤魔化しきれずとりあえず挨拶をしたが、ベッキョンは何も言わずにペンを拾うとそのまま図書室を出て行った。
その時の2人が気になり、それから私は毎日放課後になると図書室へ行くようになった。
どうやらギョンスがベッキョンに勉強を教えているようだった。
廊下の窓から中を覗くと、今日も隣り合わせで座っていた。
2人の様子を見ながら私は気づいたことがある。
時々ドギョンスを見つめるベッキョンの視線に…。
まさか…ライバル?
こっちは話しかけることすらできないのに!
1人で嫉妬の炎を燃やしていた。
そんなある日、私は休憩時間に気分転換しようと屋上へ向かった。
すると丁度ベッキョンが階段を降りて来た。
なんとなく気まずくて、お互い何も言わなかった。
すれ違ったその時、彼から何かが落ちるのが見えた。
「あ…」
拾い上げるとなんとドギョンスのポラロイド写真だった。
「やー!!!」
大声を上げたベッキョンの顔が真っ赤だった。
「…見た?」
「見た。ピョンベッキョン、あんたやっぱり」
「やっぱりって何?いや言うな!!絶対言うな!そうじゃないから!」
「何も言ってないけど」
「言わなくてもわかる!それ違うから!!」
「別にそうでもいいんだけど。相手がドギョンスだもの。私はその感情を否定しない」
「いや、そうじゃないって…」
「……ふーん?じゃあこれちょうだいよ」
「は?」
「だって、」
「はぁ!?誰がやるか!こっちだってしつこく頼んでやっと撮らせてもらったんだ!
どれだけ苦労したかわかるか!?」
「……」
「…あ、いや、その目やめろ」
「じゃなんなの?」
「う…」
言葉に詰まったベッキョンが頭を掻いて、諦めたように息を吐いた。
「…あいつ無口でビビられてて誰も寄りつかないだろ。
口を開けば厳しいし…。
でもちょっと真面目すぎるだけで、本当はすごく優しくて面倒見が良くて、よく話すし笑うとかわいいし…。
だからそんなあいつを俺だけが知ってるのが嬉しくて…おい、そんな目で見るな。
とにかく誤解してるけどそんなんじゃない」
「なにそれ!!!共感しかないんだけど!!!!」
「は?」
「そうなのよ!ドギョンスはそうなのよ!!!そういう子なのよ!
ずるい!!私だってギョンスが好きなのに!!」
「『私だって』って…。待て。意味が違うんだよ意味が」
「一緒だよ!好きなことには変わりない!
友情だろうか愛情だろうが、そんなのもうどっちでもいいよ!!!」
私は興奮してもう一度ポラロイド写真を見つめた。
写っているドギョンスが最高にかわいい。
かわいすぎて手が震える。
「ちょっとマジでこれちょうだいって…!
無理なら返すからその前にちょっとこれ撮らせて」
そう言いながらポラロイドを写真に撮ろうと私は制服のポケットからスマホを取り出した。
「あっ!」
ベッキョンは私の手から素早く写真をとり上げると、光の速さで階段を駆け降りて行った。
それからしばらくの間、私は写真を見せろ無理なら撮らせろとしつこくベッキョンの後をついて回った。
そのうち彼を捕まえてはギョンス愛を語るようになった。
友情と愛情。
種類は違うかもしれないけど、私たちにはドギョンスが好きという共通点がある。
そして気がつけばビョンベッキョンは誰よりも気楽に話ができる存在になっていた。
ベッキョンとは親しくなったが、相変わらず私はドギョンスを遠くから見ているだけだった。
羨ましくて、ビョンベッキョンになって彼と友達になりたい。
BLは無理だけど。
いや…それでもいいかも。
そこは流れに任せよう。
そんな世界を妄想した。
「…おい、任せるな。ていうか口に出すな。そんなの俺だって無理だ」
「あ、出てた?」
「うん、完全に。聞いてたの俺だけでよかったな…」
放課後、日直だった私達は教室の片付けをしていた。
「今日もバイト?」
「うん。今日はバレンタインだからなー。忙しいだろうな」
彼は飲食店でアルバイトをしていた。
ある時、少しだけ話をしてくれた。
どうやら家庭の事情があるみたいだけど、深くは聞かなかった。
「そういやお前、ギョンスにチョコ渡さないのか?」
「は?チョコ?そんなの無理に決まってる!!
少しでも困った顔されたら死ぬ!!!」
「……」
「100%、私を好きだと確信がなきゃ渡せない。死ぬ」
「100%って…。だいたいお前あいつと話したことないんだろ?
友達になりたいって言うくせに一緒に図書館で勉強しようって誘っても断るし」
「あの顔を目の前に勉強なんてムリって言ったじゃん。私がドギョンスの視界に入るなんて…うっ」
想像して思わず口元を押さえた。
「…お前のそういうところ、ついて行けないんだけど」
呆れ顔のベッキョンがカバンを掴んで肩に掛けた。
「じゃあ俺行くわ」
「うん。夜から雪降るかもよ。帰り、気をつけなよ」
「おー」
教室を出ようとしたベッキョンが立ち止まり、制服のポケットから財布を取り出しながらこちらへ戻って来た。
「なになに?お小遣いでもくれるの?」
目の前に差し出されたものは、ギョンスのポラロイド写真だった。
「やるよ。ソンムル」
「え、なんで!?」
驚いて声が上擦った。
「このままだとお前は一生ギョンスの視界に入れなさそうだから。写真なら目が合うだろ」
驚き過ぎて受け取ることができずにいると、ベッキョンは私の手を取り強引に写真を渡した。
「い、いいの…?」
「好きなだけ見ろ」
「あ…ありがとう…!」
「バレンタインなのに、なんで男の俺がプレゼントしてるんだ?」
ベッキョンが呆れたように笑った。
「ホワイトデーにお返しする!!!」
「いいよ。大事にしろよ?じゃあな」
「うん、ほんとにありがと!サランへ!」
「はぁ!?」
「人類愛よ、人類愛」
「…じゃあなー」
「うん、気をつけて!」
軽く手を上げながら教室を出て行くベッキョンの見送りをそこそこに、私はすぐに手元のポラロイド写真を穴が開きそうなほどに見つめた。
その夜、ベッキョンは交通事故に遭った。
雪でスリップした車がバイト帰りのベッキョンをはねた。
それから彼はいまだに眠り続けている。
病室のドアを開けると、本を読んでいた彼が顔を上げた。
「…今日も来たね」
「今日もいるね。ベッキョンは?」
「よく寝てる。よくまぁ飽きないなと思ってるんだけど」
「そうだね」
ベッキョンが眠っている間に私とドギョンスは大学生になった。
ギョンスは大学の授業が終わるとベッキョンの病室に直行していた。
その生活も今年でもう3年が経とうとしていた。
「おい…病室にチキンはまずいんじゃないか?」
「今さら。デリバリーしないだけよくない?ビールは我慢したんだよ」
「それは当たり前だ」
「あ、デザートもあるよ。いちご。ベッキョンの好きな。
やー、ビョンベッキョン。起きないとあんたの分も食べちゃうんだからね」
私は白くきれいな寝顔に向けてそう言った。
初めてベッキョンの病室を訪れた時、目を真っ赤にしたドギョンスがいた。
そしてその目はなぜお前がここにいるんだ?と言っていた。
「大丈夫!きっとベッキョンは目を覚ます!」
そう言うと、彼が鼻を啜りながら睨むような目つきをした。
「当たり前だろ」
…ああ、これがドギョンスだね。
それから私はこうして時々様子を見に来ていた。
変わらず眠り続けるベッキョンと、変わらずそばに居続けるドギョンスを。
食べ物を持ち込むようになって、彼と一緒に食べて、話をして。
こうすればベッキョンが目を覚ますんじゃないかって。
何お前達だけで美味しそうなものを食べてるんだって、起き上がるんじゃないかって。
ベッキョナ。
早く起きて。
トギョンスがあんたを心配してるじゃない。
食事に誘うんじゃなかったって。
あの日あの時間、あの場所にいなければ、あんたが事故に遭わなかったって。
毎日自分を責め続けてる。
口には出さないけど、毎日毎日。
だから早く目を覚まさなきゃ。
お前のせいじゃないって、ドギョンスに言って。
成功したよ?私。
トギョンスの視界に入れたし、話もできるようになった。
だけど彼は勘違いをしてるの。
私があんたのことを好きなんだって。
知ってるじゃない。
これは人類愛だって。
そう言って。
早く。
今年もまたバレンタインデーが来た。
雪が降りそうなほど冷えていて、私はマフラーに顔を埋めながらバスを待っていた。
その時コートのポケットの中のスマホが震えた。
ギョンスからの着信だった。
低い声が震えていた。
『起きた…ベッキョンが…。いちご食べたいって…』
神様。
「ギョンスは?」
「まだ。でももうすぐ来るって」
人気のサムギョプサルの店は予約客だけでほとんど満席だった。
ベッキョンが目を覚まして、もうすぐ一年が経とうとしていた。
「ねぇベッキョナ。これ憶えてる?」
私はバッグからある物を取り出してベッキョンに手渡した。
「やー!!!!!!これ!!!!!!」
混雑した店内が一瞬静かになる程、ベッキョンは大声を出した。
「ちょっと…!興奮しすぎ!」
「これ…これ…、俺が撮ったドギョンスのポラロイド…」
「そう」
「天使…天使…」
ベッキョンの手が震えていた。
「でもこれをなんでお前が持ってるんだよ」
「え?くれたじゃない。忘れたの?」
「冗談だよ」
へへへ、と笑うベッキョンの目尻が下がった。
「あー、マジでかわいいなー」
「それ、返す」
「なんで?」
「もう何年も見たから。穴が開くほど」
「…おい、穴が開くって?ラミネート加工してるくせに。これお前がやったんだろ!」
「当たり前じゃないの!汚れたらどうすんのよ!ラミネート加工すれば汚れてもすぐ拭き取れる…」
「ぷっ、相変わらずだな」
そう笑うベッキョンに恥ずかしくなって私はコップの水を飲んだ。
「なんかお守りみたいな気がして。それをもらって私はドギョンスの視界に入れたし、友達にもなれたし」
けど、これを私にくれた日にベッキョンは事故に遭った…。
「だからもう十分。これはまたあんたが持ってた方がいい気がする。
元々ベッキョンのものだったじゃない」
「…で?友達になって終わり?今年のバレンタインもギョンスにチョコ渡さないつもり?」
「前に言ったじゃない。100%、私を好きだと確信がなきゃ渡せない、死ぬって」
「じゃあ…大丈夫なんじゃない?」
「え…?どういう…あっっっ!!!!!!ドギョンスだ!!!!!ちょっ、それ隠して!!」
「なになになに!?」
「写真!!!早く!!!!!」
ベッキョンが笑う。
ギョンスが笑う。
全てが、奇跡だった。