会社の健康診断を終えた帰りの車中、窓の外を流れていく景色を、ぼんやりと眺めながらふと思索する。
視力が落ちた、加齢かな…
幸い、体重の割には他の数値はそれ程悪くはない。
今更ながらに、丈夫に産んでくれた親に感謝する。
柔道選手時代を経て、パワーリフティングで更に痛めた全身も、今辞めて普通の生活に戻れば、多少の慢性的な痛みは残るものの、普通の生活は送れるのだろう。
実業団での柔道を引退した時、まさか自分が40を越えてまで、こんな事をしているなんて想像だにしていなかった。
辞めどきなのか?
突っ走ってきた今年のJCP迄の2年弱、40歳を越えての2連覇。
やれるだけの事をやったという感が無いわけではない。
だけど、元来の本読み気質が、何処かで起承転結や序破急を求めている。
基本、感覚で生きている癖に、こういう時に頭をもたげるこの気質は厄介極まりない。
もう戻る事はない、戻る気もないあの頃。
驚く顔を、楽しそうに笑う顔を見るのが好きだった。
だから無理にでも上を目指した。
自分の力は半分、その思いは今でも変わらない。
一旦区切りをつけ、以前の様な理由が消失した時、鍛錬や強化が漠然としたものになった。
目線の先に明確なものが無くなった時、何処かで緊張感や集中力が欠けていたのだろう、膝を完全に壊してしまった。
そんな中でも、鍛錬は継続した。
神経系を研いで、研いで、鋭利になり過ぎた脆い刀の様になっていた状態を是正する為に、足りない部分を補っていく鍛錬。
そして気付く。
他人の目を気にしだすと、そこに虚栄や卑しさが生まれる。
そして、それは自身の目を曇らせ、ひいては本質を見失う事になりかねない。
強くなり、何かが欲しい?
対価、対価、対価…
いらない、何もいらない。
俺は、乞食をする為にパワーリフティングをやっているのではない。
それは、目に見えるものだけではない。
他人の評価、賞賛…
いらない。
それに気付いた時、蠢きだした。
自身の深淵のなにかが。
はき違えていた、思い出したよ。
〝一生懸命、全力で〟そんな程度で進める領域はたかがしれている。
もう無駄な事は考えない〝残された強くなれる刻〟を思う存分喰らう。
誰かとの勝負ではない。
俺には猪口才な小細工はむかない。
喰らって、喰らって、喰らい尽くしてやる。
クククククッ…
狂気の沙汰程、面白い。