退院当日の診察は本当に簡単なものだった。
内診をして、医師が「うん、大丈夫」その一言と、消毒で終わり。
病室に戻ると、看護師さんが最後の検温と血圧、そして大嫌いな採血…。
医療行為はこれで本当に最後みたい。
病室で待機しているととても親切な医療事務の女性スタッフが丁寧にこの後の事を説明してくれた。
その後助産師さんが体のケアについて説明してくれて、本当に終わった。
悪露?と言っていいのか。
出血はまだそこそこあったが、1週間くらいで終わるだろうという話だった。
最後の採血のせいで、貧血症状が出てしまい、立ち眩みと目のチカチカに困った。
もう、ちゃんとご飯を食べて頑張って血を作るしかない…。
帰宅後、3日ぶりのシャワーで洗髪!!すっきり!!
フラフラで今すぐ寝たいけど、私にそんな時間はない。
とにかく、仮の骨壺を用意しなければいけない。
15w、骨が残るのかわからない状態で立派な骨壺を買って、結果何も残らなくて悲しさが増大するのは嫌だ。
予約した火葬場は、割と新しいので、よく死産ブログで言われている『朝一番の低温の炉』にこだわらなくてもいいそうだ。
むしろ、一般の火葬が午前中に執り行われ、誰もいなくなった午後の時間帯が胎児(赤ちゃんや幼児)専用なのだという。
配慮はするけど、残るかどうかはわからないと言われた。
でも希望は捨てない。
赤ちゃんには、お粗末で申し訳ないが、ダイソーの小さな小瓶を仮の骨壺として購入した。
ついでにエコー写真と遺体の写真をはさむアルバムと、それをしまう箱を一緒に買った。
私はなんでもそうだが、前に進みたい時、心が乱れた時ほど整理整頓や断捨離を無心にやる癖がある。
数少ない遺品を、綺麗に整理することで、しっかりと3度目の妊娠を"終わらせたい"と思っているのかもしれない。
へとへとで自宅に帰ると、保育園から帰宅したチュン太がいた。
なんて可愛いんだ、会いたかった、大好きなチュン太。
夫と話した。
もし、チュン太がいなければ、もう子供は諦めたと思う。
夫婦二人で楽しく生きれる自信があるから。
それに、子供を失う絶望を2度も味わって、3回目に期待するなんて無理だ、と。
でも、チュン太がいる。
チュン太は、私たち夫婦に、出産の尊さと新生児の愛おしさ、赤ちゃんが幼児へと成長する過程の感動を教えてくれた。
一度経験してしまうと、どうしてもこの感覚をもう一度味わいたくなってしまう。
何より、チュン太に言われた「赤ちゃんが欲しい」の言葉。
私達は、もう一度、あの壊れてしまいそうな小さい赤ちゃんを抱きたい。
そしてチュン太とコロコロ遊ぶ姿が見たい。
諦めるわけにはいかないのだ。
チュン太に癒されたのはほんの一瞬で、横になりたくても眠りたくても、ママに久々に会えたテンションハイの3歳男児は容赦ない。
次の瞬間には「うっるさーーーーーいい!!!!」と、なってしまうわけで…不憫なチュン太、ごめんよ。。
翌朝、チュン太が先に目覚めるとリビングでいきなりブリブリーーっと下痢のような音の排便!!
慌ててオムツを開くと、まさかの、チュン太初めての血便!!!!
夫を叩き起こし、即座に小児科予約、支度支度…。
13時半、火葬。
その前に病院で預かってくれている赤ちゃんに入れる花を買って、写真を1枚だけプリントして、11時半に病院へ行かなければいけない。
起きたの8時50分、全然余裕のはずなのに、こんな時に限ってトラブルが…。
9時10分くらいに小児科に到着したが、すでに待ち時間は70分~~~~~~あ~~~~~。泣
とりあえず出発予定時刻の10時半に診察が終わったと思ったら、会計に20分待たされる。
胃腸炎疑いの幼児を新生児フロアに連れて行くのは常識的に無理なので、チュン太は義実家へ預けてマッハで出発。
私たち夫婦と、私の母の3人で赤ちゃんと最後のお別れをする。
家族写真を撮りたかったのでちゃんと化粧をしたかったのに、こんなことがあり、スッピン…。
花を選ぶのに時間がかかり、結局15分遅刻、何も食べていない夫婦、ヘナヘナ。
それでも、赤ちゃんと対面すると、胸が熱くなる。
鮮度が落ちるといけないので、急いで花をかざる。
化繊を入れると温度が高くなるので、可愛いお布団は入れずに記念にいただくことにした。
遺骨が残らなかったときのために、渡り賃を入れる手もあったが、硬貨で骨が砕ける恐れがあるためそれも無し。
木のおもちゃなども、温度が高くなることを恐れてやめた。
結果、生花と両親+チュン太の家族写真、その写真の裏に私と夫の髪の毛をマステで張り付けてそれでおしまいにした。
赤ちゃんは冷蔵保存だったので、すこし皮膚が渇いて、顔色も昨日より赤みが引いていて可愛くなっていた。
正面を向いていたはずだったが、横を向いてしまっていた。
でも、鼻筋も通って顎のラインもきれいな横顔で、横顔ブスの私には羨ましいなと思ってしまったw
お顔が赤いので、顔回りは白や明るい黄色の花で飾った。
花をこれでもかと敷き詰めて、私と夫で棺を持ち、記念撮影。
あと、赤ちゃんソロでも撮影、花が似合う、可愛い。
撮影をして、最後に冷たい頬に触れ、写真を入れて棺に封をしてもらった。
もう、この可愛い顔を見る事はできないね。
棺を胸に抱きたい気持ちはあったが、やはり鮮度を保つため、移動中も隣においておくことにした。
やっとの思いでパンをかじり、化粧をして火葬場へ急行した。
13時半からの火葬なのに、到着が13時25分…世の中上手くいかない。←
先に義両親とチュン太が到着していたのがせめてもの救い。
それでも火葬場のスタッフさんはそんなこと気にもしない感じで進めていく。
祭壇に棺を置いて、ご焼香。
骨壺代わりの小瓶をスタッフに渡した。
「この大きさで間に合いますか?」と問うと「はい、十分ですよ」と言われた。
本当に、灰でもいいから残ってほしい、そう願いを込めた。
炉の前に促され、スタッフが「これが最後のお別れです、合掌にてお見送りください」と言うと棺が炉へと入っていった。
夫は泣いていた。
後ろにいた実母と義両親はわからない。
私は涙をぐっとこらえ、チュン太に言った。
「チュン太、赤ちゃんとお別れだ!バイバイしてあげて!」と。
チュン太と私は、大きな声で「ばいば~い!!」と言いながら手を振った。
炉の扉は、閉まってしまった。
30分ほどで終わるらしいが、冷却に時間がかかったのか、40分ほどで呼ばれた。
スタッフさんが「やはり、あまり残りませんでした…」と申し訳なさそうに言った。
紙の棺の燃えカスが残っているのを見る限り、本当に低温で様子を見ながら焼いてくれたのがわかった。
私と夫は棺があったところに駆け寄ると、本当に、ほんの少しだけ白い骨が残っていた。
「あった…のこった!!!よかった、こんなにある!!あぁ、良かった!!!!」
少ない事が予想されていたので、初めから骨は私と夫だけで拾うと決めていた。
50mlくらいの小瓶に、小さじ1/3程の遺骨が納められた。
スタッフさんに最後の残りを探してもらい瓶に入れて、終了した。
終わった…私はとりあえずの大仕事を終え、悲しみよりも安堵が大きかった。
つづく