観てきた観てきたシンゴジラ

ネタバレもあるので観てない人は閲覧しない方が良いかも。
当方のようにネタバレされても作品を楽しめるなら別w
誤字脱字は脳内補完で、よしなに。


http://ameblo.jp/cyrehn/entry-12186834562.html
上記URL、前回エントリーした「まだ観てもいないシンゴジラについて」の補足的感想批評。
というか、過去の庵野作品を観ている御仁にしてみれば内容なんて難しくも何ともないほどに、ネタのオンパレードだったり、庵野さん自身の作品への回答だったりと、ほぼ想定の範囲内だったんでニヤニヤしながら楽しめた。

庵野ゴジラはこれまでの「着ぐるみゴジラ」とは一線を画すほどの傑作だったので、次回以降に作られるであろう「着ぐるみゴジラ」シリーズを比較の対象にしない方が良いと思われるんだが、一般にしてみれば最早「大衆文化としてのゴジラ」になってしまっているので、比較してしまうのだろうなぁと危惧。
「ハリウッド版ゴジラ」と同じ様な扱いとして「別枠」にしてもらいたいと思っているのが正直な所。


以下、箇条書き。


登場人物台詞回し
・石原さとみの演技が浮いてしまっているのはどうしようもないので、皆さんの脳内で存在そのものを書き換えた方が精神衛生上好ましいと思われ。演技が「悪い・酷い」と聞いていたから覚悟はしていたが、周りの演者と比較すれば、そりゃあの演技と台詞回しは浮くような存在でしか無い。というか、あれも庵野流のお遊びと認識する方が吉なのかもw
・早い早いと言われていた各演者の台詞回しについては思っていたほど早くなかった。焦る官僚・若手閣僚の台詞をもう少し早くすれば、ベテラン閣僚の落ち着きをより表現できたかも。
・自衛隊の台詞回しについてはあれがベスト。有事だからこそ演習の時以上に落ち着いて喚呼しないと統制は取れないし、命令伝達は明瞭確実でなければならない。沈着冷静であったからこそゴジラの脅威が強調される結果になるかと。
・例の「明朝体テロップ」が「早すぎて読めねぇよ」という話しだったが、十分読める。速読出来ない人には読めないだけの話し。お前ら、もっと紙媒体の小説を読もうず。速読を覚えようず(´・ω・`)


内容全般の印象
・低評価が先行していた上に、エヴァの遅れへの呆れもあり「そんなに酷いのか」と思い「コケたらエヴァを作る前に謝罪しろよ」なんてつぶやいたけど、いやいや、近年の日本SF映画で庵野ゴジラほど何度も見たいと思わせる作品は無いと断言できる。前言撤回します、ごめんなさい。
・内容はまんまアニメw
・カット割りはもちろんのこと、ゴジラの熱線攻撃後の帝都被害状況静止画像の見せ方はアニメw
・全方位熱線攻撃の描写はアニメw
・一部ゴジラのCGの動きがカクカクしていたけれど、あれはガメラ2の群体レギオンがガメラを襲撃するシーンでも見られたのでオマージュと捉えてる。CGだからと滑らかに魅せればいいってもんじゃない、あくまで「CGを使ってますよ」をわざと見せているだけ。
・とにかくアニメ的な手法をとことん入れているからこそ、アニメ慣れしている諸兄には受け入れられやすく高評価だったのかも知れない。
・凍ってしまったゴジラは最終形態じゃ無い(特にラストカットで判断)
・こうした群像劇は伊藤和典さんが上手いんだけど、美味しいとこ取りをした上で細かい描写をする庵野さんは流石だなぁと思う。お気に入り映画のひとつに入りました。
・低評価をした自称:映画評論家は何を見ていたんだ?と小一時間。


自衛隊&米軍
・まぁ、実際に戦闘すればあんなものだと思う。他国からの侵略を踏まえた上で運用できる最大限の攻撃力を掻き集めるとなると首都圏周辺の陸自しか攻撃に参加できないだろうし弾数だって無限では無いのだから見せ方としては現実に則っていると思う。
・米国SFやアニメで往々にしてありがちな小銃や機関銃、軽火器での戦闘も無く、俯瞰で見せた戦車配置、特科車両の火力配置は理に適っていると思うし、御殿場から発射されたMLRSなどはその特性上遠距離攻撃も出来るから相当緻密な机上設定がされていたのでは無いかと思うし、最初の攻撃たるコブラの20mmからアパッチの30mmへの有効度変化は初心者には分かり易い見せ方だと思う。
・屋内指揮所、野外指揮所もあんな感じ。一部は米国仕様に似せているかもしれない。
・B-2爆撃機の有効爆撃高度の詳細が描かれていなかったけれども、ゴジラが本気になれば放出される熱線は果てしなく届くのだよという拘りか?
・爆撃の類はGPS爆撃と捉えるべき。
・凝固剤注入シーンでのコンクリートポンプ車の動きを如何に兵器らしく見せるか、これには感動した。ゴジラに接近しつつアームを延ばしながらアウトリガーを展開するなんて誰が考えるんだってぇのw単なる工事用車両であるにもかかわらず、「メカ的に複雑なカッコ良さ」を前面に押し出させるというのは「メカ大好きな男の子ってこういうのが好きなんでしょ?」が分かってないと描写できない。観る側を退屈させない見せ方&魅せ方には本当に感服した。
この先、安全装置を解除して現場で似たような事をやる工事関係者が出るかもwww
・凝固剤注入第一小隊の皆様のご冥福を。仮にあの場面がTV中継されて家族が観ていたらマスゴミが飛びつきそうな案件故、現実における自然災害時の災害派遣にあっても政府は自衛隊(警察・消防)とその家族を守って欲しいと思う。


政府関係者とか会議とか…
・あの総理大臣の自信の無さは極端な保守左派か保守に見せかけた護憲派だろうw
・防衛大臣と文科大臣が並ぶとガメラ2を思い出すのは当方だけでは無いはず。防衛大臣の見た目が山崎千里なんだよなぁ。恐らく庵野流オマージュ。
・総理大臣以下の閣僚数名が熱線で死ぬのはお約束。ハリウッドのSF映画やパニック映画ではカッコ良く見せるかあっさり死ぬかのどちらかなので、やるべき事をある程度やって死なせるのはいいと思う。
・死んだ後の次の首班指名があっさり決まるのは先進諸国なら当たり前の事で何の不思議も無い。これは米国のSFドラマ「バトルスターギャラクティカ」でも描かれている事であって「序列に伴う優先順位」が存在する民主主義だからこそ出来ること。独裁国家だと無政府状態になり軍事政権が樹立されやすくなる。
・農水大臣が首相代行になり後に一切の責任を取って退任。官房副長官だったか「政府機能を最初から作り直す」旨の発言をした時は小説「首都消失」「宣戦布告」や「東京地獄変」終盤の台詞と重なった。この辺り「新しいワインは新しい革袋へ」という聖書の一節とも重なるので伊藤和典さんの影響もあるのかなぁと。
・「お前らのような堅苦しく古い思考じゃ前進できないんだよ。一度壊れてしまったら別方向からのアプローチも必要なんだよ」とも受け止められる。
・柔軟な発想の出来る「はぐれもの官僚集団(つまはじき者)」は実際に必要で、お堅い出世組よりも仕事は出来る。「上が馬鹿だとほんと困る」という経験をした諸兄ならば分かるはず。


ゴジラ…
・ゴジラが歩くと壊れる土留め、屋根からずり落ちそうになる瓦などなど、必要な「特撮」も使用されていたので満足。
・熱線のを吐き出す際の紫系の光はチェレンコフ放射と捉えればいいのか。ゴジラが下を向いて最初に煙状の誘爆剤を吐いて、まずは火炎。腕部胸部の赤い光が消え徐々に紫に変化すると火炎から熱線に変化していく様は、ウルトラマンを含めこれまでの怪獣映画に無かったので新鮮に感じた。強いて似たものを挙げるとすれば平成ガメラ第一部のギャオスぐらいか。
・ガメラが口から放出する火炎放射弾と違い、熱線を吐くゴジラの口の開き方がプレデターに似てるのは、上下に開けるだけじゃ己の顎を焼いちゃうから最大限に開くには顎が割れて開いた方が理に適ってるという庵野さんなりの解釈かも知れないし生物学的にも十分に有り得ると思う。
・ゴジラの腕や手が小さすぎるだろと言う諸兄が多いんだが、別の巨大生物と戦う為に必要ではないし、あのゴジラは絶えず進化(変態)し続けるものと考えれば、別の巨大生物と対峙する事になれば腕や手が巨大化しても何らの不思議も無い。
・水棲生物としてのゴジラで初めて「エラ」を取り入れたのは見事。あの姿が第一形態となっているけれども、「ガバドン」のような姿もあったはずだから第2形態なのかも知れない。
・遺伝子構造の「折り紙」は米国SF映画「コンタクト」で見られた三次元設計図と同じ手法。視点を変える柔軟さというか主観的に考えるよりもまずは客観的に考える発想が必要なのは現代社会でも同じ。
・ゴジラの熱線で焼かれた帝都の中に佇むゴジラは、京都の中に佇むガメラ(平成ガメラ第三部)に重なる。これも特撮大好きSF大好き庵野流オマージュの一つ。
・俯瞰から捉えた街中を歩くゴジラの姿をもっと見せて欲しかった。出来れば「足下から上に向かってゴジラの顎下を捉えたのち、そのゴジラを舐めるように頭頂部へ移動、そのまま俯瞰位置までカメラを引くと街を壊しながら歩く巨大なゴジラが見える」というようなカットワークも見てみたかった。CGが大変だけどw


ゴジラの尻尾の先端から見えるもの…考察
・前回のエントリーで「ゴジラは大東亜戦争で亡くなった英霊の思念(私念)」と書いたけれども、先端にあったのが「人の骨」に見えたので「祖国日本に帰る事が出来なかった英霊の遺骨」と捉えるべきだろうと考えているけれども、エヴァよりも先にあった出来事と捉えるとセントラルドグマに存在した「リリス」と一体化している「人型(ひとがた)」とも重なる。となれば、やはり単なる「ゴジラ」ではなく「シン」を付加している以上、エヴァを意識しているように思えてならない。そのエヴァの次回作は「シン・エヴァンゲリオン」となっているが、ゴジラに「シン」を付加した兼ね合いから、単なる「エヴァンゲリオン」になるかも知れないし「ヱヴァンゲリヲン」に戻るかも知れない。
・進化し続けるゴジラである以上「使徒」であろうし、「我々はこの先ゴジラと共に生きていく」という台詞からしても、ゴジラが存在すると言う事で「シン・ゴジラの世界」は良い方向にも悪い方向にも転んでしまう。良い方向であれば日本を軸とした新世界が作られるのであろうが、悪い方向になれば米国による核攻撃から始まるゴジラの無限増殖及び無限進化(無限変態)による世界破壊という結論に達してしまう。これはエヴァQの世界(別の時間軸のエヴァ)とも重なるし、増殖に関せば平成ガメラ第三部のラストシーン「ギャオスの大群の襲来」とも重なる。
・で、人型が「増殖の卵」もしくは「卵になったアダム」のようなものであって、分離しては成長進化変態を繰り返すのかもしれない。元々のゴジラは「破壊獣」であるのだから、作中で語られた「羽が生えて飛び、海を渡って他の都市を破壊する」という可能性もあるし、果てはキングギドラのような形態に進化変態する可能性もあるし、全く別の進化を開始し、それこそエヴァに登場した「使徒」になって破壊をしてしまうかもしれない。当然「破壊」の中には人類も含まれる。


余談1
論理と感情…再び。
「努力と根性」という精神面と感情を前面に押し出した「トップをねらえ!」を見れば、今回のゴジラは「政治の在り方」「ゴジラの倒し方」を前面に押し出した「論理作品」であると思う。「感情」は官房副長官が声を荒げた場面だけが強調された形になってるから、煩わしさも無いし「機龍というメカゴジラ」に感情を入れ込みすぎたクサい演技を見る事もなかった点は大いに評価したい。また、ゴジラの意匠だけで低評価されてしまったエメリッヒ版ゴジラが再評価される事を切に願う。


余談2
改めてゼネプロ軍団世代の凄さを感じる。
同人を含めたゼネプロ作品を観て育ち生きてきた世代としては良い時代を謳歌してきたと思うし、少なからず同人特撮や同人アニメに関わっていたので、彼らゼネプロ軍団の現在の凄さと素晴らしさは肌身で感じる。ゆうきまさみ・伊藤和典の黄金コンビにしても同じ。80年代を支えたアニメマンガ特撮の作家軍団をセネプロ世代とでも表現すればいいのか、とにかく彼らが居たからこそアニメや特撮の在り方が大きく変化したのだし、彼らのおかげで日本のアニメマンガ特撮文化が世界に広まったのだと思う。


余談3
あと、前回エントリーにも書いたがゴジラが画面に登場しなくても成立するような脚本は他の脚本家に見習って欲しいし、台詞の掛け合いだけでどんな状況どんな場面であるかを表現出来るようにしていただきたい。近年のアニメに多くなった「1人台詞の長回しによる状況説明&独りよがり」で作品そのもののテンポが悪くなるという事を理解していない脚本家が多すぎる。伊藤和典さんが得意とする「物語の核心」に触れ、他の登場人物と視聴者に語る必要性があるならまだしも、「視聴者だけに説明する」だけならば登場人物の台詞の掛け合いで事を済ませれば良い。特に筆頭は、近年、アニメ特撮の脚本を書いて持ち上げられているあいつw


余談4
脚本や設定、表現方法に悪い面が見当たらないのでどうしても評価は高くなってしまう。当方は庵野信者では無いが表現方法の多彩さとしての庵野秀明は好きである。どちらかと言えば当エントリーで頻繁に登場した伊藤和典の方が好きかも。


まだまだ書きたい事は多々あるんだが、1回観ただけでは見落としている部分もあるだろうし、複数回観る事で捉え方が変わる事もあるので、今回はこのあたりで。


その2へ続く
https://ameblo.jp/cyrehn/entry-12192698374.html


追記:余談3について
「Re:ゼロから~」の18話。あれほど酷い長台詞の独りよがりは初めて見た。若年層はあの回を「神回」というらしいw レムはスバルが好きだからスバルの事が分かっているし、視聴者はスバルのこれまでの行動や言動が分かっているのだから、レムがこれまで言えなかった一番口に出したい言葉を端的に短くスバルだけにでは無く視聴者にも向けなければならない。脚本は全くダメだし演出としては3流以下だし何故神回なのかさっぱり理解できない。ここまで何とか見てきたんだがテンポの悪さに切らざるを得ない。
異世界ものなら「まおゆう」の続きを早く観たい。