実は、あの話には続きがありました。
先日、ロケ先に家の鍵を入れたキーケースを忘れてきました。
これはですね、車の中での撮影だったのですが、貴重品を身に着けておこうと、衣装のポケットに入れていたんです。
で、マイクの送信機も、同じポケットに。
で、車内は、カメラや照明で身動きができない。
すごく無理な姿勢でずっと撮影しなきゃいけませんでした。
そんな中での撮影中に、きっとポケットからぽろっと落ちたんだと思います。
それに気づかなかった。
「やっと解放された!」っつって、すぐ車から出ちゃったんですよね。
で、超疲れたから、タクシーで帰ったんです。
キーケースにはSuicaも入っているんで、電車を利用していたら、この段階で気づけたんですけど・・・伊藤裕一という存在は、そういうのを全て突破できるほどの十字架を背負っているので、そんなことでは済まされません。
で、家に帰って気が付いたのですが、その頃にはもう撮影隊もみんな現場を離れており、撮影用の車もレンタルだから別の場所に・・・。
でもね、これも見つかったんですよ。
色んな人に迷惑をかけたけど、返ってきた。
で、気づいたんです。
僕ね、この撮影NG出してないんです。
新幹線のチケットをなくした名古屋の撮影も。
10時間以上、すごく高い集中力を維持できたんですよ、どちらも。
そうなると、反動が来るんですよね。
終わったら、一気に気が抜けちゃって。
身体の力も入らないし、頭も回らない。
「早く帰らなきゃ」って気持ちになる。
現場も片づけたいだろうし、邪魔になる。
だけど、急に注意力散漫になっているから、忘れ物をする。
って言うか、「忘れ物ないよね」の確認がおざなりになってしまう。
ここだよ。
ここなんだよ。
これをさ、もっと簡単にするべきなんだと思ったんです。
海外にいたときは、スリの被害に遭わないように、必ず財布のポケットを触る癖がついていたんです。
で、普段は必ず、財布・キーケース・スマホ。
それぞれのポケットを、移動のたびに、ポンポンポンと叩くという癖がある。
だけど、仕事に脳のリソースを全振りしてしまうと、それを忘れてしまうんでしょうね。
「家に帰って、一刻も早く回復させなければ。」とか「この、疲れた顔をスタッフさんに見せたくない」とか。
そういうことで頭がいっぱいになっている。
だから、撮影前のまだ余裕があるうちに、帰りの自分の為の行動をしておこうと思いました。
はい。
40ですけどね。
今更なんてことはないし、若いころはむしろその辺すごくちゃんとしていたんですよ。
忘れ物なんて一切なかったし、誤字もなかったし・・・でも、芝居中に結構いろんなことが頭を過って集中できないってことも多かったです。
このミスが多かった、2週間くらいは、とても芝居のクオリティは高かったんです。
だから、俳優としては、今凄く理想的な脳になってきたと思うんです。
セリフもスッと入るしね。
だから、これを維持して、日常のあれこれをなるべく煩雑にしない。
洗練された暮らしがもしかしたら目の前まで来ているのかもしれません。