とある作品で、演出家の言うことを全然聞かない人がいました。

 

演出家も経験が浅く、リーダーシップがとれてなかったのだけど。

 

その作品を観に来た、信頼する俳優たちは、口をそろえて「あの人、演出家の言うこと全然聞かなかったでしょ?」と言いました。

 

「作品に馴染んでいない」「足を引っ張っている」と。

 

一番経験値も高く、過去には多くの評価を得ていた人なのに。

 

見る人が見れば分かるのです。

 

「絶対こっちの方が良い」ということや「その人のセンスが信じられない」ということもあるっちゃある。

 

だけど、やっぱりどんなに客観的に、感情を抜きに判断して、「自分が正しい」と思っても、30%は自分が間違っているという可能性は残しておかなければならないと思うのです。

 

人は、自分の中にないセンスをなかなか認められないものです。

 

自分と違うものを批判しがち。

 

だけど、我々俳優がまずやらなければならないことは「作品に馴染む」ことなんだと思います。

 

どんなに、技術が上等であろうとも、どんなに世間から評価されていようと、作品に馴染めなかったら意味がない。

 

そうでなければ、例え「実力者」だとしても、低い評価を得る。

 

「実力者」と呼ばれるようになればなるほど、誰も何も言ってくれない。

 

漢字の読み間違いすら、誰も訂正してくれない。

 

そうやって作られた、偽りの「実力者」に対しては、こちらから「いいところ」を探して、「流石ですね」としか言えない。

 

あれ?

 

と思っても、「わざとかな?」と処理される。

 

「深いですね」と勝手に深読みされる。

 

まぁ、とりあえず「いい」と言っておけば、大丈夫だろう。

 

劇評なんかもだんだんと思考停止し、そうなっていくので、その人からすれば「ほらね」でしかない。

 

そうこうしているうちに、だんたんと萎んでいく。

 

絶対「落ちた」なんてことは書かれない。

 

例えそうだとしても。

 

悪い方向に円熟していってしまう。

 

怖いです。

 

そうなったら。

 

とにもかくにも、自分を過大評価せず、一生勉強の気持ちでいなければ。

 

本当に素晴らしい「実力者」とたくさん会って来たから。

 

だから、道を間違えないようにしなきゃ。

 

完了