一生続けるつもりだけれど、辞め時に関してはよく考えます。
まずは、20代頭に就職で多くの仲間が辞め、後半になると、食えないことに耐えられなくなったり、家庭のことや、結婚などでまた辞めていった仲間がいました。
僕が食えるようになったのは、20代の後半。
運が良かったと思う。
30に突入していたら、どうなっていたかは分からない。
そして、辞めれるということも大切だと思う。
いつでも辞められるわけで、ただ目的もなく続けることは、決して褒められたことじゃない。
才能に恵まれなかった以上、努力は続けるしかない。
あとは、やっぱり「楽しい」とか「好き」でいられるかどうか。
これは、僕個人の考え方だけど、稽古や本番が辛くなったら、辞めたらいいと思う。
もちろん、相性もあるから、たった1回の現場で判断するのは難しいけど。
僕が、「いっそ辞めてやろうかな」って思うのは、やっぱり「芝居ができない」とき。
オーディションに落ちたり、仕事がない日が続いたりすると、そういうことを考える。
必要とされない劣等感を抱えながら生きるのは辛い。
業界のシステムを恨んだりもする。
だけど、芝居をしているときは、「辞めたい」とは思わない。
どんなに苦しい役をやっていても。
だから、辞めないんだろうなとも思う。
「象」が終わって、少し舞台の仕事をセーブしたのは、「刻」の準備に時間を使いたかったのと、「今自分の方向性を決めていいのだろうか?」と思ったから。
舞台は大好きで、仕事のほとんどは舞台。
僭越ながら主演も何度かやらせていただきました。
だけど、ドラマや映画の世界では、まだまだ端役なわけです。
知名度もない。
『自分が舞台に向いている』『一生舞台だけをやっていく』と判断するには、早計じゃないかと思ったんです。
全部をしっかり体験して、それから改めて自分のフィールドを決めたいと思いました。
舞台でしかいい役を貰えないから舞台をやっている
のと
自分の選択で舞台をやっている
のでは、大違いですよね。
また、悲しいかな、舞台俳優にはどうしても前者のイメージがまとわりつきます。
「早くテレビ出れるといいね」とか散々言われてきたわけです。
いやいや、舞台で食えてるし、舞台が好きでやってんだよ。
と答えていましたが、僕はそんなにテレビにも映画にも出てない。
『舞台俳優は上手い』というのはもう10年前のイメージだと思います。
今はそうじゃない。
いくら舞台に立ったって、成長できない人はできない。
しっかり俳優と向き合い、育てる人も減った。
だから胡坐をかいてはいけないと思うのです。
もしかしたら、ドラマが一番合うかもしれない。
今の事務所に入ったのは、映画に出たかったから。
30代の後半は、そうやって過ごすことになるんじゃないかなって思うんです。
置かれた場所で咲きなさい
と言う言葉を、「そこで我慢しろ」という解釈をするんじゃなくて、「どこに行っても花咲かせようぜ!」と僕はとりたい。