電車で、そんな二人に出会いました。

声の大きい彼氏は、ちょっとアレらしく、彼女にデレデレしながら「俺のどこがすき?」とか「そのプレゼント他の人になんか言われた?」「センスいいって言われた?」などと大きな声で聞いています。

一方彼女はそれにか細く震える声で、なにかボソボソと答えています。

彼氏はそれを聞こえてんのかわかんないけど、彼女をギュっと抱きしめて、僕に肘打ち。

抱きしめ方激しいだろ・・・とか思っていたら、彼女の鼻に自分の鼻をすりすり。

そして彼女がボソボソ。


なんだこいつら・・・と思っていた僕の頭によぎる一抹の不安。

もし、この二人恋人同士じゃなくて、彼女は小さな声で必死に「やめてください・・・」って言ってたらどうしよう!?

そう思い、耳を澄ませる僕。

彼女がボソボソ。

彼氏うるせー!

あぁ、便宜的に彼氏彼女って言葉を使っています。

彼女の降りる駅が近づいたらしく、彼氏は今日一日を大声で振り返る。

そして、次のデートの約束を取り付ける為、聞いたことないバンドのチケットを取ってあることを彼女に告げる。

唯一聞き取れた、彼女の返事。

か細い声で、ようやく聞き取れる声。

だけど、少し震えている。


「・・・うれしい」


なんだ、ただのバカップルか・・・。

ホッと胸をなでおろした僕を慣性が、つんのめらせる。


ふぁくたーファクトリー