はい! 宇宙オタクの奈央です。
「火星の石」は2000年11月に南極の昭和基地近くで発見されました。
現在は国立極地研究所(東京都立川市)で保管されています。
極地研では、生命の起源の解明につながる学術的に重要な価値があり、「ご神体」と呼んでいるそうです。
火星の石
ラグビーボールほどの大きさ(幅29cm、高さ16cm)で、一部がやや緑色がかっている。室温22度前後、湿度50%程度に保たれた保管庫で厳格に管理され、研究者など一部の人しか見ることができません。
FNNプライムオンライン によるストーリーよりお借りしました。
この「火星の石」と呼ばれる隕石は、2000年に南極観測隊が発見したものです。
実は、日本の観測隊と隕石の歴史は、1969年、第10次南極地域観測隊が、南極大陸のやまと山脈で初めて9個の隕石を発見したことに始まります。
その後、観測隊に隕石探査の任務が与えられ、24回にわたる調査で約1万7000個の隕石を採集しました。
なぜ南極でこれだけ多くの隕石が発見されるのでしょうか?
答えは、南極大陸を覆う“氷床”と呼ばれる分厚い氷の層の動きと関係があるそうです。
南極に落下した隕石は、長い時間をかけて氷床の中に取り込まれます。
氷床は、内陸から沿岸部にゆっくり動いているので、隕石も氷の流れとともに沿岸部に運ばれていきます。
途中、山地や山脈などせき止められる場所があると、氷は昇華または消耗によってなくなり、隕石だけが取り残されるというわけです。
南極隕石の集積機構
国立極地研究所南極隕石ラボラトリーHPよりお借りしました。
なぜ、火星の石ということがわかるのか?
B4 玄武岩質シャーゴッタイト (u-tokyo.ac.jp)
1976年、NASAの火星着陸機「バイキング」は火星表面へと降り立ち、数々の調査を行いました。
その中には火星大気組成の分析も含まれていました。
バイキング軌道船と着陸船
バイキング1号着陸船が降りたクリュセ平原
平塚市博物館HPよりお借りしました。
宇宙空間からやってきた天体が火星の表面に衝突すると、表面の岩石が火星から放り出されることがあります。
このとき、岩石の一部が溶融し、さらに火星大気を岩石中に閉じ込めることがあるでしょう。
このように考えたNASAのボガード博士らは、EET79001と呼ばれる隕石に閉じ込められていた大気の同位体組成を調べました。
その結果、バイキング探査機が測定した火星大気組成と同じであることが明らかになりました。
こうして、ある種の隕石が火星起源であることが確認されたのです。
火星由来の隕石は岩石学的特徴により、主に、シャーゴッタイト、ナクライト、シャシナイトやALH 84001に分けられています。これらの隕石は火星での火成活動で形成したと考えられています。
火星隕石の 129Xe/132Xe 対 84Kr/132Xe プロット
*EETA79001: シャーゴッタイト
TPSJ HPよりお借りしました。
ザガミ隕石 不適合元素に富む玄武岩質シャーゴッタイト
東京大学総合研究博物館HPよりお借りしました。
シャーゴッタイトは、岩石学的分類により、玄武岩質、レルゾライト質、およびオリビンフィリックに分けられます。さらに化学的特徴から、不適合元素に富むもの、乏しいもの、その中間のものに分けられます。
これらの違いは、火星で生じたマグマの起源物質の違いによるものと考えられています。
放射性同位体を用いた年代測定によると、ALH 84001は約41億年前、ナクライト・シャシナイトは約13億年前、シャーゴッタイトは5億年前から1億8千万年前の火成活動で形成したものでした。
上の写真のザガミ隕石は、約2億年前に形成した不適合元素に富む玄武岩質シャーゴッタイトであり、この隕石に含まれる輝石の化学組成の累帯構造を調べると、2段階での結晶成長の痕跡が伺えます。
第一段階は、マグマ溜まり内での結晶化です。十分にゆっくりと結晶が成長することにより、鉱物の組成は均質なものとなります。
第二段階は表層での急速な冷却過程であり、鉱物の組成は連続して変化をします(累帯構造)。
このように火星起源隕石を調べることで、過去の火星の火山活動や、地殻物質の形成過程に関する知見を得ることができます。
はい! 今回はここまでです。
それじゃあ、またね。