はい! 歴史大好きの奈央です。
恐竜絶滅の原因として、巨大な隕石衝突が引き起こした環境変化であるという説は、世界の多くの人が受け入れている説ですよね。
白亜紀末の隕石衝突
恐竜のしっぽHPよりお借りしました。
それじゃあ、その環境変化ってなんでしょう?
- 隕石の衝突エネルギーによって、地球規模の森林火災が発生し、多くの生き物が死に絶える。
- 大きい隕石が衝突すると、大量の塵が発生し、それが大気中に漂うことで太陽光線がさえぎられて、地球が寒冷化し、これに適応できない生き物が死に絶える。
- 太陽光線が地表に届かなくなることで、光合成をする植物が減ってしまい、植物を食べる草食恐竜が死に、今度はそれを食べる肉食恐竜が死に、というように食物連鎖の階段を登るように次々と恐竜が死んでいった。
一般的に受け入れられている具体的な理由はこんなところでしょうか。
今回は、恐竜絶滅の原因について新しい説が報告されていたのでご紹介しますね。
情報元は以下のサイトです。
隕石衝突後の環境激変の証拠を発見 〜白亜紀最末期の生物大量絶滅は大規模酸性雨により引き起こされた?〜|日本原子力研究開発機構:プレス発表 (jaea.go.jp)
隕石衝突後の環境激変の証拠を発見
白亜紀最末期の生物大量絶滅は
大規模酸性雨により引き起こされた?
筑波大学 丸岡 照幸 准教授らの研究チームは、白亜紀―古第三紀(K-Pg)境界層試料について、放射光を利用した蛍光X線微量元素マッピング分析、中性子放射化分析、質量分析計全岩元素分析を行い、隕石衝突直後の地球環境変動のうち、大規模な酸性雨が実際に発生していた証拠を発見しました。
白亜紀最末期(約6600万年前)に巨大隕石が衝突し、生物大量絶滅につながったことは、これまでの様々な研究により、広く受け入れられています。しかし、生物大量絶滅を引き起こした隕石衝突直後の環境激変がどのようなものであったかに関しては、未だに不明な点が多く残されています。
隕石衝突から逃れる恐竜の想像図
ナショナルジオグラフィックHPよりお借りしました。
本研究では、K-Pg境界層試料に対して、大型放射光施設SPring-8の放射光を用いたμmレベルでの微量元素マッピングを適用し、酸性雨によって形成されたと考えられる銀・銅に富む微粒子を発見しました。
このような大規模な酸性雨は、K-Pg境界における生物大量絶滅を引き起こした原因となった可能性があります。
デンマークのスティーヴンス・クリントにある6600万年前の白亜紀-古第三紀(K-Pg)境界層
DG LAB HAUS HPよりお借りしました。
研究の背景
地球に生命が誕生してから現在に至るまでの間に規模の大きな5つの事件はビッグファイブと呼ばれています。
ビッグファイブの最後の一つが起きた白亜紀-古第三紀(K-Pg)境界(約6600万年前)では、恐竜やアンモナイトを含む70%程度の生物種が絶滅しました。
このK-Pg境界の生物大量絶滅は、メキシコのユカタン半島に直径約10kmの巨大隕石が衝突(チクシュルーブまたはチチュルブ衝突)したことが引き金となっています。
巨大隕石の落下直後には、(1) 太陽光遮断、(2) 酸性雨、(3) 温暖化、(4) 紫外線透過といった環境変動が起きたのではないかと言われています。
しかし、これらの環境変動のうちどれが実際に起こり、どれが最も生物相に影響を与えたのか定かではありませんでした。
それは、これらの現象は極めて短時間で起こる事象であり、地層中にその様子が記録されることは難しいと考えられてきたためです。
巨大隕石衝突仮説は、K-Pg境界層に、イリジウムをはじめとする金属鉄に取り込まれやすい元素(親鉄元素)が高濃度に存在することをもとに提案されました。
親鉄元素は、地球の表面付近にある岩石にはほとんど含まれていませんが、隕石には多く含まれています。
従って、K-Pg境界層に高濃度で存在する親鉄元素は、隕石由来の物質が地表に広くばらまかれたことを意味しています。
鎌田浩毅の役に立つ地学よりお借りしました。
一方、K-Pg境界層には親鉄元素だけでなく、銅、亜鉛、銀、鉛といった硫化鉱物に取り込まれやすい元素(親銅元素)も高濃度に含まれています。
しかし、K-Pg境界層の親銅元素は、隕石由来物質中に比べて1-2桁程度も高濃度であり、K-Pg境界層の親銅元素の濃集には落下隕石以外にも原因があるはずです。
そこで本研究では、K-Pg境界層の親銅元素に着目し、生物大量絶滅を引き起こした環境激変の詳細を明らかにすることを試みました。
研究内容と成果
本研究では、デンマークにある海岸沿いの断崖 Stevns Klint に露出するK-Pg境界層の試料に対して、大型放射光施設SPring-8における放射光を利用したμmスケールでの微量元素マッピング分析を行いました。
その結果、K-Pg境界層には、銀・銅に富む微粒子が、それぞれ独立に存在することが明らかとなりました。
放射光を利用した蛍光X線イメージング(京都大学HPより)
(A), (B): 鉄(Fe)・銅(Cu)・銀(Ag)の広範囲マッピング
白色の正方形: 黄鉄鉱(FeS2)粒子の位置
銀(黄枠)・銅(赤枠)は、黄鉄鉱(FeS2)粒子中にも含まれているが、それ以外のところにもが存在している。
銀や銅は、黄鉄鉱(FeS2)などの硫化鉱物に取り込まれやすい親銅元素であり、K-Pg境界層でも、これらの親銅元素は黄鉄鉱粒子に含まれています。
一方で、黄鉄鉱とは別個に粒子を形成している銀や銅は、酸に溶けやすい元素であることから、これらの粒子の存在は、大規模酸性雨によって大陸から溶け出した銀や銅が大量に海洋に流れ込んだことを意味しています。
さらに、Stevns KlintのK-Pg境界層においては、銀や銅の濃度がイリジウム濃度と高い相関関係を持つことから、銀や銅の濃集は、イリジウムの濃集(隕石衝突)と同時期だったことが分かったのです。
隕石衝突により、地表や破砕岩石から放出された三酸化硫黄や一酸化窒素が、隕石衝突後の短時間で大規模酸性雨をもたらしたと考えられ、これにより、銀や銅が海洋に大量供給され、その環境激変が生物大量絶滅を招いた可能性が示されました。
K-Pg境界における巨大隕石落下直後の大規模酸性雨と銀・銅に富む粒子の生成の仕組み (京都大学HPより)
巨大隕石が衝突した地層は、石灰岩・蒸発岩から構成されるが、衝突による加熱によりCO2や三酸化硫黄 SO3が放出されます。SO3は、硫酸 H2SO4となり、硫酸エアロゾル(微粒子)を形成します。硫酸エアロゾルは、雨水に溶解して硫酸酸性雨となります。
隕石衝突によりクレーターから放り出された破砕岩片は再び地上に向けて落下し始めます。岩片直下の空気は断熱圧縮という現象により加熱され、そこで一酸化窒素(NO)が形成されます。NOはNO2を経てHNO3へ達し、硝酸エアロゾルを経て、硝酸酸性雨となり地上に到達するのです。
これらの酸で溶かし出された銀や銅は、河川を通じて海洋に達し、そこで銀・銅に富む粒子が形成されます。
イリジウムなどの隕石に起因する成分は、衝突による加熱により気化するが冷却されて固体凝縮物を形成します。これらも海洋底に達し、堆積物に取り込まれるのです。
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酸性雨でなぜ多くの生物が絶滅するの??
marine: でも、植物や水中の魚たちは、pH変化にとても弱いんですよ。
下の図を見てみて!
pHの水生生物への影響
光合成速度に対するSO2の影響
野菜の種類による適正pH値の違い
アクアポニックスHPよりお借りしました。
かつて日本では、銅鉱山の開発によって、大量の亜硫酸ガス
(SO2)を発生させて、見渡す限りの山をはげ山にした歴史があります。
足尾銅山
今昔写語HPよりお借りしました。
その復旧作業は、現代でも続いています。
今も緑化が進められている足尾の山々
日本ユネスコ協会連盟HPよりお借りしました。
思い出しついでに、もう一つ思い出しました。
実は、4年も前に、ほぼ同じトピックについてブログに書いていました。
ごめんなさーい。
以前のブログを読むと、私ってあまり成長してないですね。
それじゃあ、またね。