はーい! 科学オタクのナオでーす。
ブログ: 星までの距離はどうやって測定するの?
の後編でーす。
宇宙の歴史を紐解くのに、太陽系外の恒星や銀河系外の銀河までの距離、即ち、過去からの時間を正確に把握することはとても重要です。
つまりは、宇宙の始まりを明らかにすることに繋がるのです。
宇宙の歴史
時空人 goo blog「脳トレ宇宙論ー人類の見果てぬ夢」よりお借りしました。
ということで、昨日の続きです。
星までの距離はどうやって測定するの?
今回のトピックは下の資料およびURL情報を参考にさせていただきました。
Ia 型超新星の明るさと銀河の距離
国立科学博物館 洞口俊博
測定方法の概要
*今回は、前々回(1と2)、前回(3)の続きで、下の4と5について説明したいと思います。
- 銀河系の中の近くの星までの距離は、三角測量の原理を使って測定することができます。
- 星の色からは、その星の本当の明るさがわかります。星の本当の明るさと見 かけの明るさを比較することで、その星までの距離が推定できます。
- 近くの銀河などの場合には、星の本当の明るさと色の関係に加えて、その銀河の中にある脈動変光星という星を使うことによって距離を推定します。
- 遠くの銀河などの場合には、銀河の中にあらわれる超新星を基準の明るさとして使うことで距離を推定することができます。
- 非常に遠くの銀河までの距離は、その銀河が遠ざかる速度を使って推定します。
具体的な距離測定方法
4. 遠くの銀河などの場合には、銀河の中にあらわれる超新星を基準の明るさとして使うことで距離を推定
ある種の星は、その一生の最期に大爆発を起こします。その現象は非常に明るい星がとつぜん出現したように見えるので、「超新星」と呼ばれています。
壮絶な星の最後ー超新星爆発ー
田中 雅臣(国立天文台)氏資料よりお借りしました。
かに星雲M1(the Crab Nebula)
TOKYO EXPRESS HPよりお借りしました。
超新星は銀河1個並みの明るさで輝きますので、遠方にある銀河の距離を推定する方法に使われています。
超新星にはいろいろな特徴をもったものがありますが、Ia型と呼ばれる超新星は最も明るくなった時の絶対等級(極大光度)がだいたい同じ -19.5等級 であるということが観測で分かっています。
また、だんだん暗くなっていく際の光度変化も分かっています。
1a型超新星の光度曲線 測定値と較正後の重ね合わせ
国立科学博物館 洞口俊博氏の資料よりお借りしました。
したがって、Ia型超新星爆発の見かけの明るさや光度変化を観測すれば、絶対等級との関係から距離が分かるのです。
(本シリーズの前編 HR図の部分を参照してくださいね。)
つまり、見かけの明るさが暗い超新星ほど遠くにあり、その超新星があらわれた銀河までの距離がわかるのです。
**************************
超新星爆発ってどれくらいの頻度で起こるんにゃ?
国立天文台理論研究部の田中雅臣氏の資料によると
1つの銀河で100年に1回
だから、100の銀河を見れば、1年に1回
3万の銀河を見れば、1日に1回
超新星爆発を見ることができるんだそうよ。
****************************
5. 何十億光年以上離れた遠い銀河までの距離を知るには、その銀河が遠ざかる速度を使って推定
地球から見ると、宇宙が膨張しているために、遠くにある銀河ほどより速い速度で遠ざかっていることが観測から分かっています。
つまり、銀河が遠ざかる速度が分かれば、その速度から距離を推定することができる、というわけです。
「遠ざかっている物体から出る光の波長は長い方にずれる」という性質を使って、銀河のスペクトル線の波長のずれを観測することで速度を知ることができます。
測光的赤方偏移
谷口義明(愛媛大学)唐牛宏(国立天文台)の資料
COSMOS Press Release HPよりお借りしました。
上の図で、25億光年、50億光年、75億光年の距離にある 銀河のスペクトルがどのように観測されるかを実線で示しています。
距離が遠くなるにつれて、右側の長波長側(赤色側)に偏移(赤方偏移)していくことが分かります。
赤方偏移とは、遠方の天体から到来する電磁波の波長が、ドップラー効果によって長くなる現象をいいます。
赤方偏移による波長のずれは、天体の光を分光し、フラウンホーファー線を観察することによって調べることができます。
フラウンホーファー線の赤方偏移
ア・ゲイン・シエラHPよりお借りしました。
フラウンホーファー線とは・・・
1802年、イギリスのウイリアム・ウォラストンは、太陽光のスペクトルのなかにいくつかの暗線が存在することを報告しました。
1814年、フラウンホーファーは、ウォーラストンとは別に、暗線を発見し、系統的な研究を行い、570を超える暗線について波長を計測しました。彼は、主要な線にAからKの記号をつけ、弱い線については別の記号をつけました。
その後、グスタフ・キルヒホフとロベルト・ブンゼンは、それぞれの線が、太陽の上層に存在するいろいろな元素や地球の大気中の酸素などによって吸収されたスペクトルであることを示しました。
太陽の低分散スペクトルとフラウンホファー線
天文学辞典HPよりお借りしました。
もう少し詳しくいうと・・・
10メガパーセク(3,260万光年)以上離れた位置に観測される天体には、地球との相対速度と解釈される赤方偏移が見られます。
このドップラー効果から計算される、様々な銀河の地球からの後退速度は、数百メガパーセク(数億~数十億光年)程度離れた銀河までは地球からの距離にほぼ比例します。
𝑣 を天体が我々から遠ざかる速さ(後退速度)、𝐷を地球からその天体までの距離とすると、以下の式のような関係になります。
ここで比例定数 𝐻0 はハッブル定数 (Hubble constant) と呼ばれ、現在の宇宙の膨張速度を決める定数です。
この発見は、宇宙は膨張しているものであるとする説を強力に支持するものとなりました。
************************************