はーい! 科学オタクのナオでーす。

 

 

一昨日から、オパールについてレポートしていますが、今回は、合成オパールについて書きたいと思います。

 

合成オパール(Synthetic opals)

Virtual Museum of Gems & Gem Crystals HPよりお借りしました。

 

ダイヤモンドルビーサファイヤエメラルドなど、多くの宝石人工的に合成されています。

 

これらの結晶性鉱物と違い、天然のオパール非晶性であり、かつ、径が揃った微粒子の最密充填構造という点で特異的です。

また、天然のオパールでは水中にコロイド状のゾルの状態で浮遊している珪酸球状になり、ゆっくりと沈殿して1cm の厚さのゲルとなって固化するまでに数百万年はかかっていると考えられています。

 

この数百万年もかかって最密充填される積層構造をどのようにして合成するのでしょうね。

 

今回、これを書くにあたって、以下のサイトを参考にさせていただきました。

gemus-opal-synth (gemhall.sakura.ne.jp)

 

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合成オパールの歴史

 

1964年頃オパール遊色微細な球状のシリカ(SiO2の整然とした配列によるの干渉であると判明したのは、電子顕微鏡で内部構造を直接見ることが出来るようになったためでした。


1968年、最初に合成オパール製法の特許を獲得したのはオパールの内部構造を顕微鏡で最初に確認したオーストラリアの A. J. ガスキン と J. V. サンダース でした。

オパールの合成には次の三つが重要な鍵となります。

  1. 直径が150~450nmの範囲で単分散(サイズが揃った)非晶質のシリカ球を作る
  2. シリカ球が整然と並んで重なる密充填構造を作る
  3. この構造をゲル化して固定させる

 ガスキンサンダースの特許の内容は簡単にまとめると下記の通りです。 

 珪酸ナトリウムを陽イオン交換樹脂を通して 2.5% の珪酸を含む pH4.5 の純粋なシリカゾルが得られる。

 ゾルが固化してゲルにならないように苛性ソーダを加えてpH9.0まで加えて安定化し、さらに一昼夜沸騰させる。

 その後ゾルを 20℃ まで冷却し、安定化してさらに6時間沸騰させるというサイクルを何回か繰り返すと直径 40~80 nm のシリカ球が出来る。

 このゾルに遠心分離と沸騰を繰り返すと直径 250~350 nm のシリカ球粒子になる。

 さらに純水に拡散させ、遠心分離を繰り返すことで遊色を示すオパールの凝固物が出来あがる。

 

 この方法はかなり面倒で時間がかかります。

そうなの…ZZZ

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同じ1968年、ニューヨーク、ロチェスター大学の W. StoeberA. Fink は、エチル基やメチル基等のメタン系炭化水素基とシリコンの化合物であるアルキルシリコンから出発して、アルコール溶液中で珪酸と加水分解させる方法を開発しました。

 

 種々のアルコール、アンモニウム飽和のアルコール溶液、水酸化アンモニウムと水とを一定の割合で混合し、アルキルシリコンを加えると、1~5分後に、液はもうオパール光を放つようになります。

 ある場合には、15分間で粒子は目的の大きさになります

 

 オパールは数週間から数ヶ月かけてゆっくりと沈殿させます。生成したオパール層固定化するためにはシリカゾルあるいはメチルメタアクリラートまたはシクロヘキサンなどを加えて遠心分離させた後で30日ほどかけて乾燥させ、さらに加熱処理をします。

 

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 以上がオパールの合成方法です。

しかし、製造特許が確立されたものの、最終的に彼らの手によって合成オパールの商業的な生産には至りませんでした

 というのは、最も簡単と思われたオパールの固定化が意外と難しかったためです。

 

 オパールの場合、シリカ球は整然と並んではいますが結晶ではありません。

 オパールがばらばらにならずに固体として存在出来るのは、恐らくシリカ球の空隙を埋めるシリカゾルが膠のような役目を果たしていると考えられます。

固定化 うーん

 

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1972年、様々な困難を克服して合成オパール商業生産を実現したのはフランスのピエール・ギルソンです。

 

 ピエール・ギルソンは、窯業技術の専門家で、フランスのカレーに工場を持つ高級陶磁器会社の経営者です。

 しかし彼は、スイスのレマン湖のほとりにあるローザンヌの郊外のサン・シュルピス(St.Sulpice)の研究室にて宝石合成の研究ライフ・ワークとする日々を送っています。

 

 彼が手がけた合成宝石は、エメラルドトルコ石珊瑚ラピス・ラズリと多様で、アメリカのチャザムと並ぶ合成宝石史上に名を残す天才といっても差し支えありません。

 

ギルソン社の合成オパール(Synthetic opals)

Virtual Museum of Gems & Gem Crystals HPよりお借りしました。

 

 ギルソンオパール合成に成功したのは、最終的に高温での加熱と加圧による安定化に成功したためです。

 ブラック・オパールホワイト・オパール、そして、1970年代末にはメキシコ産のウォーター・オパールのようなオパールの合成にも成功しました。

 

ギルソン社の透明なウォーター・オパール

Virtual Museum of Gems & Gem Crystals HPよりお借りしました。

 

 1990年代になってギルソン自身は合成から手を引き、その技術は日本の中住クリスタル社に売却され、オパールは日本でしばらく生産されるようになりました。

 

京セラ 世界で唯一の合成オパールメーカー

 日本の京セラ㈱が最初に合成オパールを発表したのは1983年です。

 ブラックオパールホワイトオパール着色ポリマー充填オパール、それにファイアーオパール多様なオパールの合成を試みています。

 

京セラの合成オパール 

着色ポリマー充填合成オパール 合成ファイアーオパール

Virtual Museum of Gems & Gem Crystals HPよりお借りしました。

 

 競合他社が全て生産を停止してしまっている現在。京セラ世界で唯一の合成オパールを生産しているメーカーです。 

 

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天然オパール合成オパールの見分け方

 天然オパール合成オパール違いは、遊色の規則性を見ることで、その違いを見極めることができます。

 

 顕微鏡でオパール内部の発色パターンを観察すると、合成オパールは組織的な構造は見られますが、天然オパールでは不規則です。

 合成オパールは小さな柱状の構造を持っており、断面を見るとそれが確認できます。さらに、表面に強い光を当てるとうろこ状の反射が見られます。

 一方、天然オパール遊色効果は、石の内部で乱反射が織りなす美しい光のうつろいがあり、規則的なパターンではなく独特の個性を持っています。

 

合成オパールに特有の模様

Virtual Museum of Gems & Gem Crystals HPよりお借りしました。

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はい! 今回は以上です。

 

オパール 微細でかつサイズの揃ったシリカ微粒子を最密充填した構造から発される遊色という名の構造色!

 

化学合成屋としては、チャレンジしてみたくなる気持ちが分かります。プンプン

 

自分で設計した遊色を持ったオパールを合成できたら、楽しいでしょうね。

 

それじゃあ、またね。