はい! 奈央です。
海洋エネルギー編の最後 塩分濃度差発電 です。
塩分濃度差発電(Salinity Gradient Power: SGP)
海の塩水と陸上の淡水の塩分の濃度差を利用した比較的新しいクリーンエネルギーの発電方法です。
背景
水不足が深刻になる今日、海の塩水から淡水を抽出し飲料水などに利用することは現在、世界中で多用されている技術です。
しかし、その際に濃縮された塩水は海洋に放出されています。この高濃度の塩水は生態系を破壊するなどの弊害があります。
そこで大型淡水化施設が、この高濃度塩水を発電に使えるのではないかと考えたのがこの新しいクリーン発電のきっかけでした。
発電方法
塩分濃度差発電の発電方法には2種類あります。
1. 浸透圧発電(Pressure Retarded Osmosis: PRO)
この発電方法では半透膜を利用します。
半透膜は、水分は透過させるが塩分は透過させません。
これにより、淡水は塩水側に移動していきます。
この現象を浸透と呼び、このときに生じる圧力を浸透圧と呼びます。
ここで生まれる圧力の差を利用して発電します。
佐賀大学海洋エネルギー研究所HPよりお借りしました。
浸透圧発電
動画時間: 47秒
2. 逆電気透析発電(Reverse Electro-Dialysis: RED)
陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の間に海水を供給し、両端の電極に電圧をかけてイオン交換を行い、脱塩水を得る技術を電気透析と呼びます。
逆電気透析は、これとは逆の動作を行い、海水と淡水から電力を得る技術です。
塩分濃度差発電の原理
塩分濃度差発電 - テクノフェア|中部電力 (chuden.co.jp)
(動画時間:2分12秒)
中部電力HPよりお借りしました。
塩分濃度差発電のメリット
(1) 海に面した河口など、発電可能地域は世界中に存在する。
(2) 日光や風など自然現象の影響を受けず、発電システムは高稼働率である。
(3) 二酸化炭素や放射性廃棄物など、環境に悪影響を与える物質を発生しない。
(4) 発電インフラは堤防下に設置することができ、景観を損なわない。
実用化例
2023年10月6日、福岡市は海水と淡水の塩分濃度差によって生じる浸透圧を利用した「浸透圧発電」を実用化すると発表しました。
海水淡水化センターに発電設備を設置して、2025年度から自家消費向けに稼働する予定。
年間発電量は88万キロワット時の見込み。
現時点では実用化するのは日本で初めてで、世界ではデンマークに続き2例目。
この浸透圧発電では、海水の淡水化装置から出る濃縮海水と下水処理水(淡水)の2つの排水を活用します。
濃縮海水と下水処理水を浸透膜で隔てると、浸透圧で下水処理水側から濃縮海水側に向かう水流が発生。
この水流で水車を回して発電する仕組みです。
太陽光発電などと比べて、昼夜や天候に左右されないことから稼働率が高いことが特徴です。
動画時間: 1分49秒
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はい! 今回はこれで以上です。
淡水化装置で副生する高濃度塩水を、今度は発電に利用するなんて、一石二鳥の方法ですね。
淡水が使用される点が気がかりでしたが、下水処理水が利用されるということで、その影響は小さいのでしょうね。
2025年から運用されるそうですから、注目していきたいです。
それじゃあ、またね。