はい! 奈央です。
今回は、波力発電のことを書きますね。
波力発電は、海洋エネルギーポテンシャルとして、最も期待されているものなのです。
世界の海洋エネルギーポテンシャル
日本の海洋エネルギーポテンシャル
TriEN+ HPよりお借りしました。
以下の内容は、次のURLの記事を参考にさせていただいています。
波のエネルギーとパワー | TriEN+ (trienplus.com)
海の波はいろいろな波が混じり合った不規則波です。この場合には下図に示す有義波を用いて取り扱います。
N個の波を観測し、大きい順に並べ、そのうちの N/3 の波を有義波と呼びます。
有義波
TriEN+ HPよりお借りしました。
有義波の波高と平均周期をHw, Twとおくと波パワーは 下式のようになり、規則波の半分程度の値となります。
おそらくは衛星による波浪観測から求められた有義波高と有義波周期から、下の図に示す様な波パワーの分布図が作られます。
緯度が 40度を超えるところで波パワーが大きくなっており、大きなところでは 100 kw/m を超えています。
ここでは偏西風が波を作り出しています。西からの風であるため、大陸の西側の海岸で波パワーが大きくなります。
世界の波パワーの分布
TriEN+ HPよりお借りしました。
日本周辺の波パワーは、下の図に示した通りです。
太平洋側の沖合で波パワーは大きくなりますが、それでも 20~30kW/m で世界の適地にくらべれは波パワーはそれほど大きくはありません。
日本周辺の波パワーの分布
TriEN+ HPよりお借りしました。
波力発電の方式
波力発電の方式ですが、大きく分けて以下の 3 つに分類されます。
振動水柱型
可動物体型
越波型
下図に主な波力発電の方式を図示しています。なお、図の TRL は、Technology Readiness Level の略で技術成熟度を表し、数値が大きくなるほど成熟度が大きくなります。
1~2 : 基礎研究
3~5 : 応用研究・開発
6~7 : 実証レベル
8~9 : 事業化レベル
事業化レベルまでいっているのは震動水柱型と可動物体型のラフト式ですね。
波力発電の方式
TriEN+ HPよりお借りしました。
震動水柱型
下面のみを開放した円筒(空気室)を海面に差し入れると、空気室内の海面は特定の周期の波の中では共振を起こして大きく上下します。
この水柱振動現象を利用して波のエネルギーを取り出す方法が震動水柱型です。
空気室の海面上昇に伴って圧縮された空気がタービンを回転させて発電します。
沿岸固定式振動水柱型波力発電装置の例
TriEN+ HPよりお借りしました。
上に紹介した沿岸固定式の他、浮体式も開発されています。
下図は、わが国の海洋研究開発機構が開発した「海明」です。
波の進行方向に 4 つの空気室を並べるアッテネータ方式を採用しています。
浮体は長さ 80 m、幅 12 m、高さ 5 ~ 7 m あります。
1985 年から第 3 次試験が行われ、波高 2 m のときに平均 24 kW、5 m で 240kWの出力を確認しています。
ただし、波による本体の上下動が大きいため、搭載された発電装置に対する波面の上下運動が相対的に小さくなり、1 次変換効率が最大 10 % と低いのが欠点でした。
浮体式振動水柱型波力発電装置『海明』
TriEN+ HPよりお借りしました。
そこで開発されたのが、波の進行方向と直角に 3 つの空気室を並べたターミネーター方式の「マイティホエール」です。
下の写真のプロトタイプモデルは、長さ 50 m、幅 30 m あります。
1998 年 5 月に建造され、同年 7 月から 2002 年 3 月まで三重県南伊勢町の五ヶ所湾沖合で実海域実験を行い、最大で 35 % の一次変換効率を得ています。
浮体式振動水柱型波力発電装置「マイティホエール」
TriEN+ HPよりお借りしました。
可動物体型(oscillating bodies converters)
波の上下運動や水粒子の回転運動によって物体を動かしエネルギーを取り出す方式です。
ラフト式
多数の浮体を連結した多重ラフトで、波の振動に合わせた各浮体の位相差によって継手部に生じるトルクをもとにエネルギーを取り出す方式です。
継手部に油圧ポンプを取り付けて、この油圧によってタービンを回転させて発電します。
英国の PelamisⅡは、全長 180 m、直径 4 m、重量約 1350 トンで 5 個の円筒形の浮体を 4 つの関節で縦に連結しています。
発電能力は 1 基当たり約 0.75 MWで、波の向きに対する指向性が強く、浮体の長さが長くなる傾向にあります。
PelamisⅡ
TriEN+ HPよりお借りしました。
ポイントアブソーバー式
浮体の波による上下運動を利用するタイプです。
波に対する指向性がなく、波向き影響の点から優位です。
構造がシンプルで発電装置も含め大部分が水中に没しているので、浮体本体の構造安全性や信頼性の点からも有利となります。
下部の構造強度や発電装置への上部からの浸水に対して注意を払った構造様式とすることが必要です。
ポイントアブソーバー式パワーブイ
TriEN+ HPよりお借りしました。
波力発電の効率
波力発電の効率について、異なるタイプの波力変換器方式ごとの効率はつぎの通りです。 効率が大きいほど波を受ける長さが短くてすみ、経済性が増すことになります。
波力発電の方式 効率 (波を受ける幅)
振動水柱型 15 – 40 % (∼ 30 m)
越波型 4 – 23 % (∼ 300 m)
ポイントアブソーバー式
3 – 42 % (∼ 5-20 m)
フラップ式 41 – 65 % (∼ 20 m)
ラフト式 5 – 7 % (∼ 150 m)
各波力発電技術の導入状況
下図の左側は導入済みのもので振動水柱型が多く、設備容量が 1.545 MWとなっています。
一方、右側は今後予定されているもので、振動水柱型はわずかで、可動物体型、なかでもポイントアブソーバー式が多くなり、導入予定の設備量が 100.92 MW と大きくなっています。
導入済み及び今後予定されている波力発電装置方式
TriEN+ HPよりお借りしました。
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はい! 以上、波力発電の方式や導入状況などをレポートしました。
日本は、東日本大震災以降、津波の被害を防ぐために、海岸に高い防波堤を延々と築いています。
しかし、このようなハード工法は、柔軟性に乏しく、より強い波が襲来した場合、ひとたまりもありません。
波を防ぐには、波のエネルギーを吸収、もしくは、お互いに相殺させる工夫が必要ではないかと思います。
そのようなソフト工法は、様々なアイデアがあるはずです。
この波力エネルギーを利用する発電方式も、波のエネルギーを利用し、制御する方法の一つではないかと思います。
動画時間: 7分58秒 岩手県釜石市の取組み!
海洋国家 日本 防災は日本の最優先課題です。
それと同じくらい、エネルギー確保もまた優先課題です。
もっと、知恵を絞って、海を如何に有効に利用するかを考え、未来志向で行動をしていかなければと思います。
それじゃあ、またね。