はい! 奈央です。
欧州委員会が 2020 年に発表した「海洋再生可能エネルギーのポテンシャルを将来の気候ニュートラルのために役立てる EU 戦略」によれば、潮流と波力を合わせた導入目標は、2025 年までに 100 MW、2030 年までに 1 GW、2050 年までに 40 GWとなっています。
下の図からも分かるように、世界全体の潮流発電の累積設備容量の大部分をEUが占めています。
世界及び欧州の潮流発電の年間・累積導入量
TriEN+HPよりおかりしました。
欧州における洋上風力を除く海洋エネルギーの中心となるのは潮流と波力で、コスト低減のための研究開発が行われています。
コスト目標は下の表 に示すとおりで、この目標に到達できれば、設備容量は 2050 年までに、潮流が 15.7 GW、波力が 30 GWになると予測しています。
EUの海洋エネルギーコスト目標(1 ユーロ = 124 円)
イギリスのスコットランド北部は潮流発電・波力発電の適地で、実海域試験を行うための民間研究機関の試験場 EMEC(European Marine Energy Centre)があり、ここで多くのテストが実施されているとともに、周辺には潮流・波力発電が計画されているサイトが多数あります。
これら計画が実際に動けばスコットランド北部は海洋エネルギーの一大拠点となります。
英国の欧州海洋エネルギーセンター(EMEC)
スコットランド北部の潮流発電
TriEN+ HPよりお借りしました。
この地域で進められている発電システムの一つをご紹介します。
海中を泳いで再生可能エネルギーを生成する翼長12メートル・重量28トンもある発電システム「Dragon 12」
Gigazine HPよりお借りしました。
海洋エネルギー技術を開発するMinestoは、水中で凧のようにユラユラ動いて1.2メガワット(MW)の電力を生成することができる「Dragon 12」と呼ばれる潮汐力発電システムを開発しています。
Dragon 12は翼長が39フィート(約12メートル)、重量が28トンです。
Minesto Dragon12
Interesting Engenering HPよりお借りしました。
動画時間: 2分40秒
MinestoのDragon 12は海底に固定され、凧のように海中を漂いながら電力を生成するという、従来とは異なる驚くほどダイナミックなアプローチを採用しています。
カイト式潮流発電
TriEN+ HPよりお借りしました。
陸上で運用されている凧を用いた風力発電システムでは、凧が「8」の字パターンで飛行し、通常の風力発電よりも多くの電力を発電できるようになっています。
Dragon 12も海中で同様の動きをし、通常の潮汐力発電システムよりも多くのエネルギーを引き出すことができるように設計されているとMinestoは説明しています。
コストパフォーマンス
Minestoによると、2017年時点でのDragon 12のLCoE(均等化発電原価)は、108ドル/MWhでしたが、その後、54ドル/MWhまで低下しています。
2022年の着床式洋上風力発電プロジェクトの推定平均LCoEは、89ドル/MWhであるため、Dragon 12はこれよりもコストパフォーマンスの面で優れているということになります。
Dragon 12はフェロー諸島に初めて配備され、2024年2月9日には電力網への電力供給を開始しています。
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日本の状況
日本の流速が大きな主なポイント(海峡・水道・瀬戸など)の潮流エネルギーのポテンシャルが計算されています。
日本の主な地点での潮流エネルギーポテンシャル
日本の潮流エネルギーの大きな場所とそこでのポテンシャル
TriEN+HPよりお借りしました。
日本の潮流発電の状況はまだ研究開発が中心です。
NEDOの主な研究開発
- 2011 – 2013 年 着底式潮流発電(川崎重工)
- 2012 – 2015 年 浮体式潮流発電(三井海洋開発)
- 2014 – 2015 年 垂直軸直線翼型潮流発電(大島造船所等)
- 2012 – 2015 年 油圧式潮流発電(佐世保重工等)
- 2012 – 2013 年 橋脚利用式潮流発電(ナカシマプロペラ等)
- 2013 – 2017 年 相反転プロペラ式潮流発電技(協和コンサルタンツ等)
その他、2016 年には東北大がコスト試算を行い、淡路島と四国の間の鳴門海峡では 1 キロワット時の電気を 6 円 と推計しました。
最後に、潮流発電と海流発電を比較した結果が下表です。
潮流発電と海流発電の比較
TriEN+ HPよりお借りしました。
この表の結果からすれば、定常性という点では海流発電が上です。規模も海流発電の方が大きいですが、陸から離れている、水深が大きいなどアクセス性が悪いという問題があります。
また、海流は流速が潮流に比べて小さいため、同じ出力を得るにはより大きな装置が必要でコスト的には不利です。
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以上、潮流発電について、とりとめもなく書いてしまいましたが、同じ島国であるイギリスの積極的な取組のように、日本ももっと大胆に積極的に取り組んでいったらいいのになあって思いました。
次回は、潮流発電と似ていますが、潮汐発電についてレポートしたいと思います。
それじゃあ、またね。