はーい! プラスチック探偵のナオでーす。
今回も生分解性プラスチックに関する謎シリーズです。
今回の謎は、なぜ微生物がプラスチックを作るの?
PHA産生微生物の謎 です。
因みによく知られているPHB(ポリ-β-ヒドロキシ酪酸)は、PHAの一つです。
PHA *下図の 3HBユニットだけでできたのがPHBです。
NPG Asia Materials volume 8, pagee265 (2016)よりお借りしました。
一般的には、PHA(PHBを含む)は、糖や植物油を原料にして、細菌(PHA産生微生物)が、体内で生合成し、蓄積するものとされています。
ヒトで言えば、お腹の脂肪のようなものですね。
PHAの合成と分解がつくりだす炭素循環サイクル
岩手大学農学部応用微生物学研究室HPよりお借りしました。
ところが、ここに一つの謎があるのです。
それは、植物病原細菌はPHA(PHB)のみを貯えるのです。
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後藤正夫著、植物細菌病学概論 養賢堂、P.22
2.4.5 貯蔵物質
細菌の貯蔵物質としてはポリ-β-ヒドロキシ酪酸、ボルチン(無機リン酸重合体)、デンプン、グリコゲン、硫黄などが知られているが、植物病原細菌ではポリ-β-ヒドロキシ酪酸以外の物質を貯える細菌はまだ知られていない。
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植物病原細菌は、果実の中に侵入する際、果実の最外層にあるワックス層を分解して侵入しなければならないからです。
キトロロギストXの記録HPよりお借りしました。
せっかく分解したワックス層をそのまま捨てるのではなく、食料が枯渇した時のために、体内に貯めておこうとします。
そのために、下図に示したように、β-酸化反応(β-Oxidation)によって、PHA(PHB)を生合成して、体内に貯蔵物質として貯えることにしたのです。
RIKEN Review No. 42 (December, 2001)
植物病原菌っていうと怖そうですが、ミカンのアオカビなんかもそうですよね。
人は、アオカビが作るペニシリンを薬として使わせてもらってきましたしね。
将来、大掛かりにPHA(PHB)を生合成することになったとしても、その時は隔離環境の中で、あるいは遺伝子操作によって大腸菌で生合成したりすることになるでしょうね。
最近、日本のカネカが、PHAの一つであるPHBHを生産能力20,000トン/年で生産することを発表しました。
カネカ生分解性ポリマーGreen Planet®の大型能力増強を決定 | 株式会社カネカ (kaneka.co.jp)
上手くいくと良いですね。
応援してます。
はい! 今回はここまでです。
それじゃあ、またね。