はーい! プラスチック探偵のナオでーす。
今日の話は謎の話よ! 何ニャ?
ポリ乳酸ってご存知ですか?
そう!
生分解性プラスチックの代表みたいなものですね。
ポリ乳酸は、下の構造式でも分かるようにポリエステルです。
ポリ乳酸の構造式
佐藤健太郎さんのXよりお借りしました。
ポリエステルなので、これを分解する酵素は、通常、エステル加水分解酵素(リパーゼ、エステラーゼ)のはずなんですけど。
2002年、酵母クリプトコッカス sp. S-2リパーゼがポリ乳酸を分解することが発表されるまで、長い間、ポリ乳酸を分解する酵素として知られていたのは、プロティネースKというタンパク質分解酵素でした。(なぜ?)
**************************
プロテイナーゼK(英: proteinase K)は、広い切断特異性を持つセリンプロテアーゼの一種である。
1974年に、菌類Engyodontium album(旧名:Tritirachium album)の抽出液から発見された。
天然のケラチン(keratin、髪の毛)を消化する能力を有するので、「プロテイナーゼK」と名付けられた。
主要な切断部位は、脂肪族アミノ酸や芳香族アミノ酸のカルボキシル基側のペプチド結合である。
**************************
酵素っていったら、”カギとカギ穴の関係”と言われるほど、基質特異性が厳格だと思っていませんでしたか。
それなのに、タンパク質分解酵素がポリエステルを分解するなんて、なんて基質特異性がゆるゆるなんでしょうね。
と思っていたら、そこには理由があったようです。
プロティネースKは、ポリ乳酸とタンパク質のポリ-L-アラニンを間違えて作用していたようなのです。
**************************
アムナット・ジャレラット(タイ)氏の筑波大学博士論文によると
シルクフィブロインのアミノ酸配列(Gly-Ala)2 - Gly-Ser-Gly-(Ala)2 - Gly-[Ser-Gly-(Ala-Gly)2]8 -Tyr の中でL -アラニンは主要構成アミノ酸である。分離放線菌について,PLA 分解能に加えて,シルクフィブロイン分解能についても検討し,PLA 分解菌のほとんどの菌株がシルクフィブロインも分解することを見いだした。
これらの菌株は,立体化学構造の類似性から,PLA 中の L -乳酸ユニットをシルクフィブロイン中の L -アラニンの類似物と認識して分解していると考えられた。
**************************
間違えていたことの証明は、ポリ乳酸を分解した酵素を分泌していた微生物が、分解生成物を吸収・利用せず、ただただ分解物が溜まるだけだったからだそうです。
ポリ乳酸って自然界には存在しませんから、微生物もタンパク質だ!って思って分解したら、間違いだったって気づいたんでしょうね。
でも、皆さん、安心してください。
ポリ乳酸が分解して生成する乳酸は、それを分解する微生物がものすごく存在しますし、私たち人間もそれを体内で分解することができるんです。
だって、お漬物もヨーグルトも乳酸たっぷりの食材ですからね。
はい! 今回はここまでです。
それじゃあ、またね。