はーい! プラスチック探偵のナオでーす。

 

 

 ビニロンは、日本で生まれ、工業化されたただ一つの合成繊維です。

 ビニロンは、PVAを原料とする高強度、耐候性、親水性が特長でゴムやセメントと相性が良く、ロープ、漁網、農業資材、セメントの補強材などに使用されています。

 

ビニロン(PVA)の化学構造

東北大学太田研究室HPよりお借りしました。

 

 その製法は、海外でも研究が進められていましたが、原料が水に溶けやすく生産が難しい事から工業化には至りませんでした。

 その時期に日本でも研究は進められていて、1939年に京都大学の桜田一郎教授の研究チームによって、ついにその紡糸に成功し合成1号と名づけられました。

 これがビニロンの誕生です。

 

桜田一郎 日本における高分子化学の開拓者

京都大学大学図書館HPよりお借りしました。

 

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認定化学遺産 第016号 

現代に生きる国産合成繊維 ビニロン の系譜 田島慶三

 

 江戸時代末期の開国以来,約100年にわたって生糸は日本の主要輸出品だった。このため 1938年10月アメリカのデュポン社が合成繊維ナイロンを発表し,1940年5月ナイロンストッキング販売で記録的な大成功を収めると,日本には強い危機感が生まれた。
 そのような状況の中で,1939年10月桜田一郎京都大学教授が新合成繊維「合成一号」(戦後ビニロンと命名)を発表すると,日本で発明されたことばかりでなく,原料がすべて国産資源で賄えることからも,ナイロンに対抗できる国産合成繊維としてビニロンへの期待は大いに高まった。

 

 桜田教授、1941年に京都大学化学研究所(当時は大阪府高槻に所在,現在は大阪医科大学敷地)にビニロンの工業化試験設備を建設し,多くの企業研究者も参加して試験を開始した。また桜田教授基本特許を公開したので,倉敷絹織(現在のクラレ)は独自に工業化試験を開始した。

 しかし,第2次世界大戦が激化するとともに,京都大学の試験は中断し,クラレの設備は空爆で被災した。

 

 大戦後は,国産資源を基礎につくることができる合成繊維として再び国を挙げて期待が高まった。し かし資材不足や占領軍の規制により試験再開は,京都大学1947年9月クラレ1948年4月と大幅に遅れた。

 第2次世界大戦前に工業化が完了し,大戦中は落下傘など軍需用途で大量生産が行われたナイロンに,ここで大きな差を付けられることになった。

 

 クラレは酢酸ビニルからポリビニルアルコール(PVA)、さらにビニロン繊維まで一貫して事業化することに挑戦した。これは当時の繊維会社としては非常に大胆な戦略であったが,後にビニルアルコール系製品で大き く発展する基盤ともなった。

 1950年9月に PVA の富山工場が,同年11月にビニロン繊維の岡山工場が完成し,ようやくビニロン工業化が達成された。

 一方,京都大学高槻の試験成果は,桜田教授の助手で工業化試験のリーダーを務めた川上博以下試験従事者全員が大日本紡績(現在のユニチカ)に移籍することで引き継がれ,1950年兵庫県赤穂市の坂越工場で工業化された。

 

日本で最初に工業化された初期の糸

化学と工業 2012よりお借りしました。

 

 ビニロンが工業化された頃,エネルギー政策の大転換が行われた。石炭,水力発電などの国産資源に代わって,輸入原油への全面依存である。

 

 このため,ビニロンの製造工程のうち,酢酸ビニルの原料がアセチレンから石油化学工業によるエチレンに転換することとなった。

 さらに、合成繊維のライバルとして,ナイロン繊維に加えて,石油化学工業に基盤を置き,しかも優れた性能を持つポリエステル繊維アクリル繊維が加わり,いずれも年産数十万トン規模にまで大きく発展した。


 一方,ビニロン繊維は衣料用繊維としては伸び悩み,1971年、76千トンが生産量のピークであり,3大合成繊維に大きく遅れをとって苦難の歴史を歩んだ。

 半面,1990年代以後,中国からの衣料縫製品輸入激増の嵐によって,3大合成繊維の日本での生産量が激減する中で,重布・産業用繊維用途に活路を見いだしていたビニロン繊維は,近年、セメントのアルカリ性に耐えるアスベスト代替繊維としても注目されるようになっている。

 

 また,ビニロン繊維で培った酢酸ビニルや PVAの利用技術によって,液晶ディスプレイ用偏光フィルムや高ガスバリア性を生かして食品包装に使われるエチレン・ビニルアルコール樹脂など,独自の強みのある商品群が生まれ,ビニロンの系譜は現代にも生きていることが示された。

 

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ビニロンの特徴
 合成繊維であり、ビニルアルコール単位を質量比で65%以上含む直鎖状合成高分子からなる繊維。

 軽く、かさ高く、保温性がよい。

 しわになりにくい。

 熱可塑性があり、高温で軟化、溶融する。

 酸、アルカリに強い。 日光に強い。

PVA繊維(水系湿式紡糸「ビニロン」)の断面写真

PVA繊維(溶剤湿式冷却ゲル紡糸 クラロンK-Ⅱ) の断面写真

 ㈱クラレ提供 カケンテストセンターHPよりお借りしました。

 

主な用途
 作業服、学生服、トレーニングパンツ、肌着、布団わた、

 毛布、魚網、ロープ、帆布 など

 

【ロープ、ベルト類】
 ビニロンは高強度や耐摩耗が特長ですので屈強さが必要となるロープやベルトには適しています。

【漁網や農業資材ネット】
 漁網や農業資材ネットは強度も必要ですが屋外で使用するため耐候性も必要となります。そのため、ビニロンはこれらの材料としても適しているといえます。

【セメントやゴムの補強材】
 ビニロンは、セメントやゴムと相性が良く接着性が良好です。そのためそれらの補強材として使用されます。
 セメントは、圧力には強度がありますが、引張に対しては以外と弱い部分があります。そこを補うためにビニロンを補強材として使用する場合があります。

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ビニロン 世界で初めて日本で生まれた化学繊維!

いかがでしたか?

 

はい。今回はここまでです。

それじゃあ、またね。