はい! 科学オタクのナオでーす。

 

なんニャ?

 

PCBダイオキシンに続いて、今回は DDT でーす。

物質名: p,p’-DDT
(別の呼称:1,1,1-トリクロロ-2,2-ビス(4-クロロフェニル)エタン)

 

 これまで、コプラナーPCBダイオキシン毒性要因の一つが平面構造にあるということを書いてきました。

 

 今回のDDTも化学式だけで見ると、ベンゼン環が2個あって、平面構造のように見えるかもしれませんが、実際は、その下の立体構造に示したように、ベンゼン環は、大きな塩素原子を避けるように面をそれぞれ異なる方向に向けていて、平面構造ではありません

 

それじゃ、毒性はそんなに強くないのかな? そかニャ?

最初は、そう思われていました。

だから、戦後、DDTの白い粉頭から振りかける映像がありますよね。

 

DDTの散布

耳(ミミ)とチャッピの布団HPよりお借りしました。

 

事実、DDTは世界中の数百万人もの人々を、発疹チフスマラリアから守ったとして、その殺虫効果の確認者 スイス人 パウル・ヘルマン・ミュラー(Paul Hermann Müller)は、1948年ノーベル生理学・医学賞を受賞したのです。

 

Paul Hermann Müller

SunSigns.org HPよりお借りしました。

 

しかし、1962年レイチェル・カーソンがその著書「Silent Spring(沈黙の春)」を世の中に出したときから、その状況は一変しました

 

レイチェル・カーソンと沈黙の春

シェラ・マンダラ・しょうわ町 ブログよりお借りしました。

 

 環境ホルモン物質とは、日本で使われている造語で正しくは外因性内分泌攪乱化学物質と表されます。

 本来、ホルモンは、体内で作られて生体機能の調節や制御といった働きをする物質ですが、環境ホルモン物質は、体外の環境中に存在して、体内に取り込まれると本来のホルモンと同じように働き正常な作用を妨げる作用があります。

 

環境ホルモンの作用の仕組み

江戸川河川事務所HPよりお借りしました。

 

ここで、改めて、DDTの歴史を時系列で整理します。

 

DDT の歴史

 1873年DDTはオーストリアの化学者オトマール・ツァイドラーによって初めて合成されました。

 1939年、スイス・ガイギ一社のポール・ミューラー博士によってその強力な殺虫効果が発見されました。 

 1942年DDTは殺虫剤として登場し、大規模製造が開始され、やがて、世界中で最も広範囲に使用される農薬になっていきました。
 DDTは農業用に使用されて世界の食糧生産に大きく貢献したのみならず、衛生用にも用いられ、チフスを媒介する「シラミ」マラリアを媒介する「蚊」の防除に有効でした。

 

 こうしたDDTの貢献によってミューラー博士ノーベル賞を受賞したのです。

 

 1950年代まで, DDTによる環境への悪影響は明確には認められていませんでした。

 しかし、DDTは極めて安定な化合物であり、化学的、生物的に極めてゆっくり代謝・分解されていき、その代謝物もDDTと類似しており、従って、世界中にDDTその代謝物汚染が拡大していったのです。 

 

 1962年レイチェル・カーソンがその著書「Silent Spring(沈黙の春)」で、DDTの危険性を唱えました。

 

 実際、DDTは水系環境では極めて危険でした。

 即ち、DDTは安定であり、水に難溶性で、高脂溶性であるため、生態系を構成する生物種に濃縮され、しかも、食物連鎖の上位にある魚食性の水鳥に顕著な蓄積が認められたのです。 さらに、DDT女性ホルモン作用を示し、カルシウム代謝に障害を起こして鳥の卵殻を薄くすることになり、その結果、鳥の数の減少を起こしてしまったのです。
 

 1971年、日本は農薬取締法を改正して、残留性の高いDDTなどの有機塩素系殺虫剤の使用を禁止しました。

 1972年、ストックホルムでの世界人間環境会議の宣言によって国際連合環境計画(UNEP)が設立されました。

 そのプロジェクトの一環として、1974年FAO/WHO合同で食品(飼料を含む)の汚染調査が開始されました。

 その結果, DDTの使用を禁止した1971年から1982年までの12年間に, DDTの汚染農産物では顕著に減少しましたが,畜産酪農製品での汚染はなお箸しく、しかも、母乳の汚染極めてゆっくりしか減少しないことが判明したのです。
 

 このように、DDTの使用に伴い、様々な環境健康問題が生じ、現在に至るのです。

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下の動画で以上のことをより詳しく紹介してくれます。

 

動画時間: 17分12秒  *暇なときにどうぞ!

 

はい! 今回はここまでです。

 

PCBダイオキシンDDTという、現在、世界で嫌われている有機塩素化合物の話をしてきました。

 

PCBDDTも登場したころは、世界を救うほどの有用なものとみられていました。

ところが、眼には見えないところに重篤な問題が潜んでいたのです。

この図式は、フロンも全く同じです。

 

ただ、化学で生み出された化学でしか対処できない!と私は思います。

化学者の良心が問われるところですね。プンプン

 

このシリーズは一応ここまでです。

 

それじゃあ、またね。