はーい! プラスチック探偵ナオでーす
なんでこの姿ニャんだ?
あとでわかるから。
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どこのご家庭にも食品用ラップフィルムってありますよね。
食品用ラップフィルムの始まりは、ポリ塩化ビニリデン(商品名:サラン)からです。
1933年(昭和8年)、アメリカ ダウ・ケミカル社のラルフ・ウィリー氏が開発した合成樹脂が、ポリ塩化ビニリデン(polyvinylidene chloride、PVDC)なのです。
ポリ塩化ビニリデンの重合物は、1872年(明治5年)に
Baumann によって発見され、1930年には高分子科学の父 Staudinger も研究しているが重合物は加工が容易ではなく実用的ではなかったそうです。
この ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)の化学構造は下の図の通りです。
要するに、塩化ビニル樹脂(PVC、塩ビ)にさらに塩素原子を一つ多く結合したものです。
1933年、アメリカミシガン州ミッドランドにあるダウケミカルの研究所で実験器具を洗浄するアルバイトをしていた大学生ラルフ・ウイリーが、ビーカーの底に付着した残滓が洗い流せないことを発見したことから開発がスタートしました。
研究者らは、これを小さな孤児アニーに登場する架空の物質にちなみ「イオナイト」と命名します。
そして、ダウケミカルは、これを改良し繊維やフィルムへの加工生産を開始しました。
当初は第二次世界大戦の戦場で、靴のインソールや火薬類を湿気から守るフィルムなどとして使われました。
戦後、チーズの包装など、包装分野への展開が図られましたが、あまり普及しませんでした。
1950年頃、繊維として漁網用にも使われ始めました。
その後、 ラップフィルムとして塩化ビニルとの共重合体利用が発案されました。
フィルムメーカーの社員が、たまたまレタスをこのフィルムに包んでピクニックに行ったところ「まあ、キレイ。私も欲しい」と女性たちの間で評判になりました。
これをきっかけに食品包装用の商品になっていったのだそうです。
戦後アメリカの女性たち RENOTE よりお借りしました。
ここで二つの名称をご説明しますね。
サラン(Saran)
ポリ塩化ビニリデン系合成繊維の商標名
ポリ塩化ビニリデン系合成樹脂
一般に、塩化ビニル、アクリル酸エステル、アクロニトリルなどと共重合体として使用され、これらのうち塩化ビニリデンを50%以上含むものをポリ塩化ビニリデン(系合成樹脂)と呼んでいます。
食品用途のポリ塩化ビニリデンフィルムは、主に塩化ビニリデン 70~90%、塩化ビニル10~30%の共重合体です。
先にも述べたようにポリ塩化ビニリデンは、塩化ビニルとの共重合体が発案されことで、薄い包装用フィルムへの加工への道が開かれました。
日本では・・・
1953年(昭和28年)、日本でも呉羽化学工業(現クレハ)が自社開発の技術で生産を開始しました。
→ クレラップ
また、旭ダウ(現旭化成)も、ダウケミカル社からの技術導入によって生産を開始しました。
→ サランラップ
しかし、当時の日本には、電子レンジなどあるはずもなく、冷蔵庫もまだあまり普及していなかったため、主婦たちのほとんどがこれを見て何に使うのかわからなかったそうです。
その後、高度成長期、冷蔵庫や電子レンジの普及に伴って、ラップの売り上げも伸びていきました。
主要耐久消費財の普及
NTTコムリサーチHPよりお借りしました。
環境問題について
1990年代、ポリ塩化ビニリデンには、塩ビ以上に塩素原子が含まれることから、ヨーロッパの環境団体などから焼却処分時のダイオキシンの発生など環境負荷を懸念する声があがりました。
これに呼応して、塩素原子を含まないポリエチレンやポリメチルペンテンなどを使用した競合製品も登場しました。
2000年代、ダイオキシンの発生についての問題、焼却施設への影響の問題とも、各界の権威から解決の主旨での意見が出され、今日では、焼却施設の改良や新型への建替えが進み、ダイオキシン問題は実質的には解決したような状況になりました。
そうよね。
環境問題って、健康と関わっていて、とても敏感になりやすいんだけど、客観的に考えると、ラップフィルムを使わない生活の方が、より食品の危険を増大させるよね。
はい、それでは次回は、ポリ塩化ビニリデン製以外のいろいろな食品用ラップフィルムの特徴についてご紹介したいと思います。
それじゃあ、またね。