はーい! 科学オタクのナオでーす。
今回も、コロナ禍で大活躍しているPCR検査の核心といってもいいDNAポリメラーゼに関する話の続きでーす。
改めて、PCRというのは、正式には「ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction)」といい、生物の遺伝情報をもつDNAを複製して増幅させる方法のことですね。
PCRを利用すれば、ごく微量なウイルスであっても、そこに含まれるわずかなDNAから、特定の配列だけを短時間で増やすことで目的のウィルスが存在しているかを知ることができます。
PCR法の原理
応用物理学会HPよりお借りしました。
現在、行われているPCR検査は、ホットスタートPCR法という方法です。
ホットスタートPCRは、非特異的増幅やプライマーダイマーを形成することなく室温での反応セットアップ、新たなポリメラーゼを加えることなくサーマルサイクルが可能です。
ホットスタートPCR技術
北林雅夫、小松原秀介、今中忠行、化学と生物 Vol. 53, No. 12, 2015よりお借りしました。
もはや世界中でひっきりなしに使われているPCR法ですが、改めてその特性について整理したいなって思いました。
PCR法の特性
① 特異性
非特異的増幅は、PCRにおける収量および感度に
劇的な影響を及ぼす可能性があります。
② 耐熱性
サーマルサイクルは、DNAを増幅する連鎖反応の
繰り返しを可能とする主要な条件であるため、
DNAポリメラーゼの耐熱性は、非常に重要です。
③ フィデリティ (正しく合成される頻度)
DNAポリメラーゼのプルーフリーディング活性は、
DNA配列複製の正確性を向上させることで、
そのフィデリティを決定付けます。
④ 処理能力
酵素の処理能力は、基質との結合1回あたりに
処理されるヌクレオチドの数と定義されます。
もう少しだけ詳しく説明すると・・・
① 特異性
PCRの成功率は,非特異的な増幅により低下するんだそうです。なかでも、PCRの最初の昇温の際に起こる非特異的な酵素反応はPCRの成功率を著しく低下させるんだそうです。
KOD DNA polymeraseでは、DNAポリメラーゼ領域と3′→5′エキソヌクレアーゼ領域をそれぞれ認識する2種類のモノクローナル抗体をKOD DNA ポリメラーゼに結合させて、常温での酵素活性を完全に封じ込んだそうです。
抗体を用いたホットスタートDNAポリメラーゼ
ThermoFisher HPよりお借りしました。
② 耐熱性
熱水環境で発見された古細菌 Pyrococcus furiosus から単離された超耐熱性酵素の1つであるPfu DNAポリメラーゼは、95°Cにおいて、Taqポリメラーゼの20倍も高い耐熱性を有しているそうです。
好熱菌由来のDNAポリメラーゼの耐熱性
生物工学基礎講座 バイオよもやま話よりお借りしました。
③ フィデリティ (正しく合成される頻度)
DNAポリメラーゼのプルーフリーディング活性は、ヌクレオチドの誤取り込みを修正する3′→5′エキソヌクレアーゼ活性に基づいています。
このエキソヌクレアーゼ活性部位は、DNAポリメラーゼ上の5′→3′ポリメラーゼ活性部位とは離れた位置に存在しています。
3′→5′エキソヌクレアーゼ領域を持つDNAポリメラーゼ
ThermoFisher HPよりお借りしました。
ポリメラーゼドメインで間違ったヌクレオチドが取り込まれると、塩基対形成がうまくいかず、DNA合成が停滞します。
この停滞により、ミスマッチヌクレオチドの切り出し、および正しいヌクレオチドへの置換が可能となります。
フィデリティについては、下の図の一番下に示されているMutation frequenby (変異頻度)を見ると、KOD DNA ポリメラーゼが、Taq DNAポリメラーゼやPfu DNAポリメラーゼに比べて非常に小さな変異頻度しか示さず、正確にDNAが合成されていることが分かりますね。
KOD DNAポリメラーゼのPCRにおける性能比較
Special Review LifeScience TOYOBOよりお借りしました。
④ 処理能力
酵素の処理能力は、基質との結合1回あたりに処理されるヌクレオチドの数と定義されています。
上の図の一番上のグラフが、Processivity(処理能力)を表しています。
はい!
以上、PCR検査で活躍するDNAポリメラーゼのことを簡単にご紹介してきました。
それにしても、KOD DNAポリメラーゼって凄いですね。
古細菌という始原菌は、遥か古代から極限環境を生き抜いてきたパワーを持っているのですね。
私たちは、そのパワーの一部を使わせてもらっているのですね。
パワーよね。 熱いし、危ないニャ!
それじゃあ、またね。