はーい! プラスチック探偵ナオでーす。
これまで、ナイロン-66とナイロン-6についてご紹介してきましたが、今回はそれら以外のナイロン、化学の言葉でいえばポリアミドについてレポートしたいと思います。
「ナイロン」は、開発した米デュポン社の商標名です。
正式名は「ポリアミド」といい「PA」と表記されます。
日本では一般的に「ポリアミド」より「ナイロン」という呼び方のほうが浸透しています。
さらに言えば、
「ポリアミド」でも、一般に脂肪族骨格を含むポリアミドのことを「ナイロン」、芳香族骨格だけで構成されるポリアミドを「アラミド」と言います。
様々なポリアミド 二幸技研HPよりお借りしました。
芳香族骨格だけで構成される「アラミド」については、後でご紹介したいと思います。
今回は、脂肪族骨格からなるポリアミド「ナイロン」についてご紹介します。
現在、合成されているナイロンとしては、以下のように 9種類があるようです。
n-ナイロン 原料
ナイロン-6 : ε-カプロラクタム(炭素数6)
ナイロン-11: ウンデカンラクタム(炭素数11)
ナイロン-12: ラウリルラクタム(炭素数12)
n-ナイロンは、ラクタムの開環重合によって合成されます。
二幸技研HPよりお借りしました。
n,m-ナイロン 原料
(脂肪族ポリアミド)
ナイロン-66 : ヘキサメチレンジアミン(炭素数6)
+ アジピン酸(炭素数6)
ナイロン-610 : ヘキサメチレンジアミン(炭素数6)
+ セバシン酸(炭素数10)
(半芳香族ポリアミド)
ナイロン-6T : ヘキサメチレンジアミン(炭素数6)
+ テレフタル酸(芳香族)
ナイロン-6I : ヘキサメチレンジアミン(炭素数6)
+ イソフタル酸(芳香族)
ナイロン-9T : ノナンジアミン(炭素数9)
+ テレフタル酸(芳香族)
ナイロン-M5T: メチルペンタジアミン(炭素数5)
+ テレフタル酸 (芳香族)
n,m-ナイロン は、ジアミンとジカルボン酸の縮合重合によって合成されます。
二幸技研HPよりお借りしました。
それぞれのナイロンの特徴について、ご紹介します。
下の表に、5種類のナイロンの機械的物性と吸水率、熱物性を示します。
この表から、PA66(ナイロン-66)とPA6(ナイロン-6)が機械的物性や熱物性に優れる一方で、水を吸いやすいことが分かります。
一方、PA11(ナイロン-11)やPA12(ナイロン-12)は、比較的柔らかく、耐熱温度も低いため低温で成形しやすく、水分も吸いにくい材料であることが分かります。
5種類のナイロンの機械的物性と吸水率、熱物性
Research Gate HPよりお借りしました。
いろんなナイロンが作られているのは、それぞれの用途の要求物性に合わせるためだったのでしょうね。
それでは、実際、ナイロンはどんな用途に使われているのでしょう?
下の図に示したように、ストッキングから始まったナイロンの用途は、現在では自動車や電気電子機器などの工業製品に広く使われるようになりました。
ナイロンの用途
二幸技研HPよりお借りしました。
最も多い自動車の部品は、耐ガソリン性、耐オイル性、耐薬品性、耐熱性、強靭性などが要求されることが多く、エンジンルーム内の部品や吸気系部品、燃料系部品など幅広い用途で使用されます。
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以上のように、ナイロンはその高い機械的物性と熱物性から、高付加価値用途に広く使われるようになりました。
しかし・・・
ナイロンの生産量は、ポリエチレンテレフタレート(PET)の拡大に比べると、その生産量の拡大は微々たるものです。
日本化学繊維協会 内外の化学繊維生産動向 2017年より
世界の主要化繊品種の生産推移
しかも、ナイロンの生産の伸びは中国の独り勝ちで、その他の国はいずれも生産量を減少させているのです。
世界の主要地域別ナイロン生産
日本の繊維業界における合成繊維の生産量の減縮傾向は特に顕著です。
日本の主要化合繊生産
1980年代をピークに合成繊維は減少し、繊維全体としても1970年来、激しい生産削減が続いています。
繊維生産推移(糸ベース)
JPCA 石油化学工業協会HPよりお借りしました。
戦後、米デュポン社のナイロン、英ICI社のポリエステルを追い続けてきた日本の企業にとって、近年の顕著な減少傾向は、単なる歴史の繰り返しだけでは済まない状況なのではないでしょうか?
デュポン社とICI社の世界特許網
日本の戦後復興・高度成長を支えた合成繊維ナイロンの発祥と足跡 化学と工業 2015 よりお借りしました。
はい!
今回のレポートはここまでです。
次回は、ちょっと変わったポリアミドをご紹介したいと思います。
それじゃあまたね。