はーい! プラスチック探偵ナオでーす。
今回は、高吸水性ポリマー(SAP)合成の新たなチャレンジについてご紹介します。
以前、ポリカーボネートの調査の時、バイオマスナフサからクラッキングによって、基礎化学原料品を作り、そのバイオ原料からポリカーボネートを合成するということをお話ししましたね。
これと同じような取り組みが、高吸水性ポリマーでも行われていたんです。
バイオマス由来高吸水性樹脂で国際持続可能性カーボン認証ISCC PLUSを取得
日本触媒は、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、ベルギー子会社NIPPON SHOKUBAI EUROPE N.V.(以下「NSE社」)で生産する高吸水性樹脂(SAP)について国際持続可能性カーボン認証機関 (ISCC)よりバイオマスの認証を取得しました。
主に紙おむつに使われているSAPは、プロピレンから製造されるアクリル酸を主原料としています。
NSE社は、バイオマス由来のプロピレンからアクリル酸を生産し、さらにそのアクリル酸を使ってバイオマスSAPを生産することについて、ISCCよりISCC PLUS認証(マスバランス方式 )を取得しました。
バイオマスSAPの品質は石油由来の従来品と同等で、製品ライフサイクル全体のCO2排出量削減にはもちろん寄与するんだそうです。
日本触媒 SAPのマスバランス方式
日刊工業新聞HPよりお借りしました。
*マスバランス方式(物資収支方式): 生産に使用する原料にバイオマス由来と石油由来が混合された場合、原料として使用したバイオマス由来の割合を特定の最終製品に任意に割り当てるものです。
天然炭素資源を活用する革新的触媒の創製
神奈川大学 上田渉研究室
上田渉研究室では、多様な天然炭素資源をバランスよく活用できる将来の産業基盤の確立に向けて、その根幹をなすメタンをはじめとするアルカンガス資源を従来にない形で有用な化成品・エネルギーに変換するための革新的な触媒の創出を推進しています。
研究テーマ例: アクリル酸合成の革新的触媒の創出
神奈川大学上田渉研究室HPよりお借りしました。
高バイオマス度の高吸水性ポリマーの開発に成功 長瀬産業-林原グループ
SAPは、紙おむつを中心にナプキンなどの衛生用品や、農業、緑化分野や化粧品など幅広い分野で使用されています。
従来、ポリアクリル酸系のSAPが主流であり、石油由来かつ非生分解性であることから環境負荷が大きいという課題がありました。
長瀬産業-林原グループは、澱粉構造を酵素変換することで吸水特性が大きく変化することに着目しました。
林原の有する酵素技術と、ナガセケムテックスの樹脂製造技術を掛け合わせ、澱粉を主原料としながらも、SAPとしての吸水性能を最大限に引き出すことに成功しました。
本開発品は、バイオ由来・生分解性による環境負荷低減に貢献するものだそうです。
共同開発の概念図
長瀬産業ニュースリリースよりお借りしました。
天然由来アスパラギン酸を活用した生分解性を有する高吸水性ポリマー DIC㈱
DIC㈱は、バイオベンチャー企業 Green Earth Institute (GEI)㈱と「天然由来アスパラギン酸およびそれを活用した生分解性を有する高吸水性ポリマー」に関する共同開発を開始しました。
GEI 社は、二酸化炭素を吸収する新規発酵技術を用いて天然由来アスパラギン酸の開発と量産化実証を、DIC㈱は、ポリマー化とスケールアップ検討を行う予定だそうです。
アミノ酸の一種であるアスパラギン酸は、食品や化粧品、医薬品などで多く使用されていますが、工業的には石油原料由来のフマル酸とアンモニアから合成されています。
高吸水性ポリマーは、主に紙おむつや化粧品、土壌改質剤などに使用されていますが、現在は石油原料由来かつ非生分解性素材であるため、世界的課題であるプラスチックの廃棄問題にも影響を及ぼしています。
今回、開発を進める高吸水性ポリマーは、再生可能資源を原料とし生分解性も兼備することから、低炭素社会の実現とプラスチック廃棄問題の解決に貢献するそうです。
アスパラギン酸を原料にした高吸水性ポリマー
DICプレスリリースよりお借りしました。
以上、ポリアクリル酸ナトリウムをはじめとする高吸水性ポリマーSAPの将来に向けた日本の技術者・研究者の皆様の取り組み例をご紹介しました。
より住み良い未来に向けて、技術者や研究者の皆さん、精力的に前進しておられるようですね。
はい、今回のレポートはここまででーす。
日本の得意分野! 期待してまーす。
次回は番外編として おむつのプラスチック についてもう少し調べてみようと思っています。
それじゃあ、またね。