はーい! ナオでーす。

 


今回、マーリンさんがFT-IRのことをご紹介するんだって。

 

FT-IRって何かな? 何ニャ? 知らんニャ。

 

 FT-IRFT-NMRはじゃな、有機化学分析の双璧といってもいいんじゃ。

 有機物質というのは、炭素化合物のことで、動物や植物の体、衣服、食料、薬、化粧品、燃料、プラスチック、タイヤ、塗料などあらゆるものに含まれとるんじゃよ。

 FT-IRというのは、フーリエ変換赤外分光光度計Fourier Transform Infrared Spectroscopy)の略称じゃな。

 赤外分光光度計というのは、天然・合成物質の化学構造を推測するうえで重要な原子間の結合の強さを見ることのできる装置なんじゃ。

 

FT-IRの基本構造 

ヤマト科学株式会社HPよりお借りしました。

 

この後の説明は、わしの助手のマリさんにおねがいしようかの。

助手がいたんニャ? びっくりニャ!

助手のマリでーす。宜しく。

よろしく! よろしくニャ。ニコニコ爆笑照れ

 

 それでは、赤外分光光度計のことを説明しますね。

 ちょっと専門用語が出てくるのでご注意を。

 分子を構成する原子間では、結合部分が伸縮したり、角度を変化させたり、回転したりして振動します。

 この各種振動のエネルギーは、赤外光のエネルギー付近にあり、赤外光を吸収して振動します。

 

 下の図に、二酸化炭素水分子伸縮振動の様子を表しています。

 二酸化炭素温室効果ガスとして働くのは、二酸化炭素赤外光を吸収して振動し、その運動エネルギーがさらに分子同士の衝突などを引き起こし、結果として大気が暖められるためです。

 

二酸化炭素(上)と水(下)の振動 

JASCO HPよりお借りしました。

 

 これらの分子の振動・変角・回転に必要なエネルギーは、それぞれの分子特有の値なのです。

 そのため、各分子が、それぞれ特有のエネルギーを持った赤外光(波長が短いほど高エネルギー、長いほど低エネルギー)を吸収するのです。

 

 下の図は、1例として、ポリエステル繊維の赤外吸収スペクトルです。

 分子中の異なる化学結合の強さに応じて、異なる波数(Wavenumber、波長で光速を割った値、波長の逆数のようなもの)赤外光を吸収している様子がよく分りますね。

 

ポリエステル繊維の赤外吸収スペクトル

FT-IRの基礎と分析テクニック(1)  ThermoFisher Scientific 資料よりお借りしました。

 

 つまり、この赤外吸収スペクトルを見れば、被験物質がどのような化学構造を持っているかが推定できるのです。

 

凄いニャ!

 

それでは、これからFT-IRのことをご説明しますね。

 FT-IRとは、光の干渉波形を測定し、フーリエ変換を行うことにより、分子の吸収スペクトルを測定する装置です。

 

 装置の中心は、マイケルソン干渉計という干渉計です。 

 

 マイケルソン干渉計とは、アメリカの物理学者アルバート・マイケルソン1887年(明治19年)に発明した装置です。

明治時代?? 凄いニャ!

 

 マイケルソン干渉計のイメージを下の図に示します。

地球環境研究センターニュースHPよりお借りしました。

 

光源からの光はレンズにより並行光になります。

そして半透鏡により二つに分割されます。

一方は固定鏡、もう一方は移動鏡に進み、それぞれ反射して再び半透鏡により、分割された再び合成され、レンズで集光され検出器電気信号に変換し、更にデジタル信号に変換されます。

 

このとき固定鏡移動鏡で反射される光の経路の差を光路差と言います。

移動鏡を一定の速度に動かすことにより光路差を変えることができ、光が干渉をおこします(下の図を参照)。

 

光源スペクトルと干渉計からの強度信号の関係

地球環境研究センターニュースHPよりお借りしました。

 

上の図は、光源が、(a)単色光(b)2色の単色光(c)白色光(連続光)の場合の光路差を変えた時の干渉波形を示しています。

実際の分光測定には、 (c) 白色光源を用いて、マイケルソン干渉計干渉波形を測定することになります。

 

上の図(c)の干渉計からの強度信号は、光路差が大きくなるとゼロに収束していきます。

これは、光路差が大きくなるにつれて、異なる周波数の波同士が打ち消しあっていくためです。

この強度信号をインターフェログラムといいます。

 

このインターフェログラムが、測定試料にぶつかって、反射したり、透過する際に、特定波長の光成分が分子の振動のエネルギーとして使われます

試料を通ったインターフェログラムと、バックグラウンドとしての試料の無い状態で測定したインターフェログラムとを比較し、差し引くと、試料で吸収された特定の光成分が見えてくるのです。

 

従って、得られたインターフェログラムフーリエ変換することで吸収された光成分から、試料としての有機物質赤外吸収スペクトルが得られるのです。

 

ロボット・ITの雑食日記HPよりお借りしました。

 

なお、最終的に得られる赤外吸収スペクトルは、透過率(Transmittannce)吸光度(Absorbance)で表す二通りの方法があります。

これら二つのスペクトルは、相互に変換できます。

 

兔膠(うさぎにかわ)の透過率と吸光度スペクトル

Instrumental Analysis of Cultural Heritage Ojects HPよりお借りしました。

 

以上の赤外吸収スペクトルの測定の流れを示したのが下の図です。

 

透過スペクトル測定の流れ 

JASCO HPよりお借りしました。

 

いかがでしたでしょうか?

私たちの周りにある有機物質がなにか?を探るために、このFT-IRは基本的な分析装置として多用されているのです。

えっ、科捜研でも使っているの?

多分、頻繁に!

 

それじゃあ、次回はFT-NMRですね。

はい! お願いしまーす。ニコニコ爆笑照れ

 

それじゃあ、またね。