はい! 奈央です。
日本は資源のない国 というのは国土を考えた時の話です。
日本には広大な海があります。
排他的経済水域までを考慮した時、日本は資源エネルギー大国になれるかもしれません。
海洋エネルギーのポテンシャルについては、世界・日本ともに海洋温度差発電(OTEC)が最も大きく、次いで、波力・海流の順となっています。
今回は 海流発電 を取り上げてみます。
世界の海洋エネルギーのポテンシャル
とりあえず、時間がある方は下の動画をご覧ください。
これを見れば、下の私の記述を読む必要はないです。
動画時間: 10分7秒
NEDO 再生可能エネルギー技術白書 第2版 第6章 海洋エネルギーより
日本周辺には黒潮が流れているため、海流エネルギーのポテンシャルは大きいのです。
安定した海流エネルギーが得られる地点としては、八重山諸島、トカラ列島、足摺岬沖、八丈島沖などが挙げられます。
海流エネルギーの賦存量は約 205GW と試算されています。
ただし,実際の機器の設置や、導入に適した流速(水深 5m で 1m/s 以上)を得られる地域などを考慮すると、現実的な導入量は約1.3GW、発電可能量は 10TWh(年間電力需要の約 1%)と試算されています。
日本の海流エネルギー密度[Wm2]
海流発電
日本列島の周りには、大きく4つの海流が流れています。南からは日本海流(黒潮)、対馬海流、北からは千島海流(親潮)とリマン海流です。
株式会社IHIと国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は,2017年8月に鹿児島県口之島沖で、100kW規模の海流発電としては世界初となる水中浮遊式海流発電システムの実証試験を完了しました。
実証試験機「かいりゅう」の概要
浮体内部構造
水中浮遊式海流発電システムの概念図
実証試験海域
IHI HPよりお借りしました。
実証試験は、トカラ列島付近の黒潮流域中に実証機を設置して行い、その結果、最大約30kWの発電出力が得られたほか、水中姿勢を安定させるための自律制御システムの性能確認や設置および撤去工事の方法等、今後の実用化に向けたデータを取得できました。
また、実証試験に先立ち実施した曳航試験では、定格出力100kWの出力を達成しました。
実証試験の曳航船団構成
IHI HPよりお借りしました。
海流発電のしくみ
海流発電は、羽根で受けた運動エネルギーを、タービンを介して回転運動に変え、発電機が回転することによって電気エネルギーを生み出す方法です。
設備的にも風力発電と似ていますが、海流と風では密度も約800倍と大きく異なり、羽根部分の強度対策や設備全体の防水対策が必要となります。
タービンの種類は、次のように分類されています。
代表的な潮流発電タービンの形式
TriEN+ HPよりお借りしました。
水平軸型タービン
海水の流れに対して、タービンの回転軸を水平に向けて設置し、タービンには風力発電と同じように、複数の羽根を取り付けます。
垂直軸型タービン
海水の流れに対して、タービンの回転軸を垂直に向けて設置します。羽根も回転中心の外側に、垂直に複数配置されますが、断面は均一でプロペラ式より安価に制作できます。代表的なものとしては「サボニウス式」、「ダリウス式」があります。
振動水中翼型
海流の流れの中に翼を置くことで羽根の上下に抗力と揚力が働き、その上下動を振動ととらえて、発電する方式です。
海流発電のメリット
海流は、風に比べて密度が大きく安定しているため、流れが遅くても大きな電力を取り出すことができます。主なメリットは以下の通りです。
- 風力発電に比べて電力の供給が安定しています。
- 燃料が不要なため二酸化炭素(CO2)が発生しません。
- 台風などの気象変動に影響を受けません。
- 風力発電のような高い鉄塔は必要なく、海におもりを沈めてワイヤーで係留するだけなので、コストが安くすみます。
海流発電のデメリット
海流は、ときに流れが変わったり、流れの速さが異なるため、発電設備の設置場所を選ぶ必要があるというデメリットが存在するのも確かです。
- 発電設備の設置場所に関しては、海流の流れへの対応とともに、航路や漁業権に対する配慮も必要となります。
- 風力発電の風とは比べものにならないくらい密度の高い海流に対し、羽根の強度が要求されます。耐久年数としては、約5~10年程です。
- 海水に含まれる塩分による錆の対策や、貝の付着の除去などにコストがかかります。
- 回遊する魚類を傷付けないため、タービンに付属している羽根の形状に配慮が必要とされます。対策として円柱形状のタービンなどが考えられています。