はい! 奈央です。
久しぶりに 時にまつわるエトセトラ を書きました。
今回は、分子時計 のご紹介です。
地球上に最初に生命が誕生したのは約40億年ほど前と言われています。
海の中で、アミノ酸の離合集散により自己コピー機能を持った生物の原型が出現しました。
*約4分の動画 (時間の無い方は飛ばしてくださいね)
しかし、そのコピー機能が不完全であったため、少しずつ異なる生物体が出現し、種類が増えてきました。
非常にシンプルな単細胞生物から、DNAの突然変異、共生、多細胞化などのプロセスを繰り返すことによって、現存する数千万種を越える多様な生物へと進化してきたのです。
その後の地球レベルでの環境変化を経るなかで、厳しい環境に適応してより強い増殖力を持ったものが生き残り、弱いものは絶滅して行ったのです。
*約6分の動画 (時間の無い方は飛ばしてくださいね)
1962年、化学結合論でノーベル化学賞を,、地上核実験に対する反対運動の業績によりノーベル平和賞も受賞し、DNAのらせん構造でワトソン・クリックと競争したライナス・ポーリングは、フランスのエミール・ズッカーカンドルとの共同研究で 分子時計 を発見し、分子進化学の創始者にもなりました。
ライナス・ポーリング博士 ドイツサプリナビHPよりお借りしました。
二人は、血液中のヘモグロビンのアミノ酸配列についていろいろな生物間で比べました。
すると、生物間でのアミノ酸の置換数(すなわちアミノ酸の違っている箇所)と生物間の分岐年代をプロットすると、大変面白いことに、両者の間には直線関係があることを発見したのです。
つまり、系統的に遠い関係にある生物間では、より近い関係にある生物間よりもアミノ酸が違っている箇所が多いのです。
このことから、タンパク質は、時間に比例してアミノ酸の置き換えを蓄積する性質があることが解ったのです。
ヘモグロビンの分子時計 JT生命誌研究館よりお借りしました。
1968年、日本の木村資生博士が、進化の理論;中立仮説を提唱しました。
それは、DNAを構成する四つの塩基分子A,T,G,Cが置き換わる頻度は時間に比例するというものです。
その置換の速さの係数は、生命維持に必須な大事な遺伝子の場合は非常に小さく、生命活動にあまり関係ない遺伝子の置換頻度は数倍以上大きく、いずれも経過時間に比例するのです。
進化の速度 高校生物 系統と分類よりお借りしました。
進化速度 K の実測値は、以下のように求められています。
核 DNA遺伝子 0.0000000055/年
ミトコンドリアDNA遺伝子 0.0000000382/年
葉緑素DNA遺伝子 0.0000000033/年
(evolution and diversity HPより)
遺伝子の核酸塩基配列が、タンパク質を構成するアミノ酸配列へと生体内で翻訳されるときの、各アミノ酸に対応する3つの塩基配列のことを コドン と言います。
つまり、アミノ酸配列の置き換えは、遺伝子の置き換えを反映しているのです。
下の図は、ヒトとその他の動物が分岐した年代とアミノ酸置換率の関係を表したものです。
両者の間には、直線的な関係があることが分かります。
遺伝子の置換とそれを反映したアミノ酸の置換率を測定することによって進化の時間を計測できるのです。
まさしく、“進化を刻む分子時計”ですね。
生物の進化 evolution and diversity HPよりお借りしました。
次のブログでは、ウィルスの分子時計、進化の速度について紹介したいと思います。
それじゃ、またね。