はい! 奈央です。

2020奈央の初旅 江戸と天空の旅 番外編④ です。

 

 

謎の古代天体「ヒミコを発見した 大内正己 東京大学宇宙線研究所准教授の発見物語です。

ヒミコとは、130億年前の古代の宇宙にありながら、

現在の銀河と同じくらい大きい

同時代の銀河より10倍大きい。

古代(初期)銀河の常識を覆す謎の天体だったのです。

Himiko 宇宙&物理2chまとめHPよりお借りしました。

 

ミコは、「くじら座」の方向、130億光年離れた遠方にある非常に明るい巨大なガス雲で、2009年に大内正己氏によって発見され命名されました


ミコは、宇宙が誕生してからわずか8億年後原始銀河の姿を私たちに見せているのです。

そのため、古代宇宙に輝く天体として邪馬台国の女王「卑弥呼」の名前が付けられたのです
 

下の図を見てください。

宇宙の年齢と銀河の大きさをプロットしています。

ビッグバンによって宇宙が始まった頃は銀河は小さく、宇宙の膨張とともに次第に巨大化していきます。

ところが、ヒミコだけは、一般論から逸脱したけた違いに大きく明るい銀河だったのです。

ヒミコの大きさと平均的な銀河の大きさを比較した図 National GeographicHPよりお借りしました。

 

宇宙の歴史の模式図 ALMA HPよりお借りしました。

138億年前のビッグバンで始まった宇宙が膨張を続け、その中で星や銀河が生まれ、進化してきた様子を表現しています。

 

大内正己氏は、このヒミコの謎を解くために、様々な最先端の天体観測装置を駆使していくのです。

すばる望遠鏡、ケック望遠鏡、ハッブル宇宙望遠鏡、ALMA電波望遠鏡、ヨーロッパ超大型望遠鏡VLT ・・・ JWST、TMT・・・

すばる-XMM-ニュートン・ディープサーベイ SXDS 領域の多波長観測よりお借りしました。

 

すばる望遠鏡を用いて

 

2003年春当時大学院生だった大内正己氏は新しい研究プロジェクトを立ち上げます。

すばる望遠鏡に搭載されるSuprime-Cam(広角の主焦点カメラ)を用いて、最も遠い宇宙をこれまでにない広さで調べて、最遠宇宙の天体地図を作ることでした。

すばる望遠鏡は、約22mの高さの「主焦点」に巨大なデジカメHSCを搭載しており、視野が広く、一度に多数の天体を細部まで観測できる装置のです。

望遠鏡の最上部に巨大な装置を搭載するのは難しく、大望遠鏡では すばる望遠鏡 だけなのです。

 

この当時、検出できる天体の限界(観測限界)は130億光年でした。

 

大内正己氏は、先ず128億年前の宇宙を探査し、わずか直径300万光年という狭い範囲に、6個の銀河が群がっている姿を見つけ出したのです。 

原始銀河団だ! 発見の第一声でした。

そして、すぐさま、このことを論文として発表しました。

すばる望遠鏡 国立天文台HPよりお借りしました。

 

そしてさらに、当時の観測限界である130億光年彼方の天体を調べるため、大内正己氏は再びすばる望遠鏡を使って、2005年から2007年にかけて3年越しの観測を行い、207個の天体を発見します。

すばる望遠鏡 三菱電機HPよりお借りしました。

 

ケックII望遠鏡を用いて

 

遠い天体が発した光は、膨張する宇宙空間を旅するうちに波長が伸びていき赤くなります

これは赤方偏移と呼ばれる現象です。

赤方偏移した天体の水素が放つ光 ライマンアルファ輝線(波長1216Å)が狭帯域フィルターに入ると明るく見えます。

 

130億光年もの遠方の天体の確認を確実なものにするため、大内正己氏はより高い分光観測能力を持ったケックII望遠鏡を用いて、2007年秋に観測を開始します。

 

観測候補となった天体の中に NB921-C-36215(後のヒミコ) という天体がありました。

この天体は、それまで観測された130億光年前の銀河とは比べものにならないほど明るいばかりか、大きさも10倍くらいありました。

最初、この NB921-C-36215 は何かの観測ミスだと思っていたそうです。

スバル望遠鏡とKeck I&II望遠鏡 TMT よりお借りしました。

 

しかし、これがもし本当に130億光年離れた天体だったとしたら、面白い。大事な観測時間を無駄にするかもしれないが、分光観測してみたい! と思い直し観測を開始しました。

そして、解析の結果、ディスプレーに映し出された姿は、疑いもなく 130億光年離れた天体 だったのです。

ケック望遠鏡の内部主鏡(下に人が見えます) National Geographic HPよりお借りしました。

 

そして、大内正己氏は、このNB921-C-36215に、邪馬台国の女王「卑弥呼」にあやかり、「ヒミコ Himiko」と名付けたのです

名前の由来は、

 日本のSXDS天域で見つかったこと

 130億年前という古代宇宙にありながら

 一際目立つ天体であったこと、

 さらに、なぜこんなに巨大であるかが謎だったこと

によるのだそうです。

ヒミコの大きさを現在の銀河や130億年前の銀河と比べたもの National GeographicHPよりお借りしました。

 

大内正己氏は、ヒミコ」の正体について五つの可能性を考えました。

 (1) 一つの巨大な銀河
 (2) 巨大ブラックホールに温められたプラズマガス雲
 (3) 衝突・合体中の銀河
 (4) コールドアクリーションと呼ばれる宇宙大規模構造から降り注ぐガス雲
 (5) 超新星爆発で温められたガスが銀河の外へ流れ出る銀河風

 

ハッブル宇宙望遠鏡を用いて

 

2010年、「ヒミコ」の正体を明らかにするため、地球の大気に邪魔されずくっきりとした画像を撮影するため、大内正己氏はハッブル宇宙望遠鏡ヒミコを観測し、その内部構造を調べることにしました。

ハッブル宇宙望遠鏡 宇宙兄弟official web HPよりお借りしました。

 

初めてのハッブル宇宙望遠鏡からの画像データがディスプレーに映し出された時、なんだこれは?というのが、その時の印象だったそうです。

そこには、三つの星の集団が一直線に並ぶ姿が現れたのでした。

 

ヒミコのハッブル宇宙望遠鏡画像 National GeographicHPよりお借りしました。

 

結果として、五つの可能性の内(1) 一つの巨大な銀河と。(2) 巨大ブラックホールが存在しているという可能性が消えました

そして、(3)衝突・合体中の銀河である可能性が高まったのです。

 

アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計 - Atacama Large Millimeter/submillimeter Array (ALMA)望遠鏡を用いて

 

2002年電波(ミリ波・サブミリ波)干渉計であるALMA望遠鏡の建設が始まりました。

ALMA望遠鏡は、これまでの望遠鏡と比べて極めて感度が良く、10~100分の1の明るさの天体まで検出できるのです。

 

電波観測なら、可視光や近赤外線では見ることのできない冷たいガスやダストを調べられるのです。

 

ヒミコの内部にあるガスの動きが捉えられれば、ヒミコの正体にがさらに明らかになるのです。

 

ALMA電波望遠鏡 National GeographicHPよりお借りしました。

 

2013年ALMA電波望遠鏡による観察結果は衝撃的でした。

そこには何も映っていなかったからです。

つまり、ヒミコを構成する物質は、原始ガス(水素やヘリウムといった軽元素ガス)に近い可能性がある。

仮にそうならば、ヒミコはまさに生まれたばかりの原始銀河かもしれないということなのです

 

ヨーロッパ超大型望遠鏡VLTを用いて

 

ヒミコ」が原始ガスに近い物質からできている場合は、強いヘリウム輝線が出てくることが予想されました。

 

そこで、大内正己氏は、ヨーロッパの超大型望遠鏡VLTを使い、ヒミコ可視光と近赤外線で分光する研究を行ったのです。

その結果、水素が放つ光 ライマンアルファ輝線以外、何も検出されなかったのです。

 

ヨーロッパ南天文台超大型望遠鏡VLT 天文学辞典HPよりお借りしました。

 

つまり、ヒミコは、水素から成る原始天体であり、(3)衝突・合体中の銀河の可能性が高くなったのです。

 

Himiko 宇宙&物理2chまとめHPよりお借りしました。

 

宇宙誕生ビッグバンの謎に迫るために

 

現在、世界の天文学者らは、宇宙誕生ビッグバンの解明に立ち向かっています。

そのための観測装置の一つは、2021年3月30日に打ち上げ予定の ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡JWSTです。

JWSTは、ハッブル宇宙望遠鏡の後継機として、アメリカ航空宇宙局(NASA)が中心となって開発を行っている赤外線観測用宇宙望遠鏡です。

JWSTの主な任務は、宇宙誕生ビッグバンの約2億年後以降に輝き始めたとされるファーストスターを初観測することなのです。

 

JWST 壺公夢想HPよりお借りしました。

 

そしてもう一つが、地上設置型の超大型望遠鏡:アメリカ合衆国、カナダ、中華人民共和国、インド、日本の5か国共同で米ハワイ島マウナケア山頂に建設中の口径30mの超大型光学赤外線望遠鏡 TMT と、 ヨーロッパ南天天文台がチリに建設中の、口径39mの次世代欧州超大型望遠鏡 E-ELT です。

 

TMT観測波長は可視光及び近・中間赤外線であり、そのターゲットは、初期の宇宙、遠方銀河、太陽系外惑星などの詳細観測なのです。

TMT望遠鏡 アロハ魂クマックスHPよりお借りしました。

 

E-ELTターゲットは、ハビタブルゾーン(地球と似た生命が存在できる天文学上の領域)に存在する地球サイズの系外惑星の大気調査と、銀河の歴史を明らかにしたり、宇宙で最初の星(ファーストスター)や最初の銀河を観測することで宇宙論研究にも貢献することだそうです。

欧州超大型望遠鏡 The_European_Extremely_Large_Telescope Wikipediaよりお借りしました。

 

はい、これで 2020奈央の初旅 江戸と天空の旅 番外編も最後です。

日本人って、ヒミコっていう名前に敏感ですね。

わたしもすぐにググってしまいました。

それにしても天文学者の方たちって・・・・・ (つづきは想像にお任せしますね。)

 

それじゃあ、またね。