通勤路に生えているキンモクセイ(金木犀)の花が咲き始めて、その香りが漂うようになりました。秋の季語にもなっていて、ジンチョウゲ、クチナシと合わせて、日本の三大芳香木だそうです。
通勤路に生えている中で、一番お気に入りのキンモクセイの木
ただし、この香りを嗅ぐとトイレを連想してしまうのです。
北海道にはキンモクセイが生えていないため、はじめて嗅いだキンモクセイの香りがトイレ用芳香消臭剤のものでした。1970年代はじめの頃と記憶しています。それから20年ほどの間、キンモクセイの香りがトイレ用芳香剤として天下を取っていたからでしょうか、すっかり洗脳されて、キンモクセイの香りを嗅ぐと、トイレを連想するようになってしまったようです。
調べてみると、汲み取り式便所の時代、便所の近くにキンモクセイを植えて悪臭を防ごうとしていたとあって、「便所花」とも呼ばれていたそうです。
しかし、開花するのは秋の限られた時季ですからほとんど意味がないように思えました。
ところで、特定の匂い(臭い)が、それに結びつく記憶や感情を呼び起こす現象を「プルースト効果」と呼びます。プルーストの小説「失われた時を求めて」の中の描写に由来する言葉です。
紅茶とマドレーヌの香りや味で、幼いころの記憶がよみがえって幸福感に包まれるなら良いのですが、キンモクセイの香りでトイレ(世代によっては汲み取り式便所)を連想することは、キンモクセイにとって甚だ迷惑なことですが、しっかり刷り込まれてしまって、その連想を止められません。
幸いなことに若い方はそのような刷り込みはされていないので、純粋にキンモクセイの良い香りを楽しめる
と思います。