眼窩脂肪の話です。
目袋による目の下のクマ治療では、眼窩から脱出した眼窩脂肪を取り除く必要があります。
かつて総合病院の形成外科に勤務していた頃は、交通外傷・スポーツ外傷・暴力事件・転倒などでの顔面強打によって生じた頬骨々折の整復手術をしていました。
この手術では睫毛のすぐ下で皮膚を切開してアプローチします。他にも眉毛外側や口腔内の切開も加えて骨折部の整復を行い、プレート固定を行います。
灰色の部分が頬骨 プレート固定(3点固定が基本)
北大形成外科のHPより引用
睫毛下切開では眼窩脂肪が邪魔にならないように自在鈎(あるいは脳ベラ)と呼ばれる金属製のヘラで眼窩脂肪が術野にはみ出さないように抑えながら手術を進めていきます。気を付けないと眼窩脂肪を包む眼窩隔膜が破れて脂肪がはみ出してしまいます。とにかく丁寧に扱わなければならなかったのです。
ブローアウト骨折(眼窩底骨折、眼窩底吹き抜け骨折)では、眼部をぶつけたことによって急激に眼窩内圧が高まって、眼窩底の薄い骨が折れてしまう外傷です。
この骨折では眼窩脂肪が上顎洞内にはみ出したり、眼球を動かす筋肉の動きが悪くなって眼球運動制限による複視(物が二重に見える症状)が出現したりなどします。
右のブローアウト骨折(北大形成外科のHPより引用):矢印ははみ出した眼窩脂肪を示す
この骨折の治療でははみ出た脂肪を眼窩内に戻し、骨移植などで骨欠損部を修復します。
以上のように、整復手術は再建手術であり、元の状態に戻すために眼窩脂肪を大切に扱っていました。
逆に、現在はクマの原因である眼窩脂肪を除去しており、その扱いが異なっているのでした。
モニター患者様を募集中です