回想録 生徒Bの巻 その1の続きです。


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そんな折、12月は5回予定だったレッスンを3回にして、年末の2回分はホリデーでどこかへ行くとか言う話がでてきた。いつもだったらその時の状況を鑑みながらも、だいたいはOKしている。でも、今回はさすがにそんな暢気なことを言っている場合ではなく(´ヘ`;)


意を決して、母親にメールを出した。今やっている曲の進捗状況、2月のコンサートでやるということ、進捗が遅れているのは曲が彼にとってはかなり難しいものであるためで、彼のせいではないこと、彼は彼なりに努力をしていること、なので休むなとは言わないから、せめてレッスン日を変更できないか、等。

なんだかこれでは私が鬼のような先生みたいだが、今回はかなり「ヤバい度」が高かったのは事実だった。彼自身も3週間レッスンが空くことに不安があったのかもしれない。結局、向こうがこちらの意向をくんでくれて、変更無しでレッスンができることに( ̄▽ ̄)=3

彼は以前の先生の教室での発表会で、同じところを延々と繰り返すという「メビウスの輪」事件を起こしたらしい。そしてこの一件は、彼ら親子に大きなトラウマを与えることになった。

生徒には基本的に暗譜するよう言い渡してあるが、今回のようにぎりぎりまで曲作りにかかった場合は様子を見て免除している。

特に彼は忘れられないトラウマを抱えているので、暗譜を強要した結果、「メビウスの輪組曲 第2番」を作られては目も当てられない。それだけは絶対避けなければいけなかった。


ホリデーシーズンという誘惑にも負けず、彼は相当練習したのであろう。年末から1月頭にかけて、急激に(なんとか)弾けるようになり、後半部分も(なんとか)通るようになってきた。

本番3週間前くらいからやっと、曲の形を作る作業に取りかかった。歌おうとしてくれる気持ちは大変ありがたいのだが、歌って欲しいのは小指だけ。両親指も一緒になって声を張り上げるものだから混沌としたうるさい曲にしか聞こえない。

こういう曲では、精神的修行も必要なのである(- -)<←無心の意味>。自分で自分を(頭の中で)客観的に見て聞く感じである。例えばこんな感じ。

自分の頭(心)の中に、ソプラノ、アルト、テノール、バスの歌手が4人が存在する。優先順位は第一位がソプラノ(右手小指)、第二位がバス(左手小指)、第三位・第四位はほぼ同等でアルト(右手親指)とテノール(右手親指)。

*老婆心ながら、勿論使う指はこれだけではないことを付け加えておこう。メインに使う指と思って欲しい。

ソプラノがクレッシェンドかけると、全員でクレッシェンドをかけてしまう。仲が良いのは大変結構なのだが、ここではそれはNG。親指は静かに、と何回言ってもできるのは言った直後だけ。感情が入ると途端に全員で精神高揚一直線ε=ε=ε=(ノ^∇^)ノ

だから落ち着けっての(_ _;)。。。 両手の親指と小指は人格を別に設定しなくちゃいけないのだ。


そして、コンサート直前の最後のレッスン日。やっぱり全員でがなりたてるからうるさい(`Δ´)。


私 「ねえ、もしかして全部の声が頭の中で鳴ってる?」
生徒 「うん」
私 「じゃぁ、内声の2パート、頭の中から消して弾いてみて」
生徒 「・・・・!!!」


「何を言ってるんだ、この人は」( →_→)という目で見てたけど、こちとら最後の勝負に出たんでぃ(ノ-_-)ノ ~┻━┻ <←このテーブルをひっくり返しているのが面白くて使ってみた>


結果、

「あ、うまくいった(*^▽^*)」(内心にんまりする私)


「じゃあ、コンサートまでの間、そうやって練習してね」と言ってレッスンは終った。


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そして、コンサート当日。いよいよ彼の番。お辞儀して椅子に座る。弾き始めた。あっ何かいい感じ!!(‐^▽^‐)と思った瞬間、

MAX ヤバい、激ヤバい

ΣΣ┏(|||`□´|||;;)┓


ピアノの蓋、閉まったまんまだー!!(ただでさえ良くないピアノなのに・・・・。音がこもってるよぉ(T▽T;))


私のコンサートはどちらかというと伴奏でピアノを使うことが多い。なので、伴奏のときとピアノソロの時の蓋の開閉はその度にやってもらっていたのだが、ここですっかり忘れ果ててしまっていたのだ(・・;)


止めようかと思ったけれど、もう流れ的に止められなくなってしまっていた。もしいつものようにしょぼい出だしだったら、蓋を開けるのを忘れたという大義名分の元で2回目のチャンスをあげられたのだが、この日に限ってガッツポーズが出る位よかったのだ(出だしが)。


これで下手に止めてやり直したがために事故を起こさせてしまっては本末転倒。内心後悔の嵐が渦巻く中、ただじっと聴いているしかなかった(T_T)

皮肉なことに、彼のこの日の演奏は今までの中で最高だった。この曲が本当にとても好きなんだね、ということがこちらにも十分伝わった。にもかかわらず、バカちん先生がせっかくの晴れ舞台、台無しにしちゃったよ、ごめんね(──┬──__──┬──)


後日談。


彼の演奏がとても良かったと思ったのは私だけではなかった。彼の初回参加からずっと演奏を聴いてきた人たちが何人もおり、彼が年々上達しているのを目の当たりにしている。その人たちも、直接彼に演奏がよかったことを誉め称えたらしいのだが、彼は全く納得した顔をしなかったらしい。


私も勿論とてもよかったよと言ったのだが、本人はあんまり良くないと言い張る。何でって聞くと、途中で左の手が右往左往したからだという。ええ、それは私も気がついた。だけど、そこから事故が起きたわけでもないし、そんなの気がついたの、私しかいませんから!!(-゛-メ)


そんなの誰が気にするってのよ、演奏がよかったんだからいいじゃない、と言ってもあまり嬉しそうな表情ではなく・・・(´。`)


あんたはどこまで完璧主義者なんだ(-_-メ プロのピアニストだって100パーセント完璧に弾いてる人はいないぞ(多分)、と言いたかったが残念な事にこんなことがさっと出る程の英語力は私には無い。

彼の完璧主義はともかく、今回、彼から教わったことがある。その曲が好きだとなったらその熱意でどんなにハードルが高くても乗り越えることってできるんだなあ(=◇=;)、と。

私は(自慢じゃないが)曲に対してあそこまでの情熱を持ったことはない。義務感ならほぼ毎回( ̄ー ̄)  <←何を威張って言ってるんだ?>


いつも落ちついていて、無口で、喜怒哀楽を出さないような子だけど、意外と内面は情熱的なんだなぁ(*^o^*)と思った次第。


その調子で、来年のコンサートも頑張っておくれ(*^ー^)ノ