今年64冊目読了。

超入門・グローバル経済―「地球経済」解体新書 (NHK出版新書 396) 新書 – 2013/1/9
浜 矩子 (著)

★★★☆☆ 経済学が専門ではない方にグローバル経済の入門書としておすすめ

著者は同志社大学大学院ビジネス研究科教授。専門はマクロ経済分析、国際経済。
ヒト・モノ・カネが国境を越えて駆け巡り、一国の危機が瞬時に連鎖反応を引き起こす「グローバル経済」。もはや「国民経済」の思考枠組みでは対応できなくなった。この二〇年で何が変わったのか。複雑な経済を市場、通貨、金融、通商、政策という五つの構成要素に「解体」し、根源から考えたのが本書。

グローバル経済とは何かについて語った本。
通貨はどのように変遷し、どのような役割を果たしてきたのか。
なんとなくわかっているつもりになってしまう、通貨の役割や通貨がなぜわかれているのか、単一の通貨を使うべき基準などについて解説しているところは役に立った。

経済学が専門ではない方にグローバル経済の入門書としておすすめ。


【学びのポイント】
1)通貨制度と為替制度
 ・通貨制度と似て非なるものが為替相場制度です。
 ・為替という言葉の意味については、さきほどご一緒に考えたとおりです。
 ・その本来的なところから出発して、今や「為替相場」あるいは「為替レート」という言葉のみが一世を風靡していることについても、確認したとおりです。
 ・では、通貨制度と為替相場制度はどう違うのか。
 ・実をいえば、この両者はしばしば同じことであるかのように取り扱われがちです。
 ・為替相場制度のことを話題にしている時に、通貨制度という言い方が使われることがしばしばあります。もっとも、逆はあまりありません。
 ・一つの国が、その国内で金本位型の通貨制度を採用しているか、管理通貨制を採用しているか、ということを議論する時に、そのテーマを為替相場制度と混同する向きは、さすがに少ないでしょう。
 ・ですが、為替相場制度を通貨制度と言い換えるケースは、それなりに起こります。
 ・ここは注意を要するところですし、その混同も、実をいえば無理からぬ面があります。
 ・なぜなら、一つには、金本位制という通貨体制に国内的な面と国際的な面があるからです。
 ・そしてまた、これから取り上げようとしているユーロという通貨の存在があるからです。
 ・この辺りのことについてここであまり立ち入ると、いたずらに話が錯綜するばかりですので、ひとまずそれはさておき、前に進んでいきましょう。
 ・さておくなら、なぜ、ここで通貨制度と為替制度の似て非なる関係を持ち出すのか。
 ・そうおっしゃりたいかとも思います。ごもっともです。
 ・願わくば、地球経済の解体新書をご一緒に構築していくなかで、このややこしさもすっきりさせていきたいと思います。
 ・経済的体内において、通貨制度が「血流のコントロール・システム」ならば、為替相場制度は、「血流が国境を越える時の接合メカニズム」です。
 ・いわば「異なるソフトウェア間の変換システム」です。

2)基軸通貨国の交代
 ・イギリスが基軸通貨国の地位に君臨したのは、実質的には第一次世界大戦までというところでしょう。
 ・その後も、かたちとしてはポンドが世界の基軸通貨的な位置づけに留まりましたが、下り坂をたどりつつあることは、誰の目にも明らかでした。
 ・そして、第二次世界大戦が終結した時、イギリスは名実ともに基軸通貨国の地位をアメリカに明け渡すことになったのです。
 ・この時、世界の貨幣用金の約三分の二はアメリカの手中にありました。
 ・新興工業国としてのアメリカの台頭ぶりは、火を見るより明らかでした。
 ・そして一九四四年七月、アメリカはニューハンプシャー州のブレトン・ウッズで、戦後の通貨金融秩序づくりに関する国際会議が開催されました。
 ・その結果として成立したのが、いわゆるブレトン・ウッズ体制です。
 ・ブレトン・ウッズ体制は、国際通貨基金(IMF:‥International Monetary Fund)と国際復興開発銀行(IBRD:‥International Bank for Reconstruction and Development 現在の世界銀行)を両軸とする国際的な通貨金融体制です。
 ・この体制のもとで、端的にいえば、ドルは通貨における太陽系の太陽の位置づけを与えられました。
 ・具体的には、他のすべてのIMF加盟国通貨の価値が、ドルとの関係で固定されることになったのです。一ドル三六〇円時代の到来です。
 ・かくして、ドルという名の太陽を中心に、他の国々の通貨が一定の距離をもってそれぞれの固定軌道に配置されるという構図が誕生することになりました。
 ・ドルが通貨の太陽となった瞬間、「パックス・アメリカーナ」の幕開けです。

3)金本位体制の崩壊
 ・戦後復興が進むとともに、日本をはじめとするその他大勢は、次第にアメリカが供給してくれるドルでアメリカからモノを買う必要がなくなっていきました。
 ・工場などがひととおりそろえば、必要な物資は自前で賄えるようになります。
 ・次第にアメリカにモノを輸出することもできるようになる。
 ・こうなると、アメリカが刷ってアメリカが世界に供給するドルは、もはやアメリカからモノを買うことに使われるとは限らなくなります。
 ・こうしてアメリカに還流しなくなったドルは、次第に各国の手元に積み上がるようになりました。
 ・ふと気がつけば、手元にはドルの山。
 ・このような状態になれば、人間心理がどのような方向にふれるかは明らかです。
 ・こんなに手元がドルだらけで大丈夫だろうか。
 ・これが紙切れの山になったらどうしよう。
 ・そうならないうちに金に替えてもらっておいた方がいいかもしれない──。
 ・この心理が燎原の火のごとく広がるなかで、ドルの黄金時代は突如として終焉を迎えることになったのです。
 ・その日が、一九七一年八月一五日でした。
 ・世にいうニクソン・ショックの日です。
 ・この日、当時のアメリカ大統領だったリチャード・ニクソンが、ドルと金の交換停止を宣言しました。
 ・この日をもって、ドルは太陽通貨ではなくなりました。
 ・世界中でただ一つ、金と同じ輝きをもつ通貨。
 ・だからこその太陽通貨だったわけです。
 ・ところが、その地位を放棄すると宣言したのですから、そこで、ドルもまたその他大勢と同様の地位に転落したということです。

4)幻想の単一通貨、ユーロ
 ・実はこの幻想通貨群の中でも最も幻想度が高いのがユーロです。
 ・いうまでもなく、ユーロは一九九九年にEU加盟国の一部の国々が通貨を一本化することによって誕生しました。
 ・しかし、そもそもユーロにはいわゆる単一通貨がもっているべき条件が備わっていないのです。
 ・単一通貨としての条件を満たしていない通貨は、単一通貨ではありません。まさに、幻想の単一通貨です。
 ・なぜ、ユーロは幻想の単一通貨なのか。
 ・この点を考え進んでいく前に、ユーロに関するもう一つの問題を片づけておきましょう。
 ・つまり、単一通貨制と固定為替相場制はどう違うのかということ、そして、そもそも単一通貨制は通貨制度なのか為替相場制なのか、という問題です。
 ・さきの「為替に関する仕組み」の節でも、これらのテーマに若干言及しました。
 ・まずは、固定為替相場制と単一通貨制の違いから見ていきましょう。
 ・ともすれば、この両者は同じものだと思われがちです。
 ・固定為替相場制を極限まで推し進めると、単一通貨制になる。
 ・そのような理解で両者が語られる場合も少なくありません。
 ・ですが、これは違います。
 ・両者の間には、東と西ほどの違いがあるといって過言ではないでしょう。
 ・固定為替相場制は弱い者が強い者への追随を強いられる為替システムです。
 ・これに対して、単一通貨制は弱い者が強い者に「ただ乗り」するのを許してしまうシステムです。

5)単一通貨圏として立ち行くための条件とは?
 ・さて、単一通貨制というものの特徴をひととおり申し上げたところで、ユーロという名の単一通貨の幻想性に話を戻しましょう。
 ・ユーロはなぜ幻想通貨なのか。
 ・それは、そもそも、ユーロという通貨が単一通貨であるための条件を満たしていないからです。
 ・具体的には次のとおりです。
 ・ある通貨圏が単一通貨圏として立ち行くためには、満たされているべき条件が二つあります。
 ・第一の条件が、その経済圏において経済実態の収斂度が完璧であるということです。
 ・「収斂度が完璧」というのは、要するに、その経済圏の中では、地域経済格差が一切存在しないということです。
 ・もっと平たくいえば、その経済圏の中であれば、どこに行っても、物価水準は完璧に同じ、賃金水準も完全に横並び、失業率もまったく同じという状態になっているということです。
 ・そして、このような経済指標が完全に横並びである結果として、金利水準も完璧に同じでなければいけません。
 ・こうした姿が成り立っているときには、その経済圏においておのずと単一通貨ができ上がると考えられます。


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