沖縄発の映画配給会社 アジア各都市巻き込み“文化の中継貿易” 

 本格的に映画配給事業に参入した会社としては沖縄県内で初めてとなる「株式会社ムーリンプロダクション」(那覇市)。設立者であり監督・プロデューサーでもある黄インイク(コウ・インイク/黃胤毓)さんは台湾出身で、映画関係の人脈などをフルに活かしつつ、沖縄を拠点にして国内外の作品を日本、台湾、香港、マカオの映画館に配給するという“映画の中継貿易”を行っている。同時に、他府県に比べて活発な沖縄の映画カルチャーを押し上げる一端を担う。

アジア各都市を結ぶ沖縄で国際的に映画配給

 ムーリンプロダクションは映像作品の製作・配給を行う会社で、黄さんが設立した木林電影(台湾)の沖縄支店を前身として2019年4月、那覇市内で発足した。同社配給の第一弾作品『大海原のソングライン』(ティム・コール監督)は、8月に都内を皮切りに全国各都市で上映された。県内では那覇市の桜坂劇場での1月16~29日の上映期間を経て、2月1日から3月5日までは沖縄市のミュージックタウン音市場で上映される。次いで、ロシアを舞台とする作品も6月に日本公開を予定しており、今後も年に数本のペースで配給していくという。

 映画配給は、買いつけた作品を各劇場に卸す役割を担う。企画制作などを担当する菅谷聡さんによると、国内ではほとんどの配給会社は東京周辺に集中しているという。「地方都市だと福岡と仙台にあるぐらいでしょうか。配給を事業の柱としてやっているという会社は県内では唯一です」と話す。

 国内でもムーリンプロダクションにしかない強みは、1つの作品を同時に複数の国や地域で配給するという点だ。黄さん自身が海外の映画祭を回って作品を買い付けるなどしている。黄さんは海外にも広く業界ネットワークがあり、そのことが沖縄を拠点に海外でもビジネスができる一つの要因となっている。

 菅谷さんは「沖縄から海外の映画祭に行って作品を買い付けるというのは、これまでになかった配給ルートです。日本だけではなく、台湾の映画館にも配給しています。海外のドキュメンタリーには面白い作品がたくさんある一方で、あまり日本には紹介されていません。国内だけでなく台湾、香港、マカオまでを巻き込んで発信できていることは、地理的優位性のある沖縄を拠点とする弊社ならではです」と話す。