局所座標系関数で貼り合わせてできる図形を、多様体という。例えば、提灯を作る時、竹などでできた枠に紙を貼って作る。紙の上に座標系を書いておけば、2枚の紙が重なる点は提灯の上では同じ点になり、2枚の紙の上の2点が貼り合わされる。この時、紙の上の座標系が局所座標系であり、できた提灯が多様体である。数学では、この貼り合わせを関数で行う。貼り合わせの関数が、連続関数の時は位相多様体、無限回微分可能の時は微分可能多様体正則関数の時は複素多様体と呼ぶ。またいくつかのn変数多項式の共通零点を多項式関数で貼り合わせてできる多様体を、代数多様体という。19世紀中頃、リーマン(G.F.B.Riemann)がリーマン面を概念化したのが多様体の始まり。

 

マニフォルド,集合体ともいう。幾何学的な類比を通じて,4次元以上の空間を研究するために導入された概念。点,直線,平面,円,三角形,立体,球などのような幾何学的図形の集合を一つの空間とみなしたときの,その空間のことをいう。たとえば平面上のすべての円から成る集合は,3次元多様体をつくるとか,現実の空間内のすべての球から成る集合は,4次元多様体をつくるとかいわれる。ここでいう多様体の次元は,それがいくつの数の組で定義されるかによって決る。円の全体が3次元多様体といわれるのは,円が,その中心の座標 (xy) と半径 t との組,すなわち座標 (xyt) をもつ点としても表現されうるからである。空間・時間によって考えられた空間は,その対象を座標 (xyzt) の点と考えれば4次元多様体ということになる。相対性理論が大きく進歩したのは,この4次元の時空多様体の概念が導入されてからである。現在では,微分可能な多様体を略して多様体と呼ぶことが多い。

 

ユークリッド空間をモデルとした位相空間を多様体という。いちばん単純な図形は点であり、これは〇(れい)次元多様体という。線の図形のうち、左右無限に延びている直線、半直線、円周、線分が一次元多様体である(図A)。これに対して図Bのような線の図形は多様体ではない。すなわち、図Bで点Pの近傍、つまり点Pの近くにある点の集合が、(a)では十字形であり、(b)ではT字形であり、どちらにしろ線分ではないからである。

 面の図形は、その各点で、その近傍が円板と同位相になるものを二次元多様体という。図Cのような、平面や球面や円板やトーラス(輪環面)は様体であるが、球面に矩形(くけい)などを取り付けた(e)のような図形は、取り付けた点Pの近傍が円板でないので多様体ではない。各点の近傍が球体(つまり三次元球体)となるような三次元的図形が三次元多様体で、普通の三次元空間や三次元球体自身はそれぞれ三次元多様体である。同様に、各点の近傍がn次元球体となるようなn次元的図形をn次元多様体という。n次元空間やn次元球体はn次元多様体である。多様体は、平面や球面やトーラスのように境界のないものと、円板のように境界(円板はその円周が境界となる)をもつものとに分かれる。境界のない多様体の各点の近傍は球体からその境界を除いた開球体となる。よって境界のない二次元多様体上に近眼の虫がいると仮定すると、虫はどこにいても同じ開円板(境界の円周を省いた円板)、つまりいつも同じ景色を眺めていることになる。さらに球面やトーラスは空間の中で有限の大きさをもつ閉集合であり、閉じた多様体(二次元の場合、閉曲面)という。

 多様体が三角形分割できて多面体とみなせるとき、組合せ多様体といい、さらに多様体に微分構造が導入できるとき微分(可能)多様体という。