追及スクープ!”中古車販売業界の雄”ビッグモーターが「客のタイヤ」に穴を空けていた「衝撃動画」

工賃の水増しや保険金の過剰請求のために、工場長自らが「不正整備」を実演指導 年商7000億円を誇る、巨大企業のズサンな実態を元整備員が怒りの告発

タイヤの穴空け方法を教える工場長。Aさんによると、タイヤが摩耗したものを中心に狙うように指導があったという

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「写真の写りは考えないとですね」

保険会社の審査を通すために提出する写真をどう撮ればいいかを丁寧に説明をすると、男性はタイヤの側面を凝視しながらポイントを探し、グッとネジを突き立てた。そして、そのネジをドライバーでグリグリと力強く締め上げていく。わずか10秒後、タイヤはいとも簡単にパンクした――。

全国に約260店舗を展開し、従業員数およそ6000人、年商は7000億円を超える中古車販売会社『ビッグモーター』で、相次いで不正が発覚している。昨年2月には滋賀県のびわ湖守山店に、不正改造などを理由に近畿運輸局から事業停止処分が下された。今年2月には佐賀県の唐津店が、3月には熊本県の熊本浜線店が車検の不正などを理由に九州運輸局から保安基準適合証の交付停止や民間車検場の指定取り消し処分を受けている。

そんな中、本誌はさらに衝撃的な不正の証拠を入手した。それが冒頭で描写した「穴空け動画」である。提供してくれたAさんは、渦中の熊本浜線店に’19年から約2年勤務し、整備部門の責任者など要職を任されていた人物だ。

動画は’21年6月に、Aさんが不正の証拠を残すために、「仕事を覚えるため」と偽り、撮影したものだという。映っているのは当時、工場長を務めていた男性である。40秒ほどの動画の中では、保険会社にタイヤのパンクを自然に見せるための指示が細かく行われている。動画内で工場長は、タイヤにネジを締めながら、

「こっから撮ったら(擦り減ったタイヤでも、保険対象内の摩耗していないように)溝があるような感じになります」

「あとは銘柄(を撮影してください)」

と指示をしながら平然と作業を続ける。わずか10秒足らずでタイヤはパンクした。Aさんが証言する。

「動画はタイヤを意図的にパンクさせる方法をレクチャーしたものになります。穴を空けていたのはお客様の車です。この車はタイヤの溝がなくなるくらい擦り減っていて、いつパンクしていてもおかしくなかったため、穴空けの対象に選ばれた。パンクの目的は工賃を請求するためです。タイヤ自体は保険が効くケースが多いためお客様の負担はないですが、交換の作業料はいただきます。1本3000円程度ですが、交換するときは大体4本まとめて替えるので1万円以上の売り上げが立つ。すべてがこの方法だったわけではありませんが、工賃だけで月20万〜30万円は収益がありました。

他の店舗ではさらに悪質な不正が行われていたといいます。整備士仲間に直接聞いた話では、保険金の中抜きを行っているんです。パンクさせたあとに安価なタイヤに付け替え、一方で保険会社には最新の高級モデルに変更したと申請するんです。そうすればその差額は丸々利益になりますからね」

保険会社の審査は基本的に写真確認のみで自然にパンクしたように偽装することは難しくないという。Aさんが続ける。

「工場長には抗議しましたが、聞き入れてくれませんでした。私自身が『穴空け』を行うことはありませんでしたが、犯行を認識しながらも止めることができなかった。罪の意識は常にありました」

ネジを刺す場所を細かく指示する。ほかにもカメラアングルや保険会社への申請方法について説明があった
摩耗しすぎたタイヤは保険適用外になるという。そのため、溝が残る箇所をアップで撮るなどの工作が行われた
作業は10秒ほどで終了した。「踏んで刺さった」という理由で申請するケースが多く、ネジは刺したままだという
指導動画が撮影された熊本浜線店。九州運輸局からは指定自動車整備事業の指定の取り消しと検査員2人の解任という厳しい処分を受けた