琉球王妃の子孫に伝わる宝刀「沖縄に戻せて良かった」 祖父が大阪に移し戦禍を逃れる

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 琉球王朝の王妃の家系である宇久田家の子孫、田中典子さん(59)=兵庫県=が代々伝わる刀3振りを沖縄県立博物館・美術館に寄贈した。田中さんの祖父が沖縄戦を前に関西へ移し、戦禍を逃れた家宝で、故郷に戻るのはおよそ80年ぶり。「祖父はなんとか戦争から守ろうという思いだったのだろう。沖縄の地に戻せて良かった」と話した。(社会部・普久原茜)

 

■王家から与えられた墓に

 宇久田家は尚貞王(在位1669~1709年)の王妃が先祖で、南風原町新川に残る一族の墓も王家から与えられたと伝わる。親族の宇久田貢さん(74)=南風原町=によると昭和初期、墓の中にあった刀と横笛、銅鏡を宇久田家14世の全祐さんが息子3人に分与したという。

 長男で田中さんの祖父である全昌さんに刀、四男に銅鏡、六男に横笛が渡った。その後の沖縄戦で銅鏡は行方が分からなくなり、横笛は焼けてしまった。

 正確な時期は不明だが、仕事の関係で大阪にいた全昌さんは刀と家譜を大阪に移した。田中さんは「祖父は米軍に取られることも危惧していたようだ」と話す。大阪も空襲に遭ったが、刀と家譜は難を逃れた。

■刀は短刀と脇差しの3振り

 全昌さんはミャンマー(旧ビルマ)で戦死し、家宝は田中さんの父である故弘道さんに受け継がれた。物置に保管された刀は年月とともにさびてしまったが、弘道さんが退職を機に専門家に研いでもらうなど手入れをしてよみがえらせた。

 刀は短刀と脇差しの3振りある。由来ははっきりしないが、県立博物館・美術館の外間一先班長によると「3振り合わせて残り伝わっているのは貴重」という。今後詳細を調査する。

 田中さんはこれまでに家譜や家の歴史の解説本を同館に寄贈している。「刀も専門家の下で保管してもらえたら、少しでも長く朽ちずに残ると期待している。祖父も父も良かったと思ってくれると思う」とほっとした様子で語った。

 刀は4月28日から開かれる同館の新収蔵品展で展示を予定している。